■148 刀鍛冶を探してます。
少しタイトル変えようかと思ってます。
「って、ことがあったんですけど誰か心当たりはありませんか?」
私はリオナさんとシズさんに相談していた。
久々にやって来たギルド〈Blue Wave〉のリーダー、リオナさんのお店〈麗人の内輪〉。その店内では今日もリオナさんとシズさんが閑散としてしまっている最中、待ちぼうけていた。
そこにやって来た私は早速先日のKatanaの身に起きた出来事を相談していたのだ。
「なるほど。つまりKatanaちゃんの新しい刀を打てる人の心当たりを探しているってわけね」
「はい。それで接客とか依頼とかで交流もあって、なにより生産職系ギルドのBlue Waveだったらなにか心当たりはないかなって思って。なんだったらシズさんに!」
「私は、無理」
きっぱり断られてしまった。
にしても変だ。前は私達が持ってきたドラグノ石に興味を持ってくれたし、今回だって必要だったら全力で採りに行く気だった。しかしこうも呆気なく突き返されてしまって、引き下がるわけにもいかない。
「どうしてですか?もしかして、忙しくてですか」
「そうじゃないわよ。ねっ、シズ」
「うん。……私が打たない理由は一つだけ……私に玉鋼は打てない」
「えっ!?」
シズさんはそう答えた。しかし私にとって問題は別だ。その玉鋼って何?私はその前段階で躓いていた。
「えっと、その……」
「私は鋳造が専門。対する刀は玉鋼」
「その玉鋼って言うのは?」
「日本刀の材料。特殊な工程で作られ、折り返しがいくつもある。だから強固で、繊細」
「そうなんだ……えっ、でもシズさんなら」
「私は【機構】スキルしかない。玉鋼製品を打つのなら、専門職の知識がいる。だから日本刀は出回らない。それにこの間打った波状の白星はカットラスで似た形状だけど、根本が違う」
「は、はぁー」
その後もシズさんは私に熱く語ってくれたが、よくわからなかった。必死に理解しようとしたけど、コークスとか言う材料が出てきたところからわからなくなった。
困ってぽつねんとする私に、それをリオナさんが慣れた言葉で翻訳してくれた。
「つまり西洋刀ベースは鋳造って言って、型に流し込んで作るのに対して日本刀は玉鋼を何度も何度も折り返して鍛錬して作られるものだからそもそもの工程が違って専門的なことに近いから、シズには無理ってことね」
「そう言うこと」
「わ、わかりました」
私は目に見えてがっかりしてしまう。当の本人からしてみれば勝手に期待されて勝手にがっかりされているので溜まったものじゃないだろう。
だけど私は素直に態度が出てしまっていた。
そんな私にリオナさんは必死に記憶を頼り、知り合いを並べてくれる。
「あの人はいや駄目ですね。ではあの方なら……難しそうですか」
「ごめんなさいリオナさん」
「あっ、大丈夫よ。だってお得意様でしょ」
「それはそうですけど、なんだか悪いですよ」
「気にしなくていい。リオナはこう言う性格」
申し訳なくて仕方なない気持ちでいっぱいの私にシズさんはそう言ってくれた。
それでも悪い気持ちになってしまい、もう諦めて「ありがとうございました」って言って帰ろう。そう思った矢先だ。リオナさんが「あっ!」と声を上げた。
「そうだ噂に聞いたあの人なら!」
「あの人?」
「ええ、日本刀専門の刀鍛冶の噂です」
「リオナ、まさか木乃のこと?」
「そうよ」
「へぇー、なんだか凄そうですね」
私は話が見えてこないので適当に相槌だけ打つ。
一体誰のどんな噂なんだろ。その木乃って人が拘ってるってことなんだろうけど、とりあえず話を聞いてみよう。
「あの、その噂って……」
「凄い刀を打つ刀鍛冶の噂」
「その、シズみたいなタイプだから。ねっ」
あぁなるほど。察した。
シズさんは職人気質な面があるかは多分その人もそっち系なんだと推測。それをベースにしてみると、“興味が湧く”ものじゃないと駄目なんた。
「でもそんな人に打ってもらったらきっとすごいのができそうですよね!」
「楽観的」
「でもマナちゃんの言う通りね。今までオーダーメイドで刀を打ったなんて噂聞いたことがないから、そうなったら刀を使っている人の憧れになるかもね」
「じゃあますます打ってもらいたいです。それで、どこに行けばあえるんですか?」
私はそう尋ねた。気が早いような気がするけど、期待するのは悪いことじゃない。期待されてる側からしてみれば迷惑千万な話かもだけどね。でもでも私はこう言うタイプだから、そこは勘弁してほしい。
「そうね、詳しくは知らないけど」
「清流寺」
「えっ?」
シズさんがポツリと呟く。
何だか清水寺みたいな名前だ。
「噂の発端は清流寺から。だから行けばなにか……その……手がかりが見つかる……かも?」
何だか覇気がなくて弱々しい喋り方だ。
多分、「木乃がもしなんでもできたら私のとこに来てくれなくなる」とでも思っている顔だった。
「大丈夫ですよ。私はシズさんに剣を作ってほしいですから」
「えっ!?なんで」
「だからシズさん私の剣、また作ってください。正統派の剣でも変わり種のやつでも待ってますから」
「わ、わかった。期待は……しないでほしい」
「してほしくないのね」
リオナさんはツッコんだ。その瞬間シズさんの目がギラりと光、リオナさんを睨むがリオナさんはまるで動じない。
何だか久々だけど、いつ見てもこの二人のやり取りは見ていてほんわかする。
心を和ませてもらったし、いい情報も手に入ったりで満足の行く散策になった。




