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■146 刀に罅

今回からちょっとだけKatana回が続きます。

それから誤字の報告本当に助かります!皆さん、ありがとうございます!

「はぁー!せやっ!」


 私は〈麒麟の星雫〉でモンスターを斬りつけた。今回の相手はスチールコングと言うゴリラみたいなモンスターで、その最大の特徴は鋼のように鋼鉄の拳だった。


「ぐあっ!」

「マナ下がれ」


 私はスノーの指示で【雷歩】を使い後ろに下がる。

 その間〈先鷹の弓(イーグル・アロー)〉で放ち続ける。射られた矢は素人のスノーの思い描く軌道を沿って、バシバシスチールコングに命中するがそのどれもがあの剛腕によって弾かれてしまって地面に突き刺さる。


「嘘でしょ!」

「だろうな」


 スノーは予測済みみたいだ。にしてもこれじゃあ打つ手がないよ。せっかくここまでレベル上げしてきて、やっとの思いで45まで上がってきたのに。それにスノーは私よりも三つもレベルが上だ。やっぱりレベルだけじゃない。武器の強さも重要だった。


「今の私達だけじゃ無理なのかな?」

「そんなことはない。策を労せばどうにでもなる」

「じゃあなにか作戦があるの!」

「いや、今回はない」

「ないの!」


 期待して損した。流石のスノーでもこんな突発的な戦闘にまで対処するのは厳しいのかと思ったのだが、如何やら違うようだ。


「策はあるが武器を失いかねない。そのリスクが大きすぎる」

「ぶ、武器?……」


 私の〈麒麟の星雫〉は自動修復が付いているけど、皆んなのにはない。

 それを計算に入れたら流石に出来ないよね。


「ど、どうしたら……」

「マナ!?」

「えっ?」


 私が顔を上げるとそこにはスチールコングの拳があった。ヤバい。流石にこの距離じゃ【雷歩】を使わないと。

 スキルに呼びかけ、この場を一時離脱しようとしたのだが、スチールコングは地面を思いっきり叩いてそれを阻止。もう片方の空いた拳が振り下ろされようとしていた。


「うわぁ!」


 やられたと思い悲鳴を発する。

 しかし私に拳が届くことはなかった。ふと目を開けると、そこにいたのはKatanaで、日本刀の刃を沿わせた拳を受け止めていた。


「大丈夫ですかマナさん」

「ありがとKatana」

「下がっていてください。押し返します!」


 するとKatanaは瞬時に握りを変えて突き刺すような一撃を放った。

 ただ突き刺すだけじゃKatanaのほぼ初期装備の武器じゃ歯が立たないけど、そこは考えがあるのか。足りないところは自分の実力と想像力で補っていた。


「龍蒼寺流剣術玖ノ型“氷柱突き”!」


 目にも止まらぬ速さで繰り出される突きの連続にスチールコングは怯み後退した。

 しかし臆せず攻め立てようと言う本能からか拳を振り抜く。しかしそれも巧みに防ぎ完全にKatanaのペースかと思われたが、その瞬間嫌な音がした。


 ピキッ!


 ピキッ?硬いものが砕ける前みたいな音がした。

 それに合わせる形でKatanaも反撃の手を緩め、仕方なく蹴りと柄の後ろで押し返す。


「くっ!」


 Katanaの装備は軽装だ。

 とは言っても羽織りを着込み、足元は草鞋なので痛みな直に来る。そのため体が痺れを起こし動きが鈍った。


「マズい!」


 ノースが叫んだのと合わせて私は【雷歩】を瞬時に発動させ、Katanaを無理矢理引っ張る。


「「うわぁ!?」」


 急な使用と体勢の悪さから私達は地面に転がった。

 そんな中スチールコングはけたたましく足踏みし私達にトドメの一撃を繰り出そうとするが、それをノースが迎撃。しかし矢はまるで役に立たず、地面に突き刺さっていく。


「いや、これでいい」


 ノースは不敵に笑みを浮かべた。

 そうしてスチールコングが接近しようとした途端、動きが鈍った。ノースの放った矢にピンと張った糸が括り付けられていたのだ。


「動きは止めた。ちなっち、タイガーやれ!」

「OKOK、言われなくても待ってなくてもせっかくだから久々のー《フレイム・オブ・エンチャント》!」

「おんどりゃぁ!」


 ちなっちが腹を裂き、タイガーが真上から拳を落とした。

 その巧みな合わせ技に流石のスチールコングも拳以外は鋼鉄でもないのでそのままHPを削られた。

 着実に私達で削っていたHPが一気に消失し塵と消えていた。


「いやー危ないところだったねー」

「まったくだ。危うく死ぬところだった」

「でもなんとかなったよ。それより……」


 私はチラッとKatanaに視線を移す。

 Katanaは「ん?」と無言で返すが、その裏では必死に何かを隠そうとしている。多分さっきのだ。


「ねぇKatana。武器壊れちゃったよね」

「えっ?」

「そうかのkatana?」

「い、いえその……はい」


 やっぱりだ。それにしても何で隠そうとするんだろ。


「困ったな。Katanaが戦闘に参戦できないとなると陣形が変わる」

「い、いえ大丈夫です。確かに少々罅は入ってしまっていますが。そこは私の技術がカバーします」

「でも武器のこと気にして本気出さないでしょ。思い入れがあるのはわかるけど、武器新しく新調しよ」


 私はそう提案した。

 しかしKatanaは押し黙ったままだった。


「Katana?」

「情けありませんね。気をつけていたはずなのですが、まさかこれでも剣を持つ者が自分の剣を壊してしまうなんて」

「それは違うぞ。この世界の武器には耐久力がある。いかに気をつけていてもいつか壊れる。それが早いか遅いかの話であって、Katanaのせいじゃない。気にするな」

「それでも……不甲斐ないです」


 何だかすっごく落ち込んでる。

 確かに人の作ったものっていつかは必ず壊れちゃうけど、それでも私はーー


「Katana、不甲斐なくなんてないよ。それにこの子が壊れちゃったのはKatanaが強くなったってことでしょ?」

「私が強く?」

「うん。この子は身を挺してそれを教えてくれたってことだよ。だったからこの子のためにもその力を示してみようよね」


 私はそう伝えた。こんなポジティブな思考で伝わるのかと心配になったが、Katanaはそう自分の胸の内で折り合いを付けると短く「そうですね」と答えた。

 と言うわけで武器を失ったKatanaと新しい愛刀を見つけることなった。

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