■141 紋章
今日は深夜投稿。
明日はどうなるかわからん。
私達はついに辿り着いた。と言うよりも偶然見つけてしまったらしい。
そこは島の丁度中央に位置していて、明らかに人為的に造られたとしか思えない建造物があった。
「ねえスノー。これってなにかな?」
「さあな。だが見るからに人の手が加えられている。瓦礫などが散乱していない点から見てもそこまで年月は経っていないようだな」
「なんだか秘密基地みたいだねー」
「それを言うなら研究所の方が適切だ」
「あっそれもそうかもー」
ちなっちは愉快そうに笑みを溢した。だけどこんな立派な建物、一体誰がなんのためにここに造ったんだろ。元も子もないことを言えばそう言う設定と言うことで運営が手を加えてわざと設置しただけなんだろうけど、それにしても不思議だ。
「なんだか変な空気するよねここ」
「変な空気ー?」
「うん。わざとなんだろうけど、この島の中色々歩いてきたけど特に独特な雰囲気がするって言うのかな?」
「あー確かにするかもねー」
「同感だ」
スノーが率先して答えた。だけどそれがどうしてなのかとかはまるで見当がつかない。
困りあぐねる私だったけれど、そんな折Katanaは唐突に提案した。
「とりあえず皆さん、一度建物の中に入ってはみませんか?」
「えっ、入るの!?」
タイガーがブルブル震えて目を見開く。
足も肩もガクブルで、自分の体を抱き寄せる始末だ。でもそれもわかるかも。タイガーは素に戻ってるし、ちなっちだってさっきから変なテンションで無理矢理テンションを引き上げている節が見られた。その証拠にーー
「わあっ!」
「な、なになにマナ!?」
「やっぱりいつものちなっちじゃないよ。ホントは怖いんでしょ?」
「こ、怖くはないけど……まあなんだ。確かに私も変な気はするってだけなんだよな」
如何やらちなっちにもその空気は流れていたみたいだ。
このまま帰るのが吉なのかもだけど、ここまで来たんだ。せっかくだし、ポータルぐらいは登録してても良さそうだ。
「ねぇ一回入ってみようよ」
「「入るの!?」」
「うん。スノーとKatanaはどう?」
私は二人に尋ねた。すると先に答えたのはKatanaで、スノーは歯切れが悪い。
「私は構いませんよ。皆さんの意見に従います」
「スノーは?」
「うーん、そうだな。確かに私も興味がある」
いつもの好奇心が爆発したスノーじゃない。
普段はちなっちや私がよく起こすけど、スノーだって気になることには真っ直ぐに突っ走るタイプだ。それなのにここまで慎重なのには何か理由があるのかもしれない。
少し怖くなってきた。だけど二人の勇気ある行動に心動かされたちなっちとタイガーと渋々同意する。その結果、私達は意を決して建物の中に入った。しかしーー
「ふ、普通だね?」
「うん。なんかさっきまでの緊張感とかぜーんぶどっか行っちゃったーって感じ」
「落ち着いてて私は好きかも。それにとっても広いね」
入ってみたら思った以上に快適だった。
外から見た時はそんなに広くないと思ってたけど、中は意外にも広く何と地下室まであるみたいだ。
おまけに部屋はたくさんあるし、何に使うのかわからない部屋とか、厨房、お風呂場、書庫と様々だった。その上なんとこの建物、展望台を含めれば四階まである。さっきまでの不信感が嘘みたいに居心地が良かった。
「埃一つないのか。変だな」
「そんなに変なの?」
「人が居るところには必ずと言っていい程切っても切れないものだからな。とは言っても、ここに誰かが立ち入ったような跡もないんだが……」
黙り込むスノー。そんな彼女に私は一つ提案してみた。
「ねえねえ地下行ってみようよ!」
「地下?」
「うん。あの半球の真下あたりだったよね。確かちなっちが階段見つけてだと思うんだけど」
「それならあっちだよー」
ちなっちの案内で館内を回ってみると、そこには地下に続く階段があった。
結構暗い。中は如何なってるんだろ。凄く気になる。
「ねっ、行ってみよ」
「そうだな。ここまで来たんだ、なにが起きても変わらないか」
「それじゃあ早速行ってみよー!」
「おー!」
私達は地下に続く階段を下りた。
暗い階段をしばらく下り続けると、奥が少し明るいことに気づいた。
「あれ?ちょっと明るいよ」
「外からの光か。それとも階段の壁に付けられたランプが人に反応して付く仕様か」
「下りてみたらわかるんじゃなーい?」
「それもそうなんだけどね」
ちなっちは速攻でスノーの考察欲を断ち切った。
何だかそれも可哀想だけど、確かに私も気になる。早速駆け足になって階段を下りきると、そこは空洞になっていて一つの部屋みたいだった。
ただめちゃくちゃ広くて、天井も高い。
「うわぁー、広いし高いね」
「半球の真下だからな。構造上そうなっているんだろ」
スノーの説明も半ばではあったが、私は部屋の中を回ってみた。Katanaやタイガーも同じように見て回ると、私はふと気付いた。
「あれ?この床なにか描いてあるよ?」
ふと視線を落としてみて気付いたが、床の中央部分に何か描いてある。これは絵かな?龍の頭は鴨鹿の体って、変な動物。ってあれ?これってもしかして……
「麒麟の絵?でもなんで」
「おいこっちにもあるぞ」
そう言うとスノーは自分の足元に発見した絵を説明した。
「亀に蛇が巻き付いているな。これは中国の神話に登場する四神と言うやつだな。北を守護する玄武のようだが」
「こっちにもあるよ!」
「こちらにもあります」
「こっちにもあるぜ!」
すると皆んながそれぞれ私を中心にした四方の位置に絵が描いてあることに気がついた。
「私のとこはね、おっきな鳥が描いてあるよ!」
「こちらには龍が描かれています」
「虎?」
三人の説明はそんなだった。
それを聞いたスノーは自分の真下に描かれて玄武?だっけそれを当てはめるように頭の中で絵を浮かべる。
「鳥は朱雀、龍は青龍。虎は白虎か。そして玄武に麒麟……完全に四方を司る四神と中心を司る麒麟と成るな」
「ねえそれってなにか意味があるの?」
「わからん」
「あっ、そっか、ごめん」
何だろ。絶対何かあるはずなのに、何だかピンと来なかった。
強いて言うなら私が〈麒麟の星雫〉を持ってるだとか、ちなっちの本名が南だとか、龍蒼寺とか大河からのタイガーをもじってることぐらいかも。
でも単なる偶然。必然って無理矢理結びつけようと思えば出来るかもだけどまだ何とも言えない。
そんな謎を残しつつ、私達はこの建物を後にするしかなくなっていた。
後で一度下がるかも。下げないかも。




