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■14 ひたすらにレベル上げ

今週は結構辛かった。

 私とちなっちはレベル上げを開始した。

 私とちなっちのレベル差は9もある。これがどれくらい響くのかはわからない。

 けどブラックベアーの時のようにレベル差が軽く覆ってしまう可能性だって秘めていたが、それでもレベルを上げてステータスアップを図るのは常識だとちなっちは教えてくれた。


「うおっ!いたいた」


 ちなっちは興奮したように声を張り上げた。

 目の前にはスライムの姿。

 初め見たときから思っていたけど、やっぱりプルプルしていてゼリーみたい。可愛い。


「まずはスライムからなんだ」

「普通はね。マナは最初なにを倒したの?」

「私?私はアルミラージって言う兎のモンスターだよ」


 そう伝えた。

 今私とちなっちは草原に来ている。

 理由は単純で、レベル上げをするにしてもまずは強い相手に勝つためにレベルを上げてステータスを伸ばすこと、それから戦い方のコツを掴むことだった。

 ちなっちは片手ずつに剣を握り、二刀流の双剣スタイルを取る。


「せーのっ!」


 ちなっちはダッとスライム目掛けて駆け込んだ。

 そうして瞬く間に剣で斬り裂いて、スライムを倒してしまう。

 何ともあっけないように見えるけど、全くその通りだった。


「早いね、ちなっち」

「そっかな?でも今ので大体掴めたかな」

「今の一瞬だけで!?やっぱりちなっちって凄いよ」

「そっかなー。えへへ」


 ちなっちは頭を掻いた。

 剣をジャグリングのように振り回し、納刀する。

 そんなことも出来るんだと、やっぱりちなっちの身体能力とその才能には目を見張るものがあった。


(陸上辞めちゃうの勿体無いのに)


 心の中でそう思う。

 でも本人はやりたいことがあるので、それを尊重する。

 ちなっちは一度決めたら、絶対にめげないからだ。


「如何する次も行く?」

「そうしょっかなー、っ!?」


 その瞬間ちなっちは私を睨んだ。

 いや正確には私の背後を睨んだのだ。

 私が振り向いて姿を確認するよりも早く、ちなっちの体は動いていた。

 私目掛けで突っ込んできていたアルミラージをほんの一瞬で真っ二つに斬り裂いたのだ。


「ちなっち?」

「大丈夫、マナ?」


 表現は残酷だけど、私はちなっちのおかげで怪我をせずに済んだ。

 それにしてもさっきのスピード、ありえないぐらいに速すぎる。まるでバーナーの炎が点火した時のような急さだった。

 例えがちょっと分かりづらいけどそんな感じで、今の一時(ひととき)の間で、如何やらちなっちはレベルアップしたらしい。

 ちなっちは急に動きを止めて、なにもない空間を凝視している。いや、透明なメニューパネルが表示されたのだろう。そこに自分のステータスが表示され、レベルアップが告げられたのだ。


「どーお、ちなっち?」

「うーん、ぼちぼちかなー。ん?」


 急にちなっちが固まった。

 表示された画面をまじまじと凝視している。


「どうしたの?」


 私は尋ねた。

 するとちなっちは首を傾げて答えた。


「いや、変なの出てんだよねー」

「変なの?」

「うん。【加速】ってスキルが手に入ったっぽい」


 そう言った。

 私はポカンとしている。理由は単純明快。私は【加速】と言うスキルを知らないからだ。

 しかし説明欄を眺めるちなっちの目の色が変わった。

 目を見開き、「面白い」と口にする。


「なにがそんなに面白いの?」

「この【加速】ってスキル。通常では考えられない速度で移動できる便利なスキルなんだって」

「へぇー」

「しかも取得条件が厳し過ぎるっぽいよ」

「どんなの?」

「最初の走りだしが、0.18秒以内だって」

「よくわかんない?」


 そんなこと言われてもよくわからなかった。

 ただそれがどれくらいのものなのかはちなっちが簡単に説明してくれた。

 要は、プロの陸上選手並み。もしくはそれよりほんのちょっとだけ遅いぐらいじゃないと駄目らしい。

 そんなの常人じゃ普通無理のはずだ。


「じゃあ凄いね。ちなっちそんなの手に入れちゃったんだ!」

「うん。それにもう一つお知らせ」

「お知らせ?」


 私は今一度首を傾げる。


「私、魔法使えるようになったっぽい」

「魔法!」

「うん。今度試してみるよ」


 私にそう言った。

 それにしても魔法なんて凄い。私もまだ見たことないし、どんなのだろうか。わくわくする。


「ちなみにどんな魔法?」

「それはまだ秘密」

「えー」


 プクッと頬を膨らませた。

 そんな私の様子がおかしかったのか、ちなっちは面白がって笑う。


「もう少しレベル上げしてから帰ろっか」

「う、うん。はぁー、これから忙しくなりそう……」


 ちなっちの行動力とあくなき探究心。

 その二つに挟まれながらも、私はいつもの日常っぽくて楽しかった。



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