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■138 遊ばないジャンル

ストックがだいぶ出来ました。

そのうち出しますが、ドミノみたいに間と間を繋げて繋がる様子は楽しいですね。

「へぇーこんなところに隠れてるんだ」

「細かいねー。ってか全然ストーリー進めないんだ」

「このゲームは既にクリアしているからな。クリア後の世界線だ」

「「なるほど」」


 私達はノースの家にやって来ていた。

 そこで何をするのかだけど、皆んなばらばらだ。

 まず大河ちゃんはさっきノースの家の料理長に連れて行かれちゃった。ノースが大河ちゃんの腕を褒めたおかげで目をつけられていたらしい。

 それから刀香ちゃんは別の人に連れてかれてしまった。何やら剣を見てもらうことになったらしい。どうしてそうなったのかと言うと、ノースがたびたび刀香ちゃんの並外れた剣術について話していたから、熱が出てしまったみたいだ。

 それにしてもノースは家だとよく私たちのことを話してくれてるみたいで、ちょっと気恥ずかしいけどやっぱり嬉しかった。


「このゲームって三年前に出たやつなんだよね」

「ああ」

「面白いね」

「クオリティも高いしねー」


 私達が称賛するのはとあるゲームだ。今はパソコンに繋げてノースが操作しているけど、360度広がると街並みが東京のそれで、空の色とか雲の流れとかがかなりリアルだった。

 元々普段からゲームなんてしないし、最近はVRを楽しく遊んでるけど、こうやって繋いで遊ぶタイプも見たて面白い。家に箱から一切取り出していないゲーム機を思い出してしまった。


(私も箱の中身出してみよっかな)


 ふと箱の中のゲーム達を思って可哀想に感じた。

 それはさておき、今ノースがプレイしているゲーム。私は当然知らないけど、結構有名なやつみたいだ。


「にしてもこのゲーム一部では売れたよねー」

「そうなんだ」

「確かにな。元々前評判で期待されていた上に発売後も期待以上の出来だった近年稀に見るタイプだ」


 最近のゲームは発売前はかなり良い評判を集めるけど、予算とか時間の都合とか色んなケースが絡んで最終的にちょっとガッカリするけどまあ仕方ないよねって出来のゲームが横行しているらしい。

 でもその中でも良し悪しはあるらしく、例えば〈WORLD OF LIFE〉はかなりの作品だ。人気も全然下がらない。

 一方でいわゆるクソゲーと呼ばれるジャンルにも熱心なファンは多くいる。そんな中、ノースのプレイするこのゲームーー


「〈CALL MY INSIGHT〉だっけ?」

「正確にはシリーズだがな。これはその記念すべき一作で、現在は続編が発売されている。もっともこれは一作目の初版だがな」


 ノースは誇らしげにそう答える。

 どうしてそんなに詳しいのか。私はちょっと気になった。


「ねえねえノース。なんでこのゲーム詳しいの?」

「私は自分の持っているゲームはほとんどやりこんでるからな。さらにこの作品は少しある」

「そうなんだ」


 ノースらしい。安心して心の詰まりが解消し、ゲーム画面に戻るとノースが何かの建物に入るところだった。


「ここって……」

「バーだ」


 バーなんて何だか大人っぽい。

 そう言えばこのゲームの主人公って何歳なんだろ。


「このゲームの主人公のって幾つなのかな?」

「確か28歳のはずだ」

「あっ、なるほど」


 ノースがプレイするこのゲーム、〈CALL MY INSIGHT〉は結構凝った要素があるみたい。

 そんな中、このバーは主人公の行きつけのお店でよく事件の推理が行き詰まった時や考え事をする際に立ち寄るらしい。

 おまけにBGMの変更も可能で、何かと重宝するそうだがそんなことがしたくなくなるほど、バーに入った直後にスピーカーから流れ出したBGMに聴き入ってしまっていた。


「これってジャズ?」

「チルいねー。私は好きかなー」

「私も私も!」


 先に千夏ちゃんに言われてしまったけど私も同感だった。

 バーっぽいとか言ったら古臭かったり、偏見みたいに思うかもだけど何だか雰囲気にとてもマッチしてるし、ピアノだけで演奏されていてとても聴き心地がいい。

 おまけにただローな感じで単調なリズムだけでなく、ところどころ無音や音の強弱、アップテンポで独特なリズム感を盛り込んでる。聴いてて飽きないし、それをどうしてか上手く纏めてる。言っちゃ駄目だけど、さっきまで聴いてたBGMが嘘みたいに飲まれてしまった。


「この曲なんって名前だろ」

「ああコレはトワイライト・メトロノームだ」

「「ほえっ?」」


 ノースが即座に返答する。

 トワイライト・メトロノーム。何でそんなにスッと名前が出てくるんだろ。もしかして全曲覚えてるのかな?


「もしかしてノースって全曲覚えてたりして」


 ちなっちが冗談半分で聞いてみた。流石の私もノースの記憶力がいいからってそこまでは無理だろうと内心思っていたけど、ノースの口からは素直に「もちろんだ」と出て来てびっくりした。だけどその後に続けて「だがこの曲は……」なんて続きを話そうとしたけど、そんな時だ。急にノースの部屋のドアが大きく開かれた。


「三人共いる?パウンドケーキ焼いてみたんだけど」

「いい汗かけました。私もまだまだですね」


 そこに現れたのは大河ちゃんと刀香ちゃんだった。

 二人共満足した笑みを浮かべている。

 大河ちゃんの手にはホットプレート。それから刀香ちゃんの頬には何やら傷跡がある。


「二人共お疲れ様」

「なにをなさっているのでしょうか?」

「ゲームしてるんだよね?」

「そうだよ。二人もこの曲聴いてみてよ」


 私はそう提案する。

 すると二人も私達が気に入ったトワイライト・メトロノームを聴いた。すると二人揃ってハッとした顔を上げた。


「いい曲ですね」

「う、うん。私、好きかも」

「だよねだよね。ノースは?って、あれ、ノース?」


 何故かノースは私達から顔を背けていた。まるで自分の顔色を窺われないようにしているみたいに見える。

 いつもとは違ってらしくないノースに違和感を覚えた。


「ねえノース?ノースはこの曲好き?」

「……」

「好きだから私達に聴かせてくれたんだよね?良い曲だから共有したかったんでしょ。わかるよ。私も好きだから」

「そうか。私も……好きだ」

「そっか。よかった」


 何だか安心した。もしかしたら私や千夏ちゃん達だけかと思ってた。

 でもノースの声色や耳の先っちょまで真っ赤っかなところから共感出来て嬉しい。共感性周知じゃなくてよかった。もしそうならこんな風に平気じゃいられない。


「ねえねえちなみになんだけどさー、この曲誰が作ったのかなー?」

「あっそう言えばそうだよね。ねえノース、これって誰が作った曲なの?」

「・・・」

「ノース?」


 もう一度ノースに尋ね返した。しかし今度は唇を完全につぐんで全然喋ろうとしない。

 変に思った私はノースの肩を揺する。それでも喋ってくれそうになかったので、私も諦め掛けた時だ。ふと刀香ちゃんは棚に並べられたCDの中から一枚を取り出してみせた。


「あれ?コレはもしかしてですが……」

「あっ、待てそれは!」


 刀香ちゃんがCDを取り出すや否や急に目の色を変えるノース。飛びかかるように刀香ちゃんの手からCDケースを奪おうとするがヒョイっと高く上げられ手が届かない。

 そうして裏を読むとそこにはトワイライト・メトロノームのタイトルがあった。如何やらこのゲームのサントラらしい。


「もしかしてですが」

「それに書いてあるんじゃないかな?」


 大河ちゃんはそう呟く。確かにそうだ。私も見たいと思って刀香ちゃんが代弁してくれる。


「トワイライト・メトロノームの作曲者は……あれ?この名前は」

「どうしたの?」

「いえ。この名前はノースさんのものでは?」

「ほえ?」


 刀香ちゃんから手渡されたCDケースの裏面には曲のタイトルだけでなく、小さく作曲者の名前が書かれていた。

 そこにあったのは「ノース・A・高坂」の名前。もしかしてと思ったが、流石にミドルネームまで一致していることから察した。


「へぇーこの曲作ったのノースだったんだ。凄いねノース!ピアノ弾けるだけじゃなくて、作曲もできたんだ!」

「たまたまだ。あの日はたまたま私が家でピアノを弾いていた。そんな中偶然生まれたオリジナル曲を両親に録音(とら)れて当時開発途中だったこのゲームのBGMに採用されたんだ」

「でも採用されたのって凄いよ」

「私の知ってる限りじゃゲーム界隈でもこの曲に関しちゃ全ーったく知られてなかったもんねー」

「私もだ。後から両親に問いただしたが、不正はしていないらしい。本当かどうかは知らないがな」


 それってつまりお金のやり取りがあったかもってことだよね?もしそうなら大変なことになるけど、ノースはノースで自分の力でほとんどどうにかしちゃうからその心配はないかな。


「とにかくだ。この曲のことはもう良いだろ。確かにこの曲を聴いて貰いたかったのは事実だが……」

「そうだったんだ」

「大河。黙れ」

「はううっ!」


 いつもは見せない睨みを効かせるノース。恥ずかしいんだったら聴かせなかったらよかったのに、なんて元も子もないこと言っちゃ駄目だよね。うん。


「あっそうだ。なーノース!今度ノースのピアノ聴かせてよ」

「はあっ?」

「いいじゃん。前にもお願いしたと思うけど。そしたら「そのうちな」みたいなこと言ってなかったっけ?」

「あっ!?」


 ノースも思い出してしまったみたいだ。流石は絶対記憶。恐るべし。


「ねえねえいいじゃん!皆んなも聴きたいよね?」

「あったりまえじゃーん!」

「私も失礼ながら」

「う、うん」


 皆んなが同意を示す。

 するとノースはため息混じりにこう言った。


「わかった。近いうちにな」

「「「えっ!?」」」


 私達は揃って声を上げた。だけど何だろ。今度はホントな気がする。

 何だか楽しくなって来た。

 その後、私達は大河ちゃんが焼いてくれたパウンドケーキを食べながら、たくさんゲームをした。すっごく白熱して楽しくて大満足の一日になった。


 


 

今回は露骨な今後の伏線です。

皆さんは人がゲームしてる姿を見てるのって如何思いますか?

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