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■130 夏祭り④

今日はもう1話投稿予定なので、朝方に1話出しました。

そう言えばいいねって機能が最近追加されたんですね、知りませんでした。

評価や感想・ブクマに加えていいねもしてくれると嬉しいです。

「アレは……」

「刀香ちゃん?」


 ふと立ち止まった刀香ちゃん。

 その視線の先にあったのは金魚すくい屋さんだった。


「金魚すくいか」

「小ちゃい子がいっぱいいるね」


 見れば小学生低学年ぐらいの子供達が大きな水槽に入れられた金魚達を取ろうと頑張っている。

 オレンジ、赤、赤と白の(まだら)模様に黒の出目金。色々いる。


「金魚なんて久しぶりに見たよ」

「私も。綺麗だね」

「確かにな。刀香?」


 するとノースが刀香ちゃんに声をかける。

 刀香ちゃんは私達にこう言った。


「少し見ていたもらってもいいでしょうか?」


 そう言うと子供達に混ざって金魚すくいを始めた。


「刀香ちゃん?」

「私も金魚すくいは久々なんです。小さい頃はよく兄上と勝負をしたものです」

「そうなんだ」

「結果はどうだったんた」

「それは……」


 私はノースの脇腹を肘で突いた。

 顔を顰めて私を軽く睨むが私は首を横に振ると、まるでわかっていたみたいな反応を示す。やっぱり気づいてたんだ。刀香ちゃんが勝ったって。


「ですが今はもう吹っ切れています。行きますよ」


 そう言うと刀香ちゃんは水槽の水の中にポイをすっと入れた。まるで刀で水を斬るみたいに緩やかかつ丁寧に金魚が自分の目の前に現れたタイミングで入れたことで、ポイの紙の部分で掬い上げるのか。そう思ったのも束の間。水に入れた衝撃で発生した水飛沫が金魚を水の中から引き摺り出したのだ。


「「えっ!?」」


 私と大河ちゃんは大声で驚き、周りにいた子供達も見惚れてしまう。


「す、すっげえ!」

「お姉さんカッコいい」

「アニメみたい」


 確かにアニメみたいだ。

 だけど刀香ちゃんの激震はまだ続く。今度はポイを素早く反転。反対側の全く同じ角度から入射し、そのまま今度も同じように水飛沫だけで金魚を弾いた。

 そんな人間業ではない技巧で何匹もの金魚を掬い上げ、しまいには紙の面が破れてしまい縁の部分だけで金魚の横を叩き上げた。


「なんだろ」

「確かにな」


 流れるような光景に圧巻させられ、しまいには私とノースとで共通項が生まれた。

 “これじゃ灯刃さんがやらくなるのも無理ない”そう強く打ち付けられた。


「お姉さん、そんなに取っても連れて帰れるのは五匹までなんだ」

「知っていますよ。ですのでこの一匹をいただけますか?」

「一匹でいいのかい?」

「はい」


 しかし刀香ちゃんが貰ったのはその内の一匹だけだった。オレンジ色が綺麗な金魚だ。


「お待たせしました皆さん」

「刀香ちゃんお疲れ様。凄かったね。かける言葉もなかったよ。ねっ」

「ああ。流石は刀香だ」

「灯刃さんが可哀想に思っちゃう、よ」


 刀香ちゃんも察していたのか少し暗い表情を落としたが、それでも刀香ちゃんはカッコよかった。

 ノースも大河ちゃんも刀香ちゃんも自分の持ち味を全面に押し出してる。私にはそんな才能や技巧はないけれど、何かせっかくだしやっておこう。そうちらちらと周囲を観察していると、紐がたくさん繋がった屋台を見つけた。


「ねえノース。アレなにかな?」


 私はノースに尋ねる。

 すると淡々と答えた。


「ああ紐くじか」

「紐くじ?」

「千本引きや千本つりと呼び名は様々だが、要は一方の紐の先端に景品が繋がれていて、もう一方を引くことでそれが手に入る至ってシンプルな仕組みだ」

「へぇー」

「だがアレはやめておけ」

「どうして?」

「イカサマの可能性がある。必ずしも並べられた景品が出るとも限らないからな」


 ノースはそんなことを言う。完全に信用したない目だ。まあ確かにその可能性もあるけど、そうなったら警察に任せるしかないよね。

 でも何だかやって見たい気がしてならなかった。


「私一回やってみるね」

「本気か愛佳」

「うん。でもね多分大丈夫だと思うんだ」

「また根拠のないことを言うな」


 ジト目になって私に呆れるノースをそこそこに、私はお金を払って紐くじに挑戦する。

 それにしても一回100円なのはかなり良心的に感じた。


「どれがいいんだろ」

「お嬢さん、一回持った紐は絶対に引っ張ってもらうからね。重さで判断されても困るからね」

「はーい」


 屋台のお婆さんはそう指摘する。

 なるほど。その考えはなかった。と言うことは単純に運任せである。

 うーん。わかんないよ。


「ノースさんどれが当たりかわかりますか?」

「見立てではないな。この残り半数からして、まだ全然売れてない」

「多分皆んなわかっててしてないんだと、思うよ」

「だろうな」


 ノース達は口々にそう言い合う。完全に騙されている目だ。

 しかしそこにやって来たのは焼きそばを口一杯に頬張りながら戻って来た千夏の姿だった。


「なになにー?なにやってんのー」

「あっ千夏ちゃん。やっと、会えたね」

「いやいやー愕然としている屋台のおじさん達を通り過ぎて行ったらねー、そりゃわかるよねー。で、今は誰がなにしてるのって……ああ愛佳がくじやってるんだ。こりゃあのお婆さんもう店仕舞いかなー」

「「「えっ?」」」


 持って来た千夏の発言に三人が揃って同じ声を上げる。

 そんな中、愛佳はもうどうでもよくなって適当にくじを引く体勢に入った。


「もうわかんないよ。うーんと、これにしよ!」


 私は適当に紐を掴んだ。


「それでいいのかい?」

「はい。せーのっ!」


 私は思いっきり引いた。すると凄く重たい衝撃が伝わる。

 目を丸くしてみると奥の景品の中で、一つだけ空中に浮かんでいるものがあった。


「あれ、コレって……」

「な、な、なんじゃと!?」


 見れば最新式のゲーム機だった。

 ただVRではなくテレビに繋いで遊ぶ系だ。


「あっ、当たっちゃった?」

「せ、せっかく見つけて来たのにのぉ」


 ちらっちらっとお婆さんの視線が私に向けられる。

 しかしせっかく当たったのだ。持って帰ろう。


「貰って帰るね!」

「えっ、あっ、のっ、ちょ!?」


 私は紐くじの屋台から一番の目玉商品を掻っ攫ってしまった。

 それを見届ける皆んな。千夏ちゃんもいつの間にか合流している。


「お待たせ。見てよ、ゲーム機取ったよ」

「あ、ああ」

「よかったじゃん愛佳」

「うん。でも……」

「でも?」

「コレ、ウチにあと三つあるんだよね」


 私は笑ってしまった。

 それを聞くや否や千夏ちゃんが皆んなにこう呟く。


「ほらね。やっぱり愛佳ってこういう才能あるでしょ」

「ん?」

「才能……と言うより常軌を逸した強運だな」


 ノースはそんな風に変換する。それには皆んな何故か同意していて首を縦に振るのだった。

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