■129 夏祭り③
本日2話目。
久々の投稿だけど、「勇者様、お願いだから私を師匠と呼ばないで!」もよろしくね。
それと1話前もだけど今回もとんでもないファンタジーが起こるよ。(いわゆるキャラ付け)
「じゃあ次はなにしよっか!」
「なにも考えてなかったのか」
「うん」
「はぁー」
ノースは大きな溜息を付いた。
そんな彼女の隣では刀香ちゃんと大河ちゃんが何か相談している。
「なにも考えずに来ちゃったけど……」
「それもまた愛佳さんらしいですよね」
「そうだよね。うーんと、ん?」
「どうかなさいましたか?」
刀香ちゃんは一点を見つめて固まった大河ちゃんを不思議に思った。
私も気になったので視線の先を覗き込んでみると、そこには変な屋台が店を構えていた。
「瓦割りチャレンジ?」
どどんと太字の筆書きで書かれた看板。
その前には分厚い氷の板が一つ置かれていた。
「板氷か」
「板氷?」
「氷晶の板版だ。氷を結晶化したもの。瓦割りの要領で、昔あったチャレンジの一つだな。まあ予め割れやすいように細工がしてあるのが一般的だが……」
「どう見ても小細工などされていませんね。割らせる気がありません」
刀香ちゃんはそう呟くと店を睨みつけた。
流石に刀香ちゃんにも不審に思えてならなかったみたいだ。
「それにしても結構人だかりができてるね」
「体格の良い屈強な男達ばかりだがな。賞品は……現金か」
「まさかの現金!」
確かに挑戦費一回500円に対して賞金10万円は破格だ。それはすなわち相当な自信の裏返しであり、挑戦したマッチョな男の人は拳を叩き込んだ。しかしーー
「おんどりゃぁ!」
氷はびくともしません。それどころか反動で男の人の方が手を覆う事態だ。それを店主は嬉しそうに不敵な笑みを浮かべていた。マジで取らせる気ないよ。
「悪質だね」
「ああ。だがこれだけの人だかりだ。慣習も集まる」
「賑わってるけど……」
ぽつぽつと一人また一人と敗れては挑戦を繰り返す。
しかしそんな中、大河ちゃんは「アレを壊せばいいんだ」
と呟くととことことお店の方に向かってしまった。
「えっ、大河ちゃん?」
「ちょっと行ってくるね」
そう言うと屋台の方に並び、屈強な男達が苦渋を舐める中なんと大河ちゃんの番になった。
「あの、お願い、します」
「えっお嬢ちゃんが挑戦するのかい?ウチはお嬢ちゃんが楽しめるようにはできたないんだけどね」
「お願いします」
そう言うとそそくさと財布から500円玉を取り出すと、お店の人に渡した。
ズルできないようにカメラも回っていてそれが証拠になるっぽい。
「じゃあ行くよ。チャンスは一回だからね」
「は、はい」
チャンス一回なんだ。それってかなり無理があるんじゃないの?直感的にそう口にしそうになった。
しかし大河ちゃんは何事でもないみたいに冷静で、チャップするみたいに軽く板氷を叩いた。
見るからに軽そう。やっぱり冷やかしかみたいにお店の人がほくそ笑むや否や、次の瞬間ーー
パリーン!!
「「「ええええええええええええええええ」」」
断末魔が氷の割れる音と重なった。
遠くから見ていた私達も口をあんぐりと開けて呆然とする。氷は綺麗に真っ二つに割れていて、それをやってのけた大河ちゃんは「ふぅ」と息を吐いた。
「な、なんでだ!塩まで入れて固めておいたのによ。割れるわけがねぇ!」
「でも割れちゃったから」
「う、うるせぇ!こんななまぐれだ。他の客が散々叩きまくったから罅が入ったんだ!」
「おいおいなに言ったんだよ。カメラ回ってんのにそれで言い逃れができんのか?」
「だったらイカサマだな。そうに決まったらぁ!」
「イカサマとかしてないです」
「そうだぜ。俺らから毎年毎年散々巻き上げた金、とっとと出しやがれ!」
「「そうだそうだ!」」
何だろ。皆んな怒ってたんだ。フラストレーションが溜まりに溜まってその結果、一気に爆発したって感じ。その火付け役に偶然抜擢されたのが今回大河だった的な流れに見えた。奇跡だ。
「う、うるせぇ!ほらこれ持ってとっとと帰りやがれ!」
逆ギレだ。
しかも現金を封筒何かに入れずにそのまんま渡してきた。
大河ちゃんは何とも腑に落ちない顔をしていたが、それを察したノースによってそそくさと回収される。
「凄いね大河ちゃん!」
「よ、よかったのかな?」
「いいに決まっているだろ」
ノースが速攻でフォローを入れる。
私も大きく頷き、大河ちゃんを褒めちぎった。
「それにしても凄かったね。本当に割っちゃうなんて」
「え、えへへ。私こう見えて、力、あるのかも」
「だろうな」
「ええ。あの氷にはなんの細工もされていませんでしたからね」
「やっぱり凄いよ大河ちゃん!(皆んな普通じゃなくて面白いもんね)」
「あ、ありがと?」
大河ちゃんは腑に落ちない感じでぎくしゃくした挙動を見せる笑顔をくれた。
さてと今度こそ私も楽しもう!




