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■118 龍蒼寺の家

ここから結構重要回。

 8月も中頃。

 私達は刀香ちゃんの家に呼ばれていた。理由は特にない。ただ唐突に刀香ちゃんに「ウチに来ませんか?」と誘われたからだ。

 それで私達は断る理由も特になかったのでお呼ばれすることにした。で、東京に今来ている。大河ちゃんとは途中で合流し、教えてもらった住所に来ていた。


「刀香ちゃんの家ってどんなかな?」

「さあねー。でもあの話し方だしさー」

「格式高いお家だったらどうしよう……」


 大河ちゃんは震えている。

 いつもならここで刀香ちゃんがフォローしてくれるけど、今日はいない。


「大丈夫だよ大河ちゃん。そんなにビクビクしなくてもノースの家を経験してるんだし問題ないって」

「だ、だよね。うん。なんだか気が楽になったよ。ありがとね愛佳ちゃん」

「おい。それは私に失礼じゃないか」


 ノースの申し入れはまあさておきで置いておくとして、それよりもどんな家なんだろ。確かに大河ちゃんの言う通りしっかりしたお家だったりしてね。あはは。

 とか何とか言っていると、聞かされていた住所に辿り着いた。で、そこにあったのは……


「ここかな?」

「だろうな」

「あわわわわわ」


 私達がやって来たのは何て言おう。まあおっきかった。

 ノースの家みたく洋風ではなくて和風なんだけど一面を白壁で覆われ、家の前には門みたいな感じだ。


棟門(むねもん)か。なるほど。どうやら大河の予想通り、龍蒼寺家はかなりの風格を持つ家系らしいな」

「えっ、えっと、ど、どうしよ」

「どうしようもなにもないよ。いつも通り自然にしてればいいんじゃない?」

「で、でも」

「誰も彼も愛佳や千夏のような人間にはなれない」

「それ酷くない?」


 私は抗議した。

 だけどそんな軽いノリツッコミのおかげで大河ちゃんは少しだけ落ち着いたみたいだ。


「じゃあ入ろっか」

「うん!」


 大河ちゃんも私の隣に立って堂々と刀香ちゃんの家の門を潜った。

 するとそこにあったのはやはり大きな家だった。


「す、凄いね」

「へぇー、ノースの家とは真逆だね」

「ああ」

「あわわわわ」


 大河ちゃんはまたパニックになっていた。

 確かにそうなるのもわかる。何故ならそこにあったのはあの立派な棟門に相応しい和風建築だった。しかもかなり大きくて広い。瓦屋根の光沢感も非常に眩く、黒塗りのそれらはかなりマッチしていた。


「向こうに見えるのは道場か」

「へぇー道場まで選んだなー」

「本格的だよね」


 私達は思い思いに感想を言い合った。

 そんな中、外の騒がしさに釣られたのか目の前の引き戸が開かれる。


「どちら様でしょうか……ああ皆さんでしたか。ご足労大変ありがたく思います」


 そこに現れたのは刀香ちゃんだった。

 初めて見る()の彼女の姿は完全に“和”といった風格はなく、普通の格好だった。

 ただ羽織っている薄い羽織は涼しげで見た感じ清々しかった。


「こんにちは刀香ちゃん。と言うわけで来ちゃったんだけど、いいかな?」

「はい。大歓迎です」


 刀香ちゃんは嬉しそうに首を縦に短く振った。

 サンダルではなく草履に履き替えた彼女は私達を家へと招き入れる。その感じがちょっぴり旅館チックだった。


「さあどうぞ中へ」

「お邪魔します」


 私は刀香ちゃんの家の中に入った。皆んなも私に続き家の中の様子もまたこう歴史を感じる感じだった。メチャメチャ風情があって、私は嫌いじゃない。むしろポイって感じで素敵だった。


「いい家だな。風情がある」

「ありがとうございます。さあ、私の部屋に案内いたしますね」


 スノーの率直な感想。私も同意見だ。

 刀香ちゃんはそれを聞き入れるや否や、私達を自分の部屋へと誘う。

 私達は玄関先に靴を揃え、刀香ちゃんの後をついて回った。


「おっきな家だね。迷っちゃいそう」

「そうですね。確かに慣れていないと迷ってしまわれるかもしれませんね」

「家の人はいないのー?」

「いえ。父上は夕方まで帰っては来ないでしょうが、兄上や妹はそのうちに」

「へぇー兄弟だったんだね」

「はい」


 にこやかな表情だ。その笑顔に裏はない。むしろ清々しいぐらいに素敵だった。それは刀香ちゃんの目の輝きから察せられた。


「そうですね、後で一度庭を覗いてみませんか?」

「お庭?」

「はい。もしかしたら兄上が顔を出すかもしれませんので」


 刀香ちゃんはそう提案した。

 私達は軽く頷き返すと刀香ちゃんは優しく微笑むのでした。

 

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