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■115 ご都合主義もいいところ。

いわゆる後日談。

「なるほど。そんなことがあったのですね」

「はい」


 私はあの時訪れた不思議な空間にやって来ていた。

 そこは桜蘭郷。外界とは隔離されたって難しい言葉使うとややこしくなるので、簡単に説明すると“年中桜満開の綺麗な湖の中心にある庭園”だ。


 そこで話すのは私ともう一人。

 この場所のことをよーくご存知のはずなのに、明確なことを何一つ教えてくれない〈セリアンスロゥプ〉の女性イズモさん。

 本人の言い分だとプレイヤーっぽいけど、何故かバグか何かでアイコンとかが表示されないのだ。そして何か意味深にこのゲームのことを深く理解している人でもある。だけだ私、名前を聞いてもまるでピンとこなかったしネットでも調べてみたけどよくわからなかった。多分私のリサーチ不足。


「それで、その後マナ達はどうしたんですか?」

「えっと、皆んなで話し合ったんです。なにが起きてるのかわからなかったので……」


 そうやって振り返るのはこの間の緊急クエストのこと。

 その結末は私達がドラピューズとの激闘を終えた後、すぐに訪れるのでした。


 ◇◇◇


 私達はドラピューズを倒した。

 砂浜に転がるのはドラピューズの戦った後。言い方を変えれば死骸になる。


「はぁはぁ。やっと、倒せ、た」


 私は力尽きて砂浜に転がる。

 流石に飛ぶ相手と対峙するのは相当クセがあった。

 しかもドラゴン的な姿をしたモンスターで体力も多かったので結構疲れる。そのためHP底を尽きそうだった。


「あはは。後一発食らってたら死んでたかも」


 そんな私にいち早く声をかけてくれたのは親友のちなっち。彼女自身も相当堪えたようで、表情はにこやかだけど所々ボロボロだった。

 そして表情。特に耳元がピクピクしているのでちなっちも疲れが溜まっていた。


「お疲れ様ちなっち」

「マナもね。でも、やったじゃん」

「うん。皆んなボロボロだけどね」


 見れば私達だけじゃない。

 スノーも大鎌を杖のように使って身体を支え、Katanaも何とか平常を保っているけど足元が疎か。そしてタイガーはペタンと女の子座りになっている。よっぽど疲れたんだ思う。


「皆んな大丈夫?」

「なんとかな」


 スノーが渋々答える。

 本当は疲れてるのにそれを隠そうとしてるけど、目が据わっている。


「皆んな相当疲れてるね。でも、やっとこれで……」


 私が一息つこうとした途端、ピコン!といい感じの効果音と共にウィンドウが開かれた。

 突然のことにハッとなるけど、如何やらイベントが終わったみたいだ。それにこの時間帯。もしかしたらもしかするかも。


「この時間ってことは私らかもねー」

「うん。期待していいかな」

「期待するぐらいは誰にだって許されている」

「いや、そう言う厳しい目線のじゃなくて」


 私達の軽口を往復している間にKatanaはウィンドウをスクロールして行く。


「皆さん結果が出たみたいですよ」

「そっか!で、どうなの?」

「少し待ってください。えっとですね、緊急イベントお疲れ様でした。今回の勝者は……」

「勝者は?」

「ギルド『X(クロス)ドラゴン』になります?」

「クロス?」

「ドラゴン?」


 私とちなっちは互いに顔を見合わせた。

 あれもしかして私達負けたの?あんなに頑張ったのに?なんだろ、この報われなさ。まあそれもゲームなんだろうけど、あんなに苦労したのに……とほほな気分だ。


「優勝したチームには賞品として龍薬玉が贈られます?あれ、島じゃないんですね」

「「えっ!?」」


 私とちなっちは困惑してしまう。

 すると自然にスノーはと視線が移る。


「ねえスノー、これどうなってるの?」

「うむ……」

「スノー?」


 如何やらスノーも混乱しているみたいだ。

 ウィンドウ画面をひたすらにスクロールしてみては考えをまとめ出す。もう一度聞いてみよう。そう思い声をかけた時、スノーは考えをまとめていた。


「とりあえずだ。龍薬玉と言うのは割ると一度だけ、周囲に存在するプレイヤーのHPとMPを全回復してくれるとても貴重なアイテムだ」

「そうなんだ。で、これどうなってるの?」

「どうやら私達は本来の緊急イベントとはまた違うイベントを遂行していたらしい」

「えっ!?」

「いわゆる裏クエストと言うやつだ」

「裏、クエスト?」


 何それ。聞いたことないんだけど。もしかして私だけかな?私だけ知らなくて皆んなそんな私に合わせてくれてた的な感じなのかな?

 そう思って皆んなの顔色を見てみると、首を横にしていた。如何やら皆んなわかってなさそうで、スノーでさえ言葉がたどたどしくゆっくりだ。


「そう言うのって普通にあるの?」

「いやないな。ミッションやなにかしらの称号的な意味ではあり得るかもしれないが、普通存在しない。だが如何やらコレはこの島にいち早く到達したプレイヤーに与えられるように仕組まれた新しいクエスト。イベントと言うていで存在するものになる」

「御都合主義すぎでしょそれ!」

「諦めろ」


 私の盛大なツッコミにも乗らず、スノーは淡々と飽きれていた。

 何だろ。ホント、何が起きたのかな?

 未だに頭の中で整理がおぼつかない私、そんな無知な私に結論を伝えるスノー。


「つまりだ。今回のイベントはこの島を除いた三つの島で起きていた内容で、同じモンスターが出現するようにシステム的に操作されていたがために同時刻に私達がこの島で起きた別のクエストを受けたことになる」

「えっと……じゃあどうしたらいいのかな私達?そもそも島がなんで貰えるとか、どうしてこの島なのかとかは?」

「それは知らないが、後者は説明がつく。この島には普通では辿り着けない。何故ならここは海底洞窟を通らなけれ(・・・・・・・・・・)ば辿り着けない(・・・・・・・)からな」


 スノーは肝心なことをここで追加した。

 確かにここって大陸から海底洞窟を通ってようやく辿り着ける完全に隔離された島だけど、後近くって言っても他の三つの島とはそこそこ距離もあるけど。でも、なんでこんなことになるんだろ。


「そもそもこの島のことをマナに伝えた奴。ソイツに聞けばなにかわかるかもしれないが」

「うん。私も気になる。イズモさんって何者なのかな?」

「イズモさん?」

「うん。私にこの島のことを教えてくれた不思議な人」

「不思議な、人?」

「うん!」


 流石にリアルでの名前を教えるのは良くないと思った。

 スノーのことだもん。後でメチャクチャ調べるに決まってる。そんなことしたら色々大変なことになるかもしれない。プライバシーを守るための処置だった。

 だから本人に会う時までは出来るだけ内緒にしておこう。で、このことについては私が本人に直接聞こう。そうして今日を迎えた次第がことの顛末でした。


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