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■113 【聖拳】は使えない。

今年最後の投稿です。

この話は特に事態は何も進行しませんが、今後の設定も加味してこんな感じになってます。

 ドラピューズの毒攻撃を何とか回避した私達。

 だけど砂浜はぼこぼこたくさん穴ぼこが出来ていた。


「あの凹み、ドラピューズの毒のせいだったんだ」


 今更わかってもどうしようもない情報を手に入れ、私達は岩場まで逃げ込んでいた。

 ここならドラピューズの視界にも入らないし、そのおかげか今のところバレてないみたいだ。


「いやー、もう少し入ると思ったんだけどねー。失敗失敗」

「でも惜しかったですよね」

「いんやー全然」


 ちなっちはお手上げ的な感じに手を開いた。

 確かに一番ドラピューズの生態に詳しいのは一番長く戦ったらちなっちだ。とは言っても全員同じぐらいなのであまり当てにはならないようだけど、私の目から見ても確かに効いてる様子はさほどなかった。

 それはスノーの目線からも同じようで皮肉めいたことを言う。


「あんなのは攻撃の内に入らない」

「だよねー」


 本人が一番怒りたくなることを言われても全く動じず、ましてやその意見に賛同するちなっち。そのことについては自分の中で既に実感しているのだろう。

 ちなっちの投げつけた剣は翼の付け根部分に当たった。だけどそれだけで簡単に抜けてしまったぐらいに浅かった。あれがもう少し入ったら変わったのかもだけど、そんなに都合よくは行かない。


「でもちなっち諦めてないでしょ?」

「当然だって!」


 はっきり公言するちなっち。流石は頼りになる親友だ。

 ちなっちのゆったりした話口調からしてみてもそうだ。ちなっちの中ではまだまだいける!って感じで、心の余裕さえ見えた。だけだ問題はここからだ。


「にしてもかなり警戒させたぞ。どうする」

「どうすると言われましても。私には陸ノ型で援護するしかないので、あまり事態の直接的な解決には至りませんね」

「私も無理っぽかったなー。〈赫灼相翼〉も連撃用だしさー」


 Katanaとちなっちは共に断念した。流石に二人みたいな近接武器主体のやり方だとこれ以上は無理そうだと判断したのだろう。それを言えば私とタイガーも同じだ。


「私とタイガーは【跳躍】があるけど……」

「いや無理無理。流石に跳べねーって」

「だよね」


 【跳躍】はあくまで跳躍だ。

 それを自由自在に飛ぶ力じゃなくて、土台あってこそのスキル。流石に使い物にならない。てなわけで、残すはスノーの弓矢にかかっているけどーー


「あの硬度。おそらくはあの黒い部分にはまともに矢は通らないだろうな。私の弓でいけるかどうか……」

「難しそう?」

「ああ」

「だよね」


 スノーは弓の経験が豊富なわけではない。つまり狙って飛んでいる相手の、しかも唯一通りそうな翼の付け根を集中して連続で当てるのは無理に近い。

 じゃあどうする。万策尽きた。頭を180°ひっくり返しても出てこない。


「じゃあ私がさっきのちなっちみたいに飛んで、

【反転】からの【聖拳】で打ち落とすとか?」


 私はそんな無茶な提案をした。

 【反転】スキルを使えばスキルの条件を反転出来る。それを使って最強の【反転】からの【聖拳】コンボを叩き込んで、防御貫通の一撃を加えることだって出来るはずだ。

 まあその後の反動とかインターバルと発動からの硬直。さらに素手で殴るからその後剣握れないけど……それでも少しはマシかもしれない。とりあえず今の状況を少しでもマシな方に傾けられるなら、と必死に考えてみたけどそれをスノーの一言が一蹴した。


「馬鹿かマナ。お前はこの間のアプデで、スキルの幾つかがナーフされたのを忘れたのか。【聖拳】スキルは弱体化されたんだぞ」

「あっ!?」


 そうだ今更思い出した。

 私がどうしてこのスキルを使わなかったのか。それはこのデメリットが重たすぎるのもそうだけど、弱体化されたからだ。確かーー


「“武器を全て装備から外す”。そんなデメリットを背負ってまで狙うスキルじゃない」

「そっか。武器がないんじゃそれで仕留められなかったから」

「集中砲火で終わりだな。それに確か“発動までの時間も長くなった”んじゃなかったか?」

「ぎくっ!」


 そうだよ。タイガーに言われて思い出した。

 私はこのスキルの変更点をすっかりきっかり忘れていたみたいだ。じゃあ如何しよう。如何したらドラピューズにダメージが入るのかな。


「《スターライト・エンド》」

「えっ!?」


 スノーがポツリと呟いたのは私の魔法の名前だ。


「《スターライト・エンド》の一撃ならドラピューズにダメージを与えられるだろうな。おまけに早く済む」

「でもあの魔法は……」

「そうだ。だからこそ、同じ威力のある兼ね合いの良い技か魔法がいる。誰か他に魔法を使える奴はいるか」

「「「うーん……」」」

「駄目か」


 沈黙が三人の間を流れた。

 だけどスノーは何故かそれを予測していたみたいな反応で溜息を何となく吐いていた。私にはそう見えた。と言うか呼吸のリズムからそんな気がした。


「もしかしてスノーはなにかあるの?」

「あまりやりたくないが仕方ないか。だがこの魔法を使えば《ナイト・デスサイザー》は撃てないぞ」

「それでもそっちの(・・・・)方が強いんでしょ!」

「まあな」


 「だったらやろう!」私はそう提案した。

 するとスノーの中で答えが決まったらしく、岩の上に下ろしていた腰を持ち上げた。


「行くぞ。このまま休ませておくのも惜しい」

「じゃあやるんだねー」

「ああ。速攻で仕留める」


 スノーは鋭い眼と視線で私達に伝える。

 それを受けた私達はもう一回。今度は無策ではなくドラピューズに再戦する。

 



今年もありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

ブクマ、評価してくれると嬉しいです。

シリーズ設定しているもう一つの小説の方に今日は二本予約投稿します。

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