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■109 遊んでいたはずなのにね…

二話目です。

 私達は海で遊んでいた。

 周りはゴツゴツした岩場が続くような場所じゃなく、サラサラした白い砂がいーっぱいの砂浜。

 そこで遊んでいた、はずだった。


「はい、タイガー。一、二、一、二」

「はぁ、はぁ」


 私はタイガーの手を引いている。

 と言うのも簡単な泳ぎの練習だ。だけど本当はプールの方がいい。安全だし、波もないからね。

 一応静かな海ではあるけど海流の流れとか心配だし泳げない子にはちょっと危ないかも。だからか、ちなっちは率先して沖の方に出ていた。


「マナー!タイガー!沖に流されても私がいるから!」

「うん!」

「心配しなくていいからー!」

「わかったー!」


 私とちなっちはおっきな声を張り上げていた。

 一方でスノーとKatanaの方は砂浜にいる。

 一応水着には着替えているけど何をするでもなく座っている。


「遊ばないんですか?」

「ああ」


 そんなスノーに話しかけるのはKatanaだった。

 彼女は優しい。清らかな清流のような雰囲気でいる。


「では私と一緒に砂の建造物でも作りませんか?」

「はぁ?」


 何を話してるんだろ?

 スノーの顔が歪んでいた。

 私はそんな二人のやり取りを見つめながらタイガーの練習に付き合っていた。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

「大丈夫タイガー?」


 私は手を引きながら話していた。


「ちょっと休憩する?」

「えっ!?あ、ああ」


 タイガーは何処かパニックになっていた。


「大丈夫。足は届くから」


 私はそう説明した。

 するとタイガーはホッとしたように脚を海底に沈める。さっきから練習していたのは結構近場だ。だから普通に足がつく。


「タイガー上手だね。だいぶ上手くなってるよ!」

「ほ、ホント?」

「ホントホント!でもちゃんと水の中で目を開けられるようにはしよっか」

「ううっ……」


 まだまだ改善の余地あり。

 でもちょっと楽しかった。とそんなことをふと思っていると、沖の方で待っていたちなっちが戻ってきた。

 全力のクロールじゃないにしてもかなり速いペースだ。


「マナ、タイガーはどうよー?」

「うん。かなり上達してるよ。ちなっちの方こそありがとね。沖の方で見守ったてくれて。怪我とかない?」

「ないない。ところでマナは泳がないの?」

「うーん。私はいいかな。タイガーと遊んでる」

「そっか。じゃあ私、ちょっと泳いでくるからー」

「うん。気をつけてね」


 ちなっちはそう言うとまた泳ぎに行ってしまった。


「ちなっちってホント元気だよな。無尽蔵の体力ってやつか」

「かもね」


 ちなっちは運動に関してはピカイチだ。

 だからあんなに泳いでいるのに全く疲れている様子もない。適度な水分補給も忘れないところも周りがちゃんと見えている証拠だ。


 ◇◇◇


 私は悠々と泳いでいた。

 海に来るのは去年振りかも。って、ここはVRゲームの中なんだけどねー。


「ふわぁっ!」


 すると急に白波が立って私を飲み込んだ。

 だけどそれもまた海らしい。私はすぐに顔を上げる。と顔を両手で拭いた。


「あー。楽しいー!」


 うん。やっぱり楽しいや。

 昔から体を動かすのは結構好き。だからこうして海やプールで思いっきり泳いでクタクタになるのって結構私の好みになる。皆んなはどうか知らないけどね。


「にしてもなんでマナはここに行こうって言ったんだろうねー。おっ!?」


 ふと私の視界にウィンドウが開かれる。

 突然ポップアウトして驚いた私だったけど、そこに書かれていた赤文字を見て首を傾げるのだった。


「“緊急(ゲリラ)クエスト”?」


 ◇◇◇


 私達はとりあえず砂浜に集まって突然の緊急クエストについて話をしていた。

 内容はと言うとこの間上がっていたイベントについてだった。


「なるほど。如何やらこのイベントはこの島とこの周辺にある他の島とを巻き込んだものらしいな」

「そのようですね。ですがこれは……」

「モンスターの討伐。意外にシンプルだね」


 私は軽い言い方をする。

 と言うかその通りなのだ。ただ相手は聞いたことがないモンスターだった。


「このドラピューズってどんなのかな?」

「さあねー」


 ちなっちはお手上げみたいな感じで腕を頭の後ろに回す。

 私はノースに視線を動かすとナースも首を横に振る。つまり誰も知らないというわけだ。


「まあこの手のモンスターは事前情報のないイベント限定モンスターだろうな」

「へぇーそんなのいるんだね」

「いるだろ。まあいい。とにかくこのイベントはどうやらこの島を中心にしている。つまりだ。マナの聞いた話は間違いじゃなかったんだな」

「あっそっか!」


 私はポンと手を合わせた。

 だけど如何してあの人はそんなこと知ってたんだろ。何かのリーク情報なのかな?それとも単なる勘かな?よくわかんないけど、とにかくイズモさんの言葉を信じてよかった。


「うむ」


 そのことについては如何やらノースも腑に落ちないのか少し間が空く。

 だけどすぐに意識を切り替えてイベントの内容についてだ。


「このクエストはこのドラピューズを先に倒したプレイヤーの勝利ならそうだ」

「えっとなになにー。ドラピューズは島ごとに一匹だけね。しかも時間制限つきかー。じゃあ早くしないとね。で、どうするのさマナ」

「どうするって言われても。わたしは参加したいかな。皆んなは?」


 私は皆んなの顔色を窺う。

 全員その気らしい。よかった。如何やら皆んな怒ってなさそうだった。まあこんなところに連れてこられたらちょっとは変に思うよね。いや思うかな。私も不審に思うもん。


「じゃあ参加ってことで。皆んなイベント楽しく頑張ろー!」

「「「「おー」」」」


 それぞれが拳を掲げたりゆっくりと首を縦に振ったりした。

 そんな調子で呼吸を整え合わせ私達はクエストを楽しむのだった。

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