■108 変な形の島にやって来ました。
今日はもう一話投稿予定!
新イベント編が始まります。
そして日曜日。
私達はいつもとは違うエリアにやって来ていました。
「うわぁー!」
私の目の前には青く澄み渡る広大な海が窺える。
綺麗なエメラルドグリーンだ。
しかも周りの景色も相まって風情と言うか何というかとにかく良い。
「綺麗な海だね」
「確かにな。人の姿も見られない」
私の感想にスノーはそっけないことを言う。
まあ確かに、見た限りでは人の気配なんてない。
「それでマナ。ここになにがあるんだ」
「わかんない」
「わからないか。はぁー」
スノーが短い溜息を吐いた。
そんな彼女の背中をパン!と軽く叩く親友ちなっちは笑顔でいる。
「まあいいじゃん。とにかく私泳ぎたいなー」
「いきなりだな」
「でもちなっちらしいって言えばらしいよね」
「“らしい”んですね」
「そうだよ」
いつも通り流れるままのKatana。
そんな彼女の傍では何故かぷるぷる震えているタイガーの姿がちらちら窺えた。
服の袖をギュッと握っている。
「どうしたのタイガー?」
「あっ!?な、なんだよ。なにかあんのか!」
「いやなんでもないけど。如何したの震えたりなんかして」
私はビクビクしているタイガーに聞き返す。
すると彼女は気を張っているような態度を取るのだ。
「は、はぁ!?あ、いや俺は全然ビビってねえし。いや、その私は、そのー……あわわわわ」
「?」
明らかに挙動がおかしい。
如何したんだろ。私は試しに尋ねてみた。
「タイガーどうしたの?」
「だ、だからなんでもねえよ!」
「なんでもなくないよ。もしかして言えないこと?」
「いや、あの、その……」
「ん?」
私は首を傾げる。
わかっていない私。そんな私にスノーが短くそれっぽいことを言ってみた。
「泳げないのか」
「!?」
タイガーがビクッ!と肩を上げた。
これはあれだ。当たりだ。しかしタイガーは冷や汗を掻きながら首を横に振る。
「い、いや、そんなわけねえし」
「じゃあ泳げるの?」
「い、いやー、そのー。が、学校では泳いでるぜ!」
「そう言えばうちの高校は水泳は選択でしたね」
「Katana!」
タイガーが珍しくKatanaに対して怒鳴った。
だけど声音がプルプル震えている。本当に泳げないんだ。世間ではかなづちって言うんだっけ、そう言うの。
でも私はそれでもいいと思うけどね。
「気にしなくていいよタイガー。私は別に泳げなくたっていいと思うよ」
「だけだ、せっかく海に来たのに」
「海に入らなくても遊ぶ方法はいくらでもあるよ。ねっ、スノー!」
「ああ」
スノーも腕組みをして首を縦に振った。
砂でお城を作るもよし、ビーチバレーをするのもいい。貝殻を集めてみたりするのだって悪くない。
それに足の届く範囲だったら遊んでも問題ないはずだ。だけどもしタイガーの思うところが違うなら話も変わってくる。
「もしかしてタイガーって、泳ぎげないのー?」
「えっ!?」
ちなっちが核心に近いことを言い放つ。
するとタイガーは一瞬身震いしてから、首を短くコクコクと縦に小刻みに振るわせた。
「それだったら教えてあげるよ!」
「いいの?」
「うん。だって皆んなで遊んだ方が楽しいもん。スノーとKatanaは泳げる?」
私は二人に尋ねる。
すると二人とも応えてくれた。如何やら二人とも大丈夫そうだ。
「じゃあさー、そこに海あるんだし今から練習しようよー」
「いいの?って、今から!」
「そうそう。ほらほら早く早く!」
ちなっちは駆け出した。
私はそんな子供っぽさを全開に出すちなっちをぼんやり見つめて思う。
「ちょっと待ってよちなっち!」
私もうずうずしていた。
一応水着も持ってきている。でもまさかこっちでも泳ぐことになるなんてとは思わなかった。
「と言うことでしばらく皆んな休憩ってことでいいよね?」
「わかった」
「了解しました」
スノーとKatanaは即刻受け入れる。
それをにやけた笑みで私は見返し、タイガーの手を掴んだ。
「じゃあ行こタイガー」
「えっ、ちょっと、マナ!」
「ほらほらGO、GO!」
私はタイガーを連れて走り出していた。
そうしてしばらく遊びにふけるのでした。
「やれやれ」
「まあいいではないですか、スノーさん」
「仕方ないか」
スノーもスノーで何処となくこの雰囲気を楽しんでいるような節があった。
何だろ。すっごく夏っぽかった。私はそう思うのだった。




