■107 クロノアさんって…
ちなみにノースには専属のメイドが計3人いるよ。
私が案内したのは使っていない部屋だった。
使っていないけど一応は掃除はしていて綺麗ではある。けど私はさっきの重たいダンボール箱を改めて思い返してみて、何だか嫌な予感がした。
「じゃあ置いていくぞ。うん。デスクはあるんだな」
「うん。全然使ったないけどね」
「チェアの方は後で郵送するとして」
「えっ、いいの?」
「構わない」
何だろ。圧巻と言うか既にそれを通り越しているような気がする。
「ねえノース」
「なんだ」
「まさかとは思うけど。これがPCなのはなんとなくわかるよ。だけどこっちのおっきな三つのダンボールって……」
「モニターだ」
「だよね」
私はダンボール箱を開けていた。
封を開けると中にはいい感じの大きさのモニターが入っていた。
「あのねノース。私はあんまりネット使わないんだけど」
「そうか」
「お金の方……は大丈夫なんだけどね」
正直、ネットの方はしっかり完備してある。
と言うのもお父さん達がそうしたのだ。だからあんまり気にしなくてもいいんだけど、でもノースに悪いよ。
「ノース、コレって結構高いやつだよね」
「まあな」
「そんなの貰っちゃ悪いよ」
「まあ普通はそうだな。けど今回は別にいい」
「どうして?」
「余っていたからだ」
絶対含みあるじゃん。
私はそう思った。だけどこれ以上追求もしなかった。何だかこれ以上言葉を挟むのも悪い気がしたからだ。と言うことでおとなしく貰っておくことにする。
まあ言うまでもなくここからネットの方の料金は上がるんたけどね。うん。
あれからしばらく経った。
そんな時だった。玄関のインターホンが鳴る。
「誰かな?ちょっと出てくるね」
「ああ。まあ多分……」
ノースが何か言おうとしたが私は気にせず玄関先に向かう。
するとそこにいたのはさっきノースと一緒にいた女性だった。
綺麗な黒髪。若干だが目の色が赤みがかっている不思議な人だ。さらには整った顔立ちと背の高さからモデルみたいに見える。
「えっとー」
「失礼致します神藤様。ノース様の命を終え戻って参りました」
「は、はぁ?」
「失礼ですが、ノース様は今」
「えっと、ノースならリビングにいますけど?」
私は辿々しく説明する。
するとリビングからスッと現れたのはノースだった。
「いい加減“様”はやめろと言っただろ、ノア」
「お言葉ですが、メイドである私は高坂家に仕えているわけではなくノース様に仕えている身ですので、その様な主人に対する比例はできません」
「フィンなら平気でするぞ」
「あの者は態度がなっていないので」
「そう言う問題じゃ……なくもないか」
二人の口論が始まった。
取り残された私はぽつねんとしたまま独り言を発する。
「ノアさん?えっと、ホント誰?」
だけどそれに対する回答はまだくれないのでした。
で、とりあえず一通りのお話を終え取り敢えず家に上がってもらうことにした。
それから少し落ち着きが戻ってくると、ノースの方から説明をしてくれた。それにしてもさっきのこの人の目、少し赤みが強かった様な気がするけど、気のせいかな?
「ねえノース、この人って?」
「ああ。ウチのメイド長で、クロノアだ」
「クロノアと申します。神藤様、以後お見知りおきを」
「はい。よろしくお願いします。クロノアさん」
何だろ。スラスラ流れていっているけど、この人って何処か不思議な人な気がする。
さっきから表情があんまり変わらないし、目の色とかも偏見じゃないけど、適度に色が変わるのは何でだろ?
「あのクロノアさん」
「なんでしょうか?」
「失礼ですけど、さっきから目の色が若干変わってるのってなんでですか?怒ってるとかじゃないと思うんですけど、気になって」
「!?」
「あっ、別に特にないんでしたら気にしなくてもいいですから。あの、ごめんなさい」
私はバチッと空気が変わるのが肌に通じた。
静電気みたいなものだが、そんな感じで空気が変化する。重たくでもなく軽くでもない。閉塞感みたいな感じだ。
(もしかして空気読めないことしちゃった、よね?)
申し訳ない気分になる。
だけどそんな私にクロノアさんは小さく笑みを浮かべる。
「えっ!?」
声を出して私は目を丸くしていた。
「あ、あの、クロノアさん?」
「まさかここまで早く気づけるとは思いもよりませんでした」
「諦めろ、ノア。愛佳の反応速度は異常だ」
「そのようですね」
「えっ、酷くない!?そんな言い方ってないよ」
私は猛抗議する。
しかし各耳を持ってもらえない。だけどそんな私にクロノアさんは耳打ちする。
「私の目のことは今はまだ秘密です」
「秘密?」
「はい。そんなことより神藤様。一つ、私の頼みを聞いていただけないでしょうか?」
「えっ?」
首を傾げる私。
クロノアさんはそんな私にこうお願いする。
「ノース様の良き友人であり続けてはくれないでしょうか?」
「えっ?」
何を突然変なこと言ってるんだろ。私はそう思う。
「そんなの当たり前ですよ。それに私はそんな簡単に友達を捨てたりしませんよ。って、こんな言い方したら誤解されちゃうかも」
私はチラッとノースの方を見やるが如何やら聞こえていないらしい。まあ多分聞こえてないフリをしてるんだろうけどね。
「安心しました。ではよろしくお願いしますね。ノース様があんなに楽しそうな姿をされるのはこうしている時が一番な様ですので」
「はぁ?(私は普通に接してるだけなんだけどね)」
私はまた首を傾げる。
今日はちょっとしたことで首を傾げがちだった。
だけどまあいつもとちょっと違う感じで楽しいんだけどね。
「あの、じゃあ私も一ついいですか?」
「なんでしょう」
「私のこと、これからは愛佳って呼んでください」
「では愛佳様とお呼びさせていただくことにしますね」
「は、はい」
ちょっと引っかかるけど、ノースのあの感じを見る限り多分無駄なんだと察した。
と言うことでそんな感じで今日は流れていくのだった。




