■102 不思議な人(不思議って言ってる辺り不思議ではない的な)
この回は結構大事な物語に関わる話の一つです。
タッ、タッ、ターン。タタッ!
私は石造の階段を駆け上がる。
今日はちなみに一人だ。だから私はいつもなら適当にクエストを引き受けるか街の中をぷらぷらするかなんだけど、今日は街の中をぷらぷらしてみる。
正直、最初にこの〈ミヤビ〉の街に来て以来まーったく散策していなかった。だからこそ楽しみなのだ。
「よっと、ほっ!」
私は石造の階段を駆け上がると、そこそこ広い道に出た。
そこからは〈ミヤビ〉の街の様子が一望出来る。こうやって見ても日本建築が多くて昔の日本を思わせるような街づくりになっていた。
そして今私のいるエリアもまだアスファルトで整備されていないような砂地の道。その脇には雑踏とする建物や人の気配などはなく、小さな茶屋が一つぽつんと佇むぐらいだ。風情がある。
「映画村みたい」
まさにそんな感じだった。
閑散としている感じも雰囲気に合う。偏見かも知れないけど、私の知識にはこんなところしか残っていなかった。
とかまあ何とか言ってるけど、こんなところにやって来たのはちょっとした訳がある。と言っても簡単で、この街の様子を一眼見て見たいと思ったからだ。
〈リムルト〉の街並みもそうだけど街ごとの特色が色濃く出ていて面白いし、スノーやKatanaもそこを着眼点にしていた。二人の見ている景色と、私の感じる景色とでは違うかもだけど皆んなのことももっと知りたいと欲求意識が自然と湧き出てしまったのかも知れない。とか、そんなことに酔いしれる私って気持ち悪いよね。自分で言うのも何だけど。
「まあいいやそんなの。どうでもいいし」
ここは楽観的になることにした。
ちなっちのいいところを真似てしてみる。
そんな感じで気持ちをパッと切り替え、茶屋の方に向かおうとした時だ。
「なあなあアンタ、俺達とお茶しねえか?」
「ん?」
私の目の前でちょっとしたことがあった。
それは男のプレイヤーが三人。見る感じ〈ヒューマン〉と〈ドラゴニュート〉、〈ドワーフ〉って感じだ。
それから絡まれている女性は金色の髪と耳と尻尾を携えた〈セリアンスロゥプ〉だった。って、私はよくよく観察してみると、女性にはプレイヤーマークもNPC表示もされていなかったのた。
「なんであの人、なんにも出てないんだろ」
ただのバグだろうか?
それにしても不思議な人だ。男の人達に詰め寄られても一切動じない。て言うか鈍感なのだろうか?いやそんなことはない。ただ嫌がる素振りも見せないが迷惑だと言わんばかりの雰囲気を放出している。
「おいおいなんか言ったらどうなんだ!」
「そうだぜ。まあ断っても誰も助けちゃくれねえだろうがな」
「はぁー。貴方方は一体なにがしたいんですか?つまらないことに時間を食い潰すなど、愚か者がやる行為ですよ」
「「「な、なんだと!」」」
女性の放った一言に挑発されてしまった。
すると女性の腕を掴む男達。それを見過ごすことの出来ないでいた私は体が勝手に動きており、男達の前に飛び出していた。
「や、やめなよ!」
「あん?なんだ、お前」
「この人嫌がってるよ。それに、そんなことしちゃ駄目だよね?」
私は法的なことを乗り出して追求した。
しかし男達は聞く耳を持たず、そんな私に向けて剣を構えた。
「抜刀してる……街の中での戦闘は両者の合意を得た上でのPvPか、許可されたエリアでの素振りとかしかしちゃ駄目なんだよ」
「うるせえ!そんなの知るかよ!」
「どうせ通報しなかったらシステムは働かねえんだ」
「そうかもだけど……(確かレッドプレイヤーとか相手から戦闘を仕掛けて来た場合は例外……鞘に納刀した状態だったらまあ問題じゃないはずだけど……でもこれは正当防衛だよね?)」
私は深ーく考えた。
そうこうしている間に男達は私に向けて怒りの矛先を向けるかの如く剣を振るう。しかしそれを私はとっさに〈麒麟の星雫〉で受け止めた。
カキーン!!
鋼の刃に重くのしかかる同じ金属の刃。
体を屈めて何とか堪える私はそのまま剣を右側から回し、男をびびらせる。
「はぁっー!」
「ひいっ!」
男は強烈な一撃に怯えて腰を抜かした。
その様子を見ていた二人も私が二刀流に持ち替えたことで体を震え上がらせる。理由は定かではないが、今の動きでレベル差とかを悟ったのかもしれない。
「あれ?おーい、逃げるのー!逃げるんだったら、もう関わらないでよねー!」
「ひいいっ!こ、こっちから願い下げだ!」
「なにかな?私、なにか変なことでもしちゃったかな?」
首を傾げて考え込む。
兎にも角にも私は鞘に剣を納め、とりあえず事態の収拾を図った。
それがまあ何とか丸く収まってくれたのでよしとしよう。と言うよりもさっきの人は大丈夫だっただろうか?
「あの、大丈夫ですか?」
「はい。おかげさまで」
「そうですか。次からは気をつけてくださいね。それじゃあ私はこれで。さようなら」
そう言ってその場を去ろうとした私。
しかし私の足が前に出た途端、右腕を強烈な圧力が押し込んだ。
「えっ!?」
痛いとかじゃない。
そうじゃないけど、握り込まれていて動けなかった。見れば私の腕を掴むのはさっきの女性だ。何処にこんな力が書かれているのかわかんないけど、もの凄い力で今にも私の腕なんて折られてしまいそうに感じる。
「貴女、お名前は?」
「えっ?マナですけど……」
「マナですか。少し、私に付き合ってもらえますか?」
「えっ!?」
「こっちです」
「あっ、ちょっと!」
私は無理矢理に引っ張られるまま、〈セリアンスロゥプ〉の女性に何処かへと連れて行かれるのだった。
プレイヤーなのかNPCかもわからず、何処に行くのかも教えられぬまま私は力任せに引き寄せられるだけだった。




