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■100 スターライト・エンド

いよいよ100話目!

 土煙が巻き起こる。

 土砂によって生じたものだ。

 それを目隠しにして一旦後ろに後退した私達。しかしふつふつと感じる凶悪な気配はズキズキと私達を刺した。


「皆んな大丈夫!」


 私は叫ぶ。

 最初に返答してくれたのは後方支援に徹していたスノーとその援護に回るKatanaの二人だった。


「問題ない」

「大丈夫です」


 二人とも無事だった。

 土煙のせいで少し視界は悪いけど残りの二人と探す。するとタイガーは転がりながらこっちに崩れて来た。


「痛てて。拳一発でこれかよ」

「タイガー!」

「マナか。そっちはどうだ」

「大丈夫だよ。タイガーとちなっちは?」


 私は即座に聞き返す。

 前線で戦い続ける二人の方が心配だ。


「俺は見ての通りだ。服は破けてるけど怪我はないぜ!」

「そっか。ちなっちは!」


 私はちなっちの身を案じる。

 するとちなっちは私の目の前に飛んできた。いや落ちて来た。


「うわぁっ!」


 ちなっちは【受け身】で体勢を崩しそうになるも何とか抑え、そのまま私達のそばに駆け寄る。

 しかしちなっちの姿は土煙の中でもわかるぐらいにはボロボロだった。


「皆んな平気?」

「うん。てかちなっち、本気モードだよ!」

「それぐらいしなきゃ勝てないって相手ってことだって。状況は?」

「大丈夫そう。ちなっちは?」

「平気平気ーとは言えないかな?ちょっと足をやられた」


 と言ってちなっちは足を怪我していた。

 怪我の具合もちょっぴりリアルなのがまた恐怖心を煽る。しかしだからと言ってちなっちはめげてなんかいなかった。むしろ勝鬨(かちどき)を上げていた。


「こっからこっから。だよね、マナ!」

「うん。ここまでやったんだもん。負けたくないよ」

「当たり前だ。ポーションも飲んだ。万全だ」

「そうそう。ってことで、どうするよ。俺達のやったことは間違いじゃねえだろうがここまで暴走させたのは俺達だ。つうことはこれ以上の攻撃は……」

「乱戦ですね」


 Katanaの言いたいことはなんとなく察された。

 要はオーガを暴走させてしまったがためにここからはまともに真っ向から戦ってもやられるだけ。そんな未来しか見えないと言うことだ。

 つまりここからは十分な絡めてが必要になるけど、スノーはと言うと少し考えをまとめた様子だ。


「スノーなにか浮かんだ?」

「“なにか”と根拠のない言葉を吐くな。まあいい。敵は暴走し動きが読みづらい。ならそれを利用しない手はない」

「暴走を利用する?」

「冷静な思考ができないないと言うことは行動にある程度の制限がかかっているのと同じだ。つまりそこを叩いてやればいい」

「でもどうやって……あっ!?」


 その瞬間、私の頭の中でパチッ!と閃光が迸る。

 なんでだろ。この間のカタバミコブラーとの一戦が蘇って来た。


(なんでだろ。あの時の一撃……今ならできそうな気がする)


 スノーの作戦とは違う。

 だけだ最後には強烈な一撃を放つパワーがいるのも間違いない。私は何故かそう確信していた。それならあのとき“閃いた”力をここで呼び起こさなくてどうするの。皆んなボロボロになりながらでも戦ってるんだ。特にちなっちとタイガー。二人の分で、私も精一杯頑張らないと。

 そんな熱い気持ちで胸が一杯になった。


「ねえ皆んな。最後の一撃。トドメは私にやらせて!」

「マナがか?」

「うん。やってみたいことがあるんだ!」

「やってみたいこと……アレか?」

「あれスノー気づいてたの?」

「まあな。そもそもあの場にいたのは私とお前だけだ」

「だよね。ねえどうかな?」

「どうと言われてもな。まあ構わないが」

「やった!」


 私は両手を上に突き出して喜びを表現する。

 よーし頑張るぞ。息巻く私と何がなんやらさっぱりな取り残されたメンバーだった。

 ちなっち達は私とスノーの間をキョロキョロと見比べて首を傾げる。そして「なんの話?」とちなっちが口にしたところで、土煙が完全に上がった。


「よくも貴様らこの俺を!」

「皆んな行くよ!」

「「「「了解」」」」


 私は全員の顔を一瞥(いちべつ)し、オーガに視線を移す。

 するとちなっちとタイガーは飛び出した。

 オーガは痛みで苦しみ、判断力が鈍っている。そこに追撃の攻撃をたたみ込むのだ。だけど今回はいつもと違う。何故なら……


「ちょこまか動くな!」


 オーガは拳を繰り出し、足で蹴り上げる。

 しかしそれら全ては宙に空回りし、対象のちなっちとタイガーは腕と足の間や隙間を的確にくぐり抜けると背後から関節部に向けて強烈な一撃を浴びせた。

 防御不可能な部分を狙うのはかなり卑怯かもしれないけど、オーガはさらに動きが鈍る。


「そんな攻撃じゃ当たんないよ」

「そうだぜ。俺達を舐めんなよ」


 ちなっちとタイガーは的確に注意を晒し続ける。

 だがオーガも負けてはいない。

 痛みを堪えて体を捻った方向とは逆の方向に体を捻る。


「舐めるな!」

「おっと!」

「スノー、今だぜ!」

「わかっている」


 タイガーが叫ぶ。

 するとスノーは瞬時に《シャドウ・バインド》を放ちオーガの体を縛りつけた。


「ぐはっ!う、動かん!」


 黒い影に苛まれオーガは身動きが取れなくなる。

 完全に腕と足を肘や膝から拘束されて動けない。

 そこに飛びかかるように今度はKatanaの剣技が炸裂する。


「龍蒼寺流剣術壱ノ型(いちのかた)“飛沫雨”!」


 地面についた膝を足がかりに飛び込んだKatanaは堂々とした唐竹、つまり斬り下ろしを振り下ろす。

 さらにそこから流れるように次の型に繋がる。


伍ノ型(ごのかた)“白波”」


 今度は下から斬り上げた。

 痛々しい攻撃。Katanaっぽく例えるなら激流。まさにそんな言葉がふさわしいぐらい、手厚い流れるような連撃が無数に叩き込まれた。


「ぐはっ!ば、馬鹿なこの俺が」

「黙れ」


 そこにスノーの弓矢が炸裂する。

 眉間の骨を砕き言葉を遮ったのだ。なんて言おう。(むご)い。酷いを通り越して惨いのだ。

 だけどそれを何の気なしに普通に行うスノーもちょっと怖い。


「おいマナ。まだか」

「えっ、な、なに?」

「お前待ちだ。相手のHPは底をつきかけている。今こそやるんだろ、アレ(・・)を」

「う、うん!」


 私は前に出た。

 それに合わせてすかさずちなっち達は前線を引く。

 拘束されて身動き一つまともに取れない相手に繰り出すには流石に酷いけど、そんな卑怯な手を使わないと勝てないぐらい私達相手からは強すぎる。

 それはさっきの破壊力で知った。だから私も構わない。それがこのゲームの戦い方の一つ。マニュアル通りだから。


「行け、マナ」

「うん」


 私は〈麒麟の星雫〉を構えた。

 いつも通り構えるのではなく、少し変える。剣の平たい部分を肩に当てる。そのまま腰を少し落として力を蓄えると、以前とは比べ物にならない光が眩く剣の刀身に降り注がれた。

 エネルギーが充填される。

 そしてその時は唐突に訪れた。


「これでトドメだよ!」


 私はエネルギーを蓄えられた〈麒麟の星雫〉を振り下ろした。

 しかし直接当たるのではない。当てなくても攻撃は当たる。何故ならこのエネルギーは察しの通り“伸びる”からだ。そうこれが私の初めての魔法。初めての必殺技的なやつだ。


「《スターライト・エンド》!」


 眩く星の輝きを纏ったかのような剣がオーガを貫いた。

 振り下ろされた一撃は全てを無常の星明かりへと還る。まさにそれを体現したかのようにオーガの姿は塵へと消えた。まさに“星明かりの終わり”。“星光の終止符”には相応しかった。


「倒せた?」

「ああ。マナがやったんだ。だがまさかこれだけは威力とはな」


 スノーが感心すると同時に感嘆する。

 呆れてものも言えない顔だ。確かに私にも恐ろしかった。威力も範囲もそれからMP消費も馬鹿にならないぐらいだった。


「うわぁー、これじゃあまともに使えないよ。切り札って感じだよね」

「だな」


 スノーは呆気に取られながらも非常に冷静だった。

 かくして私達のオーガ戦は早々に決着がついてしまった。私のこの魔法、《スターライト・エンド》の破壊力の前には成す術なく消え失せてしまっていたのだった。

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