第1話 第5節 伝説の始まり
マルク市は小さな市だったが賑やかだった。
そこの真ん中に野球場があった。
人がそこそこ集まっていた。
昨日の女の子がこっちを見つけて近寄ってきた。
「いらっしゃい!よく来てくださいました」
「私の名前はヒミカ。天音ヒミカ。よろしくおねがいします!」
そうヒミカは名乗った。
「私は蒼龍レーヤ。よろしくね」
マウンドのほうをみると挑戦者が球を投げていた。
「100km/h!」
球速を測る機器―――スピードガンを持った人がそう言った。
「このようにマウンドからボールを投げて120km/hを上回ったらOK!賞品を差し上げます」
ヒミカはそう説明した。
次々と挑戦者が挑戦していったがみな100km/hあたりで止まっており達成した者は現れなかった。
次はレーヤの番だった。
野球は知ってはいたが硬式のボールに触れたのは初めてだった。ボールの感触がなんだかよかった。
レーヤは捕手にめがけてリラックスして左腕を思いっきり振って投げた。ボールはうねりを上げて少し外れたが捕手に届いた。
「ひゃ・・158km/h・・・?」
スピードガンを持った男が驚いて表示を見た。ヒミカをそれをみて驚いた。
「も、もう一度測ってみましょう。機械の故障かもしれません」
ヒミカがそう言った。
もう一球レーヤは投げた。またもボールは再びうねりを上げて少し外れるも捕手に届いた。
「159km/h・・・」
聴衆が集まってきて騒ぎ出してきた。そんなありえない。なにかの間違いではないかと。
「もう一度お願いできますか」
スピードガンを持った男がそう言った。
もう一球投げてみることにした。
投げてみるとボールは猛烈な勢いで進みその姿には聴衆にはまるで龍が突き進んでいるかに見えた。
「ひゃ・・160km/h!!!!????」
ヒミカが驚いた顔でこちらを見ていた。聴衆は大騒ぎだった。プロでも150km/hいけばいいほうなのに160km/h!? しかも左腕!?
「あの!!」
ヒミカがこう言った。
「お願いがあるんです!!」
こうして蒼龍レーヤの伝説が今、始まろうとしていた―――。