第1話 第3節 暇つぶしに石を投げる
翌朝、レーヤはあたりを散歩してみることにした。
すこし下ったところに大きな川があった。その流れは雄大であり荘厳さを兼ね備えていた。
「でもなにしよう・・・?」
お金はときたま村の手伝いをしたり、家の野菜を売ったり、魚を売ったりすることで稼げるらしいのでとくに毎日懸命に働く必要はないそうなのだ。
しかしあまりにやることがなにもないというのも何である。
そんなことを考えながら川辺を歩いていると足元に手に収まるサイズの石が転がっていた。なんの気なしに手にとってみた。
しばらくその石を眺めて、川に向かって投げてみた。あまり距離は出ずビヨ~ンと飛んでいってポチャンと音を立てて沈んだ。現世では投げるスポーツをやった経験はないのでこんなものだろう。ちょうど自分のいたあたりは平らな地面になっていたので投げやすかった。
もうひとつちょうどいい石を探して投げてみた。またそこそこの距離にビヨ~ンと飛んでいってポチャンと落ちた。
拾う。投げる。ポチャン。拾う。投げる。ポチャン。拾う。投げる。ポチャン。拾う。投げる。ポチャン。拾う。投げる。ポチャン。拾う。投げる。ポチャン。拾う。投げる。ポチャン―――。
繰り返しているとだんだん楽しくなっていった。ただ投げているだけだが投げ方を試行錯誤したりして工夫しだしていた。身体もいい感じにほぐれ、温まってきた。
それからというもの食事、買い出し、農作業、村の手伝いのほかはひたすら毎日石を投げ続けていた。
投げる。ポイッ。投げる。ポイッ。投げる。ポイッ。投げる。ポイッ。投げる。ポイッ。投げる。ポイッ。投げる。ポイッ。―――。
そしてだんだんと遠くに飛ばせるようになってきた。石の投げるときの音もビュンと鋭い音に変わっていった。
ひたすら投げる。ひたすら投げる。 ひたすら投げる。 ひたすら投げる。ひたすら投げる。ひたすら投げる。ひたすら投げる。 ひたすら投げる。 ひたすら投げる。―――。
そうしてついに川の向こうに石が到達するまでになっていた。レーヤは嬉しかった。さらに投げ続けた。フォームも試行錯誤の末、力感のないしなやかなフォームになっていった。
どんどん投げる。どんどん投げる。どんどん投げる。どんどん投げる。どんどん投げる―――。
いつまでやってても飽きなかった。さながら子供が初めてのおもちゃに目を輝かせて遊ぶようだった。遠くに飛ばせることが楽しかった。
そうして四季が流れひたすら石を投げる生活を送るうちに―――。
1000日が経った―――。