第1話 第2節 転生世界に飛ばされて
目が覚めるとそこは古ぼけた天井だった。木の材質のようだ。
ぼんやりとした頭で考え始めた。
たしかトラックかなにかに轢かれなかったっけ・・・?
だとしたら病院のはず。
体を起こして周りを見てみると小さな部屋だった。どうみても病院には見えない。
「目が覚めたかにゃ?」
なにやらベットの下の方から声がした。
ベットに飛び乗ってきたのはネコだった。
いやなんでネコが喋っているんだ。事故で頭を打っておかしくなったのだろうか・・・?
「君は死んだのにゃ」
ネコは私の顔を見てそう言った。
「死んだ・・・?」
「そうにゃ、そうして生まれ変わったのにゃ」
ネコはそう言った。
ネコはしっぽの先が曲がっていた。いわゆる尾曲ネコというやつだろうか。
「突然言われて理解できないのもわかるにゃ。でもこれはそういうものだと理解してほしいにゃ」
「僕の名前はテジテルにゃ。見ての通りネコにゃ」
ネコ、いやテジテルはそう言った。
「私はレーヤ・・・蒼龍レーヤと言います」
「よろしくにゃレーヤ」
「あの私は・・・つまり転生したということですか?」
転生―――つまり肉体が死を迎え新しい世界に生まれ変わったということである。本で読んだことはあった。
「そうにゃ。ここで新たな人生を送るのにゃ」
私は自分の身体を見てみることにした。左手の十字傷はそのままだったがトラックに轢かれたはずなのに怪我一つない。 部屋に鏡があったので覗いてみた。そうしてみたら驚いた。なんと若返っているではないか!レーヤの肌はピチピチになり顔もシュッとしていた。
「レーヤは今14歳の身体になっているにゃ」
14歳!そこからやり直せるのか! レーヤはテンションが上った。今までのダメだった人生をやりなおせる。それはとても期待が持てた。レーヤは笑顔がこぼれた。
レーヤは髪をポニーテールにまとめて、部屋から出てみた。
「わあ・・・!」
あたりは自然に溢れていた。木々が立ち並び大きな川が少し遠くの下の方で流れている。 生き直したとわかるとなんだかこの自然が豊かに輝いて見えてくる。
自分が今いた家は寝室と台所の二部屋しかない小さな木の家だった。まるでおもちゃの世界に出てくる愉快な家のようだった。
家からテジテルも出てきた。
感激していたレーヤだったがしばらくすると疑問が出てきた。
「それでテジテル!私はなにをすればいいの?」
「なにを、とはにゃ?」
「ほら、たとえば冒険ファンタジーなら魔王を倒しに行くとかさ!いろいろあるじゃない」
転生ものではお約束の展開だ。さながら世界を救う勇者のような感じだ。
「とくになにもないにゃ。普通に生きるだけにゃ」
レーヤは拍子抜けをした。てっきり何か重大な使命を持ってここに転生したのかと思ってたからだ。
「人生はただ生きることに意味があるのにゃ。レーヤも好きなことを思う存分するのにゃ」
この異世界はどうやら平和であるらしい。モンスターとかも特に出ては来なかった。 家の隣には畑があってどうやら自給自足ができるようになっている。
テジテルの話によれば近くに小さな村があるそうだ。そこで必要なものは買い出しできるらしい。便利そうだ。
その日は台所にあった食材で適当にご飯を作りただグダグダと寝て、スローライフを満喫していた。




