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第1話 第1節 人生終了

<私はからっぽだ>

 蒼龍(そうりゅう)レーヤ、女、30歳。  

 思い返せば何もない人生だった。

 小学生の低学年のときは普通に友達と遊んでいたけれど10歳ぐらいの頃からかなにか嫌になって遊ばなくなった。

 幼馴染の親友とはある日突然別れを告げられた。

 中学の頃はバスケ部に入ったけれど2年になったとき後輩とうまく行かなくなり、また顧問ともうまくいかずスターティングメンバーから外され、部活を高2で辞めることになった。


<何がだめだったんだろう・・・>

 私はため息を付き、テレビで特に贔屓のチームではない野球の試合を見ながらビールを飲んだ。前にはパソコンがなんの気なしに開かれていて画面を表示していた。レーヤの髪はボサボサであり、ダルダルの服を着ていた。



 高校は第一志望の学校に落ちた。

 滑り止めで入った学校は一言でいうと私と合わなかった。

 そこは飛び抜けて頭がいいわけでもなく、かといって面白いバカにもなりきれない中途半端な人たちの集まりだった。

 あまりにつまらなく適当に対応してたら2年生の頃からかいじめられるようになった。

 クラス総出でのいじめだった。

 徹底的に悪口を言われた。

 担任の教師も特に何もしてくれなかった。

 それでもなんとか意地で通い高校は卒業することができた。

 しかしその無理をした代償は大きかった。

 精神を病んでしまった。

 大学に現役で入ることができず浪人することになったが勉強どころではなかった。

 全然頭に入ってこないのだ。勉強する意欲も0に近かった。生きていくだけで精一杯だった。

 大学には入ったもののその頃には人とどう接していいのかわからなくなっていた。

 顔が長年のうつ病でおかしくなっており見るものを嫌がらせた。

 大学1年は通うことがまったくできなかった。

 大学2年目は半年間はなんとかがんばって通うことができたものの心が折れてしまった。そしていろいろあって結局大学は除籍処分となった。


「ふぅ・・・」

レーヤはビールを一口飲んだ。特にビールは好きというわけではなかった。苦い味が口の中に広がった。野球中継の試合は打者がボテボテの当たりを打ったところだった。 


 大学をやめたあとは実質ニート状態だった。精神面での限界というのもあるが、なにもできることがなかったのだ。手に職がなかった。ひたすらインターネットを見て時間を過ごした。


 それでも20代後半からはなんとか社会復帰を図ろうとボランティアからはじめた。 そして公務員試験の勉強や行政書士の資格を取ろうともした。しかしうまくいかなかった。参考書の山が部屋に積まれていた。 

 両親は一縷の望みをレーヤにかけていたがそれもレーヤにとっては負担だった。

 そうして30歳を迎えた―――。


 バサリと後ろのカレンダーが落ちた。もう何ヶ月もめくっていないカレンダーだ。どうでもよかった。


子供の頃は30歳なんてすごい大人だと思っていた。しかしいざ自分がなってみると見た目はそれなにりなったが中身が全然成長してない子供のままだった。

 まして社会経験のない私だ。それは成長するわけはない。

 アルバイトをしてみたこともあった。派遣業務の仕事だったがしかし一日目で他の人に代わってくれと言われてしまった。ショックだった。

<私はなにもできないんだ>


 今までの人生を振り返っていたとき、そういえば晩御飯を食べてないことに気づいた。億劫だったがしょうがない。近くのコンビニエンスストアに買いに行くことにした。

 テレビのチャンネルを左手で持ちテレビを消した。左手には昔付いた十字の傷跡が残っていた。

 冬の夜の外は本格的に寒くなり始めており、身体をきゅううと締め付けた。

 コンビニで適当に弁当を選び、帰り道にはもうこう思い始めていた。

<もう・・・なんかどうでもいいや・・・>


 信号が変わりトボトボと歩き始めていた。たしかに青信号だった。

 しかしその時―――


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