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侵略を幼馴染と  作者: 小説家になろう
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映画の僕らは

ある夏の日だった。

僕は幼馴染の(こう)に連れられて小さなおもちゃ屋にいた。

少し水分を腐らせた匂いがするが夏を思わせない涼しさ、空気感が流れている。

体育館の地下のような特殊な世界を鋼は知っていた。

鋼は僕の手を引っ張りながら、店の中で一番大きなフィギアの前に立った。

(つかさ)。大人になったらこいつを二人で買おう。約束な」

店長さんは昔凄く流行った怪獣のフィギアだと教えてくれた。

僕はそれほど興味がなかった

けど、鋼のあんな目を初めて見たんだ。

僕は思わず「うん」と答えていた。

怪獣の赤い目は鋼に(まじな)いでもかけていたんじゃないかと今でも思う。

だって魅せられた鋼の目も同じ赤だったんだ。



また夏のある一日だった。

僕は鋼ともう一人、功美(こうみ)と海に来ていた。

夏だというのに誰もいない砂浜は哀愁を漂わせていた。

「あれ、何だろう」

功美は指差しで僕たちの視線を集めさせた。

海の上で何か、光っている。

それは波に乗って浜辺に向かっていた。

一斉に駆け出した。

合図なんてなかったけどやっぱり十年も一緒に過ごすと思考も同じになるのかな。

僕は楽しくなり、海に入ってしまった。

お母さんに怒られるとかお構いなしに光に向かっていた。

もちろん、鋼も功美も海に入った。

ギリギリ足が付くとこまで浸かって光を待った。

光は功美の所に来た。

正体はまさかの生き物だった。

生きてはいるが弱り果てていて、体から放たれた光も弱々しく点滅していた。

「まだ生きてる。おばあちゃんに診せに行こう」

ここで言うおばあちゃんは祖母という意味ではなく、この村唯一の獣医のことだ。

あの後急いで動物病院に行ったが泣いて出てきた功美を見て僕も泣いたんだった。

あの日から功美は引き籠ってしまった。

もう十年も顔を見てない。



そして、夏の最後の日。

僕は新しくできたスーパーマーケットでヒーローショウを観ていた。

あまり面白くなかったけど、家にいるよりはましだった。

僕は敵の方を応援していた。

ヒーローは五人なのに、敵はたった一人で頑張っている。

必殺技だって早く出して楽にしてあげればいいのに、痛めつけてから出すなんてなんて悪趣味なんだ。

子供の時の僕は本気でこんなことを思っていた。

そうだ、僕はこういう子供だった。

鋼と功美と遊ばなかったら何の価値もない石ころになる。

自分の気持ち悪い部分が皮膚から膿出て気色の悪い生物に成り下がる。

僕は3Dメガネを外す。

まずは鋼のもとに向かうことを決める。

久しぶりの日差しは歓迎はしてくれないが僕は無理やり外の世界に踏み出した。

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