決まってるだろう 9
読み直してません。ごめんなさい。
でもこのお話終わらせました。次は異世界に行かないを書ききますので。よろしくお願いします。
完結詐欺をしてしまった……。
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「大将、ラーメン頼むよ」
「へい、なにラーメンでしょうか?」
「いや、なんでもいいんだ。メンマのほうが好きなくらいで」
ラーメン屋の主は困る。
「酒好きはしめにラーメンを食いにる来るものなに、この人は小食だからな。困った客ですぜ。そんな図体してんのに小食だなんて、チビの子供に大きくなるために食えなんて言えなくなりますぜ」
異様な男は笑って、
「俺、ガキの頃大食いだったんだぜ」
と、笑って言って
「たぶん生きる活力をなくした人間は小食になるな。食う気しないのさ。酒も原因だがよ、生きる気満々のやつはちゃんと三食食って、明日を頑張ろうってなるのさ」
ラーメン屋の主はそんなことも聞かないで、
「そんなあなたに醤油ラーメンです。チャーシューたっぷりでさ」
ラーメンを出す。
そして、ラーメン屋の主は言う。
「そういや、子供はいないんですね、今日は。あ、子供といっちゃいけねえ仲なのかな」
「おい勘違いするな。ガキはガキとしか思ってねえぞ」
異様うな男は目を眇める。
なぜそんなに異様な目をするのか、と問う場合、彼が異様な人だからと言うのが正しい。
人は見た目によらない。でも出てしまうのである。
特に目に関しては。
異様な男はラーメンをすすりながら、
「ところでよう」
と話しを傾けた。
「なんです。旦那」
「おまえ、てっぽうやさん、みたいだな」
異様な男はラーメンをすすりながら言う。
「てっぽうや?」
「あたりまえだろう。あの与力が鉄砲買ってたのは、間違いなくあんただ。ここからだと、よくてっぽう撃ってるさまが見えるだろ」
ラーメンやの主は黙り込む。
「しかもてっぽうって弾のほうが高いとかきいたしな。あんな雑魚が社会に反発して、生き残るのてっぽうのおかげなんだと思うよ」
ラーメン屋の主は鼻をこすって、
「そんなもんどうやって入手するんですかい。この国は鉄砲に関して厳しい」
異様な男はラーメンを完食し、
「うーん、胃が荒れてるからだと思うが、炭水化物をあまり食わない。だが、いけたな」
「そら、小盛にしやしたんで」
「あっそ」
そして、異様な男は汁を飲みながら、熱燗を飲み干して、
「熱燗で頼める露店なんて、そうはないんだ。それは知ってるんだ。おでん屋ぐらいだと思ってた」
「まあ、適当に湯煎に入れてるんで、酒のことはてんでダメですけど。よろこんでくれるならうれしいです。本当に旦那は、なんか嫌いになれねえ客なんだよな」
ラーメン屋の主は拳銃を出しながら頭を掻く。
「なんでだろ、ダメな奴って俺嫌いなんですよ。でも旦那は死んでほしくなかったな」
「人間はどうせ死ぬんだ」
異様な男は刀を抜き、ラーメン屋の主の喉元を刺した。
「馬鹿だな。それ、見せつけながら頭掻くやつがいるか」
人を殺す。
もう異様な男には慣れていたのだろうか。
しかし、金をまき上げた。おそらく、懐にある金全てを。
異様な男は店を洗い出し、そこに拳銃が数えきれないほどあることを確認し、
「人間って不思議だよな。あんたも、俺を生かしちまった。ダメで殺すばかしの俺を」
異様な男は拳銃を見つめて、
「どういう経路かは知らねえが。俺の仕事じゃないしな」
「でも、こいつ。なんで俺を嫌いにならなかったんだろう。人を殺しすぎて、わからねえな」
異様な男はそんなことを呟いて、その露店から去る。
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「奴は立派に働いています。保険や年金で暮らせるような癖して」
「だろうな」
異様な男はしいたけを食べながら言う。
その食事場は、なんの看板もない牛飯屋の、高い釜飯の、それで酒は頼んでいなかった。
「あの人は立派な人だからな。まあこれからも恨まれるだろうが、それが弱者の為になるんならいいんじゃねえの」
「弱者ってなんです?」
「知らねえさ。弱いやつはどう生まれようと弱いんだ」
笠をかぶった和装の、不気味な男はそれを聞き、
「旦那、これからも贔屓にさせてもらいます。今回は成功報酬は出せませんが、仕事を持ってきますよ」
異様な男は笑い、
可憐な少女が笑う。
「兄ちゃん、あっというまに金つかったからな。案の定だけど、やっぱ酒飲みってバカしかいないな」
「馬鹿言うな。俺ほど賢いやつはいねえ」
「あっそ。おいらには兄ちゃんが奇跡の人に見えるぜ」
可憐の少女は笑い、釜飯を食べる。
不気味な男は「あと拳銃のことですが」と話題を変え、
「ありゃ、うちらじゃどうもいきませんな。あってはいけないもの、なんて扱わないんで」
異様な男はため息を吐いて、「ありゃ、あってはいけないよ」とうなずく。
不気味な男は、笠のうちで笑ったのだろう。吹き出すような声を発した後、
「旦那、なんで鉄砲があっちゃいけないんです?」
異様な男はしいたけを食べ終えると、
「この世界は剣が、おこがましいまでに強調してるからな。きのこの癖に主張の強い椎茸みたいに。鉄砲なんてあったら、剣がなくなるさ。釜飯の中で自己主張する椎茸なんていらないみたいなのは俺は嫌だぜ。はは、椎茸好きじゃないおれがいうのもなんだがな」
異様な男は笑い、釜飯にはしが走る。
「ああ、こんな飯すら食切れなさそうな俺。生きる活力ねえな」
不気味な男は席を立ち、「好きなだけ酒が飲めるような仕事、持ってきますよ」
「あっそう」
異様な男は釜飯を食らいながら「煙草と火をくんねえか」
手をわきわきとさせながら言う。
「ラキストってエグみがない、さわやかな感じだから嫌いだが、煙草なんだから好きだぜ。椎茸以上にな」
不気味な男は煙草とライターを置いて
「旦那は本当に馬鹿だな」と言って去った。
釜飯に向いていた異様な男は煙草を吸い始め、
「ここ禁煙だぜ」
可憐な少女は言った。
「まもることたねえさ。こんな優しい世界で」
「兄ちゃんがそれを言うか」
「決まってるだろう」
異様な男は笑いながら、
「好き勝手しないと生きづらくなるぞ」
可憐な少女はにひひ、と笑い釜飯を食べるながら、
「兄ちゃんも自己主張強いよな。椎茸以上にな」
異様な男は心底うまそうに煙草を吸い込んで、緑茶を釜飯に流し込み、それを苦々しい顔で飲み込んみはじめた。
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異様な男が煙草を吸いながら、麗しい女性を手枷、首綱とつないで歩いていた。
そして卜者につかまる。
「あなたも煙草を吸うのですね」
「ああん、だからなんだよ」
「私も吸うんです」
そしてロングピースを出して吸い始める妖艶な占い師の女。
「だからなんだよ」
異様な男は訝しむ。
「あなたとご同輩、のよしみ、みたいな……」
妖艶な女性は焦り始める。
「で、占いするんだろう。金は払わないけど、どういうもんだ」
異様な男が話し始めたかと思うと、麗しい女性がはしゃぎ始めた。
「主人様、わっちはこのアンクレットがいいでありんす」
「なんだ、アンクレットとは?」
「足枷でありんすよ!」
露店に並んでいた商品を見ながら麗しい女性が言う。
「お前、これ以上枷をふやしてどういうつもりだ?」
麗しき女性が笑って、「主人様もつけるでありんすよ!」言った。
「俺に枷つけられてもな、まあこれ二つでいくらだ」
「一万五千円です」
妖艶な女性が言う。
すると麗しき女性が大爆笑の「これはヘンプ。紐でありんす。そんなに高いわけないでありんす」と言って、
「これにはパワーストーンがつけられています。なんでも永遠の愛を誓えるという」
異様な男は黙り込み、そして恥ずかしげもなく言う。「パワーストーンってなんだ?」
「わっちも知らないでありんす」
クフっと笑いながら言うのである。
そして異様な男笑う。
「どういう意味なんだい?」
露店の机に手を出し、体重を乗せて、妖艶な女性に尋ねる。
「この紐についてる石に力があるんですよ」
妖艶な女性は苦笑いをして、
「占いは……しませんか?」
「はあ」
異様な男は刀を肩に掲げる。
「あなたは実は優しい人です」
妖艶な女性は恐れおののきなら言う。刀を見て、それでもしゃべる。
「ざんねんだったな!!!!」
刀を振り、妖艶な女性を斬る。即死であった。
「俺はちっとも優しくねえぞ」
そんな異様な男に、麗しい女性が笑って、
「これつけるでありんす。これ」
「なんだよ、俺に枷つけろっていうのか」
「紐でありんすよ。紐」
「ほかにも金みたいなやつもあるだろ。俺はそっちがいいな」
「この紐に石がついてるのががいいでありんす。つけてみて」
異様な男はしぶしぶなららその紐を足に巻いて結んだ。
「これでいいか」
すると麗しい女性も同じものを同じようにつけて、
「これでいいでありんす!」
と綺麗な笑みを見せる。
「枷なんて、なんもごりやくねえだろ」
「別になくてもいいんでありんすよ」
「よくわかれねえが、まあいいか」
そして、異様な男と麗しい女性は去っていく。
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最後まで読んでくれた方、ありがとうございます。『決まってるだろう』 了です。