リーダー・トムさん
喧嘩をしたときは男性から先に謝ったほうがいいと言われるのは、男と女の記憶方法に差があるからであり、男は「情報」をもとに記憶をして、女は「出来事」をもとに記憶するそうです。
そのため、女性のほうが、ぺちゃぺちゃしゃべり、いつになっても仲直りをしてくれません。だから、男性から謝った方がいいと言われているのです。(主に女性が言う)
もちろん個人差はあります。「出来事」で記憶する男性もいれば、「その場で話したキーワード」くらいしか覚えれない女性だっています。
僕はどちらでしょうか。まだまだしゃべり足りないのですが、はやく始めないといけません。
えっ?「出来事」で記憶する方だって!?またまたぁ。僕はこれでもプライドがあるだけで、ぺちゃくちゃぺちゃくちゃしゃべりませんよ。いつも影にひそんで暮らしています。いったいどこらへんがそう思うのですか?
トラップハンター始まるぞえ!
「ふーん、それでいま怒っているんだ~」
トムさんがやや他人事のように話す。
俺とシーアは絶賛喧嘩中であり、あれから一切口を開かなくなっていた。
「シーアは何かあったら家に行けばいいだろう。でもさ、俺たちは家がないからさあ。たとえお金が無くなって、着るものが汚くなってもさぁ、お世話してくれる人いないわけじゃん」
(た・し・か・に・!)
そのこと、何も考えていなかった。
まずは自分たちの生活を整えていかないと、このままでは飢え死にか不潔による病気などが起こしてしまうかもしれない。
誰かの家にお世話になってもらうとかできないのか考えてみた。
しかし、頭の中で
(「え~~~、いやだ~~~。」)
というシーアの声が横切り、諦めることにした。
あと、もっとむかむかしてきた。
「とりあえずさっ、まずは寝床を確保しておこう。あとは食材。服は…………誰か貸してくれないかなー」
「いくら女しかいない国だっていっても、同じ人間だから体系だってさまざまあるはず。俺にも着れる服は見つかるはずですよね!」
「いや、海、そんな簡単に女性が服をあげると思っているのかよ。女は一度買ったものはため込む習性がある。俺の女房がそうだった」
「じゃあ、どうすれば……」
「やっぱりお金を使ってオーダーメイドしてもらうしかないだろうね。まあ、その金がどこから手にいれることができるのかは別として」
「そうだ!この国を襲ってくる怪物って食べられるんですよね!?だったらこの『部隊』という特権を使って、狩った獲物をお肉に加工して売るのはどうでしょうか?」
「そうだな。確かにそれは確実性があるなぁ。しかしよっ、問題はどうやってその獲物を狩るかだ……」
「うっ……」
俺とトムさんは悩んでいた。なかなかいいアイデアがうかばなかった。
罠を仕掛ける、というとこまではよかったのだけれども、この5人(実質、俺とトムさんの2人だが……)でどうやってその罠を作るのだろうか。
地面に這って動く「ダウン」は平均して体長2メートルほどはある。人より大きい。そんな奴が3~5匹も一斉に襲い掛かってくる。それをすべて仕留めるだなんて無謀に決まっていた。
空を飛ぶ「スート」にいたってはなおさらである。いいお肉が手に入れることができると聞くが、あれをどうやって打ち抜けばいいのだろうか。第六部隊が弓矢を5本くらい射ってやっと一匹である。
どうすればいいのかわからなかった。宿舎のおばさんが出してくれた朝ごはんのスープはもう冷めていた。
「でも、やらないと評価はそのままだしなぁ……。帰れないのは嫌だからなぁ……」
肩を落とすトムさんを見て俺は、
(そんな提出日ギリギリのときのやる気がない俺みたいなこと言わないでくださいよ!)と思っていた。
「やるだけやってみるかー」
「何をっすか?」
「落とし穴」
「へぇ…………え?」
理解するのに時間がかかった。
「やっぱり一番手っ取り早いのは落とし穴だよ。基本中の基本」
(それはドッキリ企画かなにかですかねぇ……)
「大きな穴をあけてさ、中に獲物を落とせば、あとはこっちの優勢じゃんねぇ」
「そうすかねぇ……」
前回は石を投げたのに致命傷とまではいかなかった。第六部隊が持っているあのやじりのようなものがはり付けている矢がいい役目を果たしていた。やっぱ鋭利なものがいいのだろうか。
「そうと決まればさっそくやろう!こっちだって早く元の場所に帰りたいからな!」
そう張り切って、トムさんが立ち上がった。
ちょうどシーアが家から帰ってきた。新しい服に着替えに行っていたらしい。
(シーア、お母さんと仲直りできたのかな……。っじゃなくて!今は喧嘩中だ喧嘩中!)
俺はシーアがいる方向とは逆の方向に向いて座り直した。
なんだか自分はシーアに対して怒っているというより、怒ったふりをしているような気がした。トムさんとけっこうおしゃべりしていた時間が長かったため、とっくに冷静になったのだった。
「ん……うう……」
なんだか居心地が悪い。
(さっさと謝ればすむ話なのに、どうしてそこで向きになっているんだ!俺!)
俺は固まってしまった。まるでだるまさんがころんだをしているみたいに。
「フフっ」
近くにいたマアカが笑った。
「シーアさんにしては長引きますね~。いつものシーアさんなら、数時間で仲直りするのに……」
「んなっ!」
シーアの声がした。結構近くにいたことに俺はびっくりした。
「いやー珍しいことがあるんですね~」
そう言いながらマアカは俺の耳元に口を近づけてひそひそと、
「シーアさんをよろしくお願いいたします」
と言った。
「ちょ、マアカちゃん!そうやってコソコソ話さないで!」
「あら~、シーアさんっ。それは海君に対する嫉妬ですか~?」
「っんな!!!!!」
シーアが結構大声で喋ったため俺はビビった。
「んな、んな、なこと、んなことないでしょーーーー!!!」
(うるさいよ…。)
俺がそんなことを思っていると、
「海君もほら、肩がびくびく震えてますよ」
「いや、これは……!」
後ろを振り返ると、以外と近くにシーアがいたのでびっくりした。
「うあぁ……」
「ああっ……」
二人は赤面してそっぽを向いた。
「フフフっ。まるで初々しいカップルみたいですね」
「ちょっ!」「いやっ!」
二人はそろってマアカの方を見る。そして目が合って……。これで仲直りしたというのだろうか。
「ふんっ」
といってシーアは机にあった冷めたスープを飲み干し始めた。スプーンを使ってニンジンをすくって食べた。
(そういえば、そのスープ俺のだけれどもなぁ)
あっという間に、海の食べかけのスープはすべて無くなった。シーアが口に付けたスプーンは、海が使っていたものだったのだが、言わないほうが身のためだと思い、黙っていた。
シーアが玄関の方へ歩き始めると、マアカが寄り添って、
「さっきのスープ、海君の食べかけでしたのよ。あと、スプーンも……」
とこっそりと教えていた。
シーアが突然ガクッと崩れた。
(ああ、マアカさんっ。余計なことを)
マアカは高笑いして去っていった。
(あの人は一体なにを考えているのやら……)
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「ここに穴を掘ってなぁ。3メートルくらい掘ればいいだろう」
「3メートルってここからここまでをですか!?」
「ああ、だいたいこのくらいの幅で」
(えええ……)
俺たちに悲鳴が上がった理由は先ほどのことだった――――――
「俺考えたんだよ」
トムさんが目をキラキラしている。
「突然どうされたのですか」
マアカが尋ねると。
「ダウンはな、ほぼ真っ直ぐにしか進めないんだよ!そして、いままでのダウンはほとんどあの道を通っている」
「はあ」
「だから、あの道にずら~っと落とし穴を作ればいいじゃないかって!」
ニコニコしているトムさん。
「ほぉ」
「それで、どうやってその落とし穴を作るのですか?」
「そりゃまあ……みんなで頑張る、とか?」
トムさんがこんな安直な考えをするなんて思いもよらなかった。
それでも何か動かないと始まらない気がしてきた。
――――――「だけどこりゃ、大変すぎるっしょ」
さすがに掘る量が多い。これをたった5人で掘るというのだろうか。
トムさんはもくもくと掘っていた。
いつの間にか、かえでちゃんの服装が変わっていたことに気づいた。俺はかえでちゃんのそばに行った。近くにはシーアもいた。
「かえでちゃんの服どうしたの?」
「ああ、それは私がくれたの。替えの服がなくて可哀想だったから」
シーアが言った。
「俺の分はないの!」
「あるわけないでしょ!あんたの分なんて!どうせ汚くなるんだから、今の服でいいでしょ」
「もーう」
そう言って、俺は作業に戻った。
先ほどの会話が喧嘩以来のまともな会話だったので、ちゃんと話せて内心うれしかった。
「なに、ニヤニヤしているんですか。」
「うわあ、マアカさん!」
マアカが俺の顔を覗き込んでいた。しかしすぐに、後ろを振り向いた。
「さ、頑張ってくださいね。私、冷たいお水を用意しますから。シーアさんも!そんなにニヤニヤしてないの!かえでちゃんから離れて作業してください!」
「うえっへっへ~。はーい♪」
マアカがいると助かる。シーアとかえでちゃんが働いてくれるのか心配だったが、これなら大丈夫そうだった。
「よし、早く元の世界に帰るためにがんばるぞー!!!」
そう、この時は俺にまだ元気があった。しかし午後になってからは一変した。
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「はぁぁぁぁ……」
深いため息。
「さすがにこの穴を掘るのは大変そうですね」
マアカが言う。
「だいたい、ここって掘っていいの~?」
シーアが尋ねた。
奥の方で作業していたトムさんが「え゛っ。」と変な声をだした。
「あぁ、大丈夫ですよ。この場所はとくに私有地ではありませんので」
「はあぁぁぁ。」
胸をなでおろすトムさん。
「でも、ほんとにこれ終わるの?」
俺の腕の動きが止まる。
「あと何年かかるのかな~……」
穴を掘るのに使っていたシャベルを支えにしながらシーアは頬杖をついていた。
「物騒なこと言わないでくれ!俺はそんなに長くこの世界にいたくないぞ!」
「えーそうなのー」
「ああ。元の世界の皆が心配してくれているのかもしれないからね!」
「あんたをー?」
「ああ、そうだよ!俺を心配してくれる人はたくさんいるんだよ!」
「そうなんだ……」
シーアがすねたような声をだした。
「それにしても、暑いですね~。」
マアカは腕で、額の汗をぬぐった。
かえでちゃんは木陰で休んでる。熱中症にならなければいいのだが。
トムさんは黙々と穴を掘り進んでいる。それでも全体的に見て、掘ったところはほんのわずかである。
「誰か人手がないかなー!」
と、叫んでみても何も起きなかった。
「「「はあ…」」」
俺とシーアとマアカの三人がため息をした。
そのとき、
「なんか面白そうなのやっているニャー♪」
という声がした。
崖の上に誰かいる。
(?ネコ……ミミ?)
「やっとトラップ開始かよ。タイトル詐欺じゃねーの」
って感じた方いらっしゃると思います。でも実はもう既にトラップはありました。
何かというと、元の世界からこのサーリ王国に行くのは誰でもできるが、戻るのは評価が高い部隊じゃないといけないということです。
注意事項は小さく書かれていることが多いです。シーアちゃんはせっかちなのでちゃんと読まなかったのでしょう。
「もう、さっそく引っかかるなんて……シーアさんはドジっ子ですね。」byマアカちゃん




