ミケの悩み
枕元の整理整頓をしたら、風水によると運気がパワーアップするらしい。昨日の夜行ったが、運気上がっただろうか。もし上がったなら、成績アップとかモテモテになって彼女を作るとか、あとお金いっぱい入ってくるとかあるのかなぁ~!
(捕らぬ狸の皮算用)
ん?なんか言った?
まあいいっか。
トラップハンター始まるにゃん♪
住宅街の南側に噴水があるきれいな公園がある。シイアたちが海を連れて来たところである。
子供たちは元気に駆け回り、中央にある噴水の水がちょうどいいくらいの気温にしてくれている。
そんな公園の隅にベンチがある。
木でできたベンチは地元の住民が寄付したお金で作られたものだ。
木陰の中にあるため、暑い日でも快適に過ごすことができる。
ここ近くの住民のママたちのお気に入りの場所である。
子供が遊び、ママたちはベンチに座っておしゃべり、
そんな風景がよくみられる。
今日も熱中症に気をつけなくてはならない日。快晴である。子供たちが数人、噴水を囲ってかけっこをしている。近くにはその子のママさんがいる。しかし、いつもとは違うところがある。ベンチに座っているのはママさんではなく、しっぽがあり、耳が頭の上から生え、全身毛で覆われている、顔の骨格は人間のようだが、一瞬見たら、まるで猫が二足歩行しているかのように見えてしまう。服は着ているのに猫に見えてしまうのは「第四部隊」だけである。そして、ベンチに座っているのは「ミケ」であった。ここらへんの地域に来る「第四部隊」はミケくらいしかいない。
けれど、いつものように、「ニャーニャー」と騒ぐ様子は見られない。ましてや、すごく落ち込んでいるようにしか見えない。ため息もついている。
今の「ミケ」は「ミケ」らしくなかった。
ほのかな風が葉っぱを揺らし、音を奏でる。
木陰は徐々に動いている。
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ミケは小さいときから、自分がどうして人間と姿が違うのか不思議でしょうがなかった。しかし、自分の姉妹が何の隔たりもなく、普通に人間と会話しているため、自分は人間と仲間であると思っていた。
第四部隊は昔から大工や土木関係の仕事を受け継いでいる。ひと昔までは別の家系がやっていたそうだが、いまはこの「猫人間(獣)」が行っている。第四部隊はそのころからできたらしい。
代々からの土木関係のしごと、みんなは普通に受け継ぐつもりであるそうだ。しかし、ミケはそんなことには興味を一切示さなかった。ただただ、「つまらないから」という理由。「めんどくさい」「疲れるから」もある。どうしてこんなに安直なのかはミケ自身分かっていないのだが、人間とはそんなものとして捉えることにしている。
しかし、伝統であるためなのか、8人(匹?)もいるのにミケは受け継がなくてはいけないと言われた。というのも、第四部隊は最近、特定の企業と手を組むようになったのだ。企業にしかれ、国を守る部隊にしかれ、資金というものは大事なものであり、無くてはならないものである。そこでタッグを組めばお互いに支え合うのではないのかとのことだった。設計や総務関係の仕事は手を組んだ企業が行い、第四部隊は指令されたとおりに作業するとのことだった。この内容を受けて、ミケはますます受け継ぐのを嫌いになり、大工の勉強は一切やらなくなった。
しびれをきらしたのは一番姉の「ヒケ」だった。伝統を引き継ぐ大切さを感じており、それに対するミケの態度は嫌気がさす。
「なんでですニャ!なんで大工になりたがらないですニャ!」
余分なことであるが、このときの第四部隊は、ヒケ姉さんでさえ、まだ語尾に「ニャ」をつけていた。
「嫌ニャ!絶対、大工なんかなるもんかニャ~!!!」
ミケは素早い脚で逃げて行った。
自分は自分が好きなことをしたい。
それを胸に誓うミケであった。
(お昼ごはんを食べておけばよかったのにニャ…。)
やや日が傾いているころ。しかしカンカン照りの中は暑くてしょうがない。しかも獣の体質をもっているので、汗がでない。手のひらくらいしか汗がでない。そう、体温調節ができないのだ。いつもなら姉さんが言ってくれるので、水分補給はバッチリなのだが、今は水分補給ができない。というか水がない。
今から道のわきにある家に入って、「お水を恵んでくれないでしょうかニャ。」と言えば良いのだろうか。それはちょっとどうかと思う。
よろよろと歩いていると、目の前にあふれる水があった。
それは噴水であった。
「ニュア!?」
それに気づいたミケは一目散にその噴水へと走り出した。子供が見ていたってお構いなし。いいから水が欲しかった。水、水、水。
「お~……おねえちゃん何してるのお。」
子供がミケをガン見している。
「み、水を飲んでいるんだよお…ニャ…。」
「おおお……。おねえちゃん、そのお水まずいよ。」
「ニャ!?…えっ、えっ!?」
「お母さんが言ってた。このお水は飲んだらだめだよって。」
「………いいお母さんだね…。ニャ…。」
「うん!おねえちゃんこっち来て!ここに飲んでいいお水あるよ!」
元気な子供はこの噴水がある場所のもっと深くへと走った。
「ま、待ってニャ~…。」
子供についていった先には「井戸」があった。木で覆われたところにある井戸はややコケが生えているが、中は結構、掃除されている。手動の井戸ポンプがついてあり、ややレトロな雰囲気である。木陰ができているため、意外に涼しい。
「ここの井戸はいいんだって!」
「へ~……。」
(この子、結構詳しいニャ…。)
「はい、おねえちゃん。お水!」
子供は井戸ポンプをコシュコシュ動かしながら言った。
水がバシャバシャ出てくる。
ミケは必死になりながら手ですくってお水を飲んだ。
「うまい!」
(この子、優しいニャ…。)
「じゃあねおねえちゃん、お母さんのところ行ってくる。」
「うん!バイバイニャ~…。」
手を振りながら子供と笑顔で別れる。それにしてもいいところだ。草木が生い茂っており、新鮮な空気で満たされている。自分のおうちのギスギスした空気に比べると、よっぽどこっちのほうが住み心地いい。
そんなこと考えていたら、何か音がした。
何か掘っている音だ。
土を掘る音、不規則に。
その音がなるほうへ向かってみる。
生い茂った草木の奥。
本当は正規ルートがあるはずだが、ミケはお構いなしにぐんぐん進んでいった。道なき道。木陰のせいでやや暗いが、すぐに明るいひなたにでた。
崖であった。下に3,4メートルくらいの小さな崖。
その下には何人か人がいた。
一人は必死に地面を掘り、もう一人は木陰でぐったりしている。
あとの……3人は疲れているようだ。
そして、
「「「はあ…」」」
3人はため息をした。
どうやら穴を掘っているらしい。
なんで穴を掘っているのか分からないけれども、この人達はなにか面白いことをしているに違いない。試しに声をかけてみた。
「なんか面白そうなのやっているニャー♪」
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彼女たちはどうやら落とし穴を作っているらしい。それなら第四部隊に任せて置け!そう思ったミケは家までダッシュした。おいしいお水のおかげで元気が出ていた。
自分が家を飛び出したのを気にせずに、ミケは家の中に入った。
「こリャ!ミケっ!話があります!こっち来なさい!ニャ!」
ヒケ姉さんは怒っていた。まるでいまのお日様のように。
「そ、そんなことより手伝ってほしいニャ!第七部隊ニャ!」
「だ、第七部隊!?それって昔は有名だったのに、いまでは衰退していった、あの!?」
「そうニャ!」
「と、とりあえず事情を聞かせなさいニャ!はい、お昼ごはん。」
ミケはおにぎりをむさぼりながら、話した。第七部隊が落とし穴を作っていること、なんかマッチョがいたこと、声が非常に低い人がいたこと、第四部隊のことを話したこと等…。
「ん?姉ちゃん、なにしているのニャ?」
「決まっているじゃニャい。約束しちゃったのでしょ。第七部隊を手伝うって。」
「それは、うちっちの勝手な約束で…。」
「ふん、いいの!行かないと迷惑でしょ!」
「しょ、しょんニャ…。」ミケは第四部隊に迷惑をかけたと後悔をした。
ミケは大工を受け継ぐのは嫌いだけれども、第四部隊は好きであった。受け継がないと足を引っ張る。でも、好きでもないことをやりたくない。そんなジレンマがミケにはあった。だから、ミケにとって第四部隊に迷惑がかかることはとてもつらかった。
やや夕方ごろにヒケ達、第四部隊は着いた。
「こんな公園の奥にこんな場所があるなんて…すごいニャ…。」
妹たちが驚いている。
第七部隊と合流したら、ヒケ姉さんがすぐ先に前にでた。
「どうも、ウチのミケがご迷惑をかけたようで…。」ゆっくりと頭を下げるヒケ姉さん。
「ま、まあまあ、こちらこそ……。」やや声が低い人が言った。
(やっぱり迷惑だったのかもしれないニャ…。)と心の中で思うミケ。
作業はすぐに取り掛かった。マッチョな人から落とし穴の説明を受けて、第四部隊はすぐに働く。やっぱり言われたことをやるのが向いているのかもしれない、第四部隊は。
でも、そう時間たたずに辞めにした。2番目姉、「フケ姉さん」の合図で作業は終了した。
その後も第四部隊はここに訪れるようになった。企業とのタッグは大丈夫か確認したが、
「心配いらない。いまは受注が少ない時期だから。」と言っていた。
ミケは一生懸命に作業した。第四部隊の迷惑にだけはなりたくなかった。帽子をかぶっているが、このお日様の下はさすがに辛かった。ちょっと休憩しようと思って木陰に入ろうとした。
先着がいたようだ。
たしか、海<カイ>という名前だったような…。そして「男」というものらしい。一体「男」とは何者なのかはしらないが、自分ほど見た目がおかしな存在には感じられない。
その海ちゃんはなにか、横になりながらゴロゴロしていた。
「おーい。何しているのニャ?」聞いてみた。
………返事が無い。
ゆすってみた。
一瞬目が開いたかと思うと、急にうなされた!
「うぅぅー…!うぅぅぅー…!」
汗が尋常ではない!
「ニャ!大変ニャ!だれか!」
「どうしたの?」ヒケ姉さんが来てくれた。
「海ちゃんが!」
「あら!熱中症だニャ!」
ちょうど、小柄な子が水がいっぱい入ったボトルと大量のコップを持ってここに来た。
「ご、ごめんなさいニャ!」
ミケはその子からボトルを取り上げて、自分の首にかけてあったタオルに入っていた水をかけた。
そして、海の額に濡れたタオルを置いた。
ヒケ姉さんがいろいろ詳しかった。
脇、太ももにも濡れたタオルを置いた。
水も飲ませた。
意識がもうろうとしているように見えるが、ただ眠たいだけであることも、確認した。
「ミケは海さんのそばにいてちょうだい。」
「わ、わかったニャ!」
結局ミケは作業をしなかった。自分が言い出したことなのに自分が働いていないことに辛くなってしまった。でも、ここにいる子を見ると、なんだか落ち着く。すこしだけ、ミケは海のそばに近づいた。後ろで小柄な子が引いていたが…。
「あ、あの~…。」
「ん?ニャに?」
「ひぃぃ!そ、その、ここで寝かせるより、ちゃんとしたところで寝かせたほうが…。」
「それもそうだニャ…。」
「ひっ!……えっと、家に来ます?ベットあります。マアカさんのですけど…。」
「あ、ありがとうニャ…。」(マアカさん?)
「……いや、第七部隊のことなので…。」
なんかこの子はおどおどした子だなあ…。自分にはあまり相性が悪そうだった。
マッチョの人に伝えて、ミケは海をおんぶしながら、その子についていった。「かえでちゃん」という名前らしい。着いた先は意外にも単なる一軒家であった。
勝手に中に入って大丈夫だろうか、心配しながら入った。部屋の中にあったベットに寝かせたら、やっぱり第四部隊が自分をどう思っているのか気がかりになった。
「ごめんなさいニャ!うちっち、現場に戻るニャ!」
そう言って、ミケは急いで部屋から出て行った。
「あ、………はい。」かえでちゃんはポカーンとしていた。
「あの人に相談してきてほしいの。」フケ姉さんから頼まれた。
「あの人って、あのマッチョの!」
「ええ、ここの現場監督はあの人だもの。」
ミケはしぶしぶ向かった。
「あにょー…しょのことですがぁー…」
ミケはすごく緊張した。
「どうだった?」
「怖かったニャ…。いきなり大声あげて『やるぞー』って。」
「…ま、そんニャものでしょ。現場監督って。」
「ふ、ふ~ん。」
そんなこんなでミケはどんどん第七部隊の活動がすきになっていった。相変わらず、タッグ企業には目をくれず、ほぼ毎日第七部隊の拠点へ遊びにいった。半分あきれたヒケ姉さんが拠点の近くにミケ専用の家を作ってくれると聞いた時はすごくうれしかった。(その代わりにミライさんに厳しくお願いしますと伝えたそうで…。)
ミケが落とし穴のおとりになったときは大変だった。海君が同じことをしていたと思うと、本当にやばいと思った。ダウンがこっちに向かって走ってくるときの恐怖ときたら、人生のトラウマになってしまう。
「ニョニャニョニュニュアニャァァニョエ゛~!!!」
これがその時の叫び声である。自分でも変な叫び声だったとおもっている。
今回は丈夫な縄で体を上げて行ったのだが、一匹がキャリーオーバー、もしくはたまたまそれてしまい、こっちに向かってきた!トムさんとミライさんが顔を青ざめながら縄を引っ張るが、間に合わない!
「「ミケっ!」」
その言葉を聞いた先は思い出せない。どうやらそのときは自分は気絶していたらしい。はじめはミライさんが、「そんなもので気絶していたら成長しないぞ!」と強気だったが、トムさんが「じゃあお前がお手本を見せろよ。」と言ったら、「許して!ごめ~ん!」と急に頭を下げだした。そんな会話が楽しかった。
こころの隅でこんなことを一瞬だけ思ってしまった。
「第七部隊にはいりたい。」
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海とイチャイチャしたことを思い出しながら、ミケは噴水がある公園でベンチに座っていた。思い出して、やや半笑いである。(海君か~…。)ますます第七部隊が気に入ってくる。
「あれ、ミケちゃん!?」
ん。この声は………
「ヒッ!海君!?」
ミケはびっくりして立ち上がった。
「どうしてここにいるの?第四部隊のところにいかなくていいの?」
「………。」
「…何かあったんでしょ。言ってみ。話すだけでも気が楽になるから。」
「それが……―――」
ミケは先ほど起きてしまった事件について話し始めた。
「第七部隊に移籍したい!?」
「…そうニャ。」
ヒケ姉さんがここまで目を丸くするとは思ってもいなかった。
「どうして急に!?まあ、第七部隊の拠点に家を建てたけれども、それはおかしいって。」
「なんでニャ?」
「別にここにいたっていいじゃない!そんな移籍だなんて。」
「それでもニャ!」
「じゃあ、大工の勉強をしなさい。あと土木関係のを。ミケよりヨケ、イツケのほうがよっぽど詳しいわ。」
「それは嫌ニャ!」
その言葉を聞いて、ヒケ姉さんの堪忍袋の紐がほどけてきた。
「…なんで。」
「うちっちは自分が好きであるものに取り組みたいのニャ!好きでもない大工なんか嫌ニャ!」
やはり、だめだったか。ヒケ姉さんは悔しながら堪忍袋を開けた。
「そんなに入りたければ、勝手にしなさい!あなたなんて、いてもいなくても変わらないものっ!!!」
ショックだった。
「いてもいなくてもかわらない」
この言葉はおとりのときよりもトラウマになってしまった。
ミケはすぐに後ろを振り向き、うつむきながらダッシュした。
バッ
「ちょっと、ミケ!」
しかし、ミケは止まることはなかった。
ミケはヒケ姉さんの期待には応えてくれなかった。
ミケは泣きじゃくりながら走った。あの時と同じように。
そして噴水が見えた。ミケは休憩するためにベンチに座っていた。そして今にいたる。
「とりあえず、はい。」
「水筒?」
「喉乾いているんだろ。見たらわかるよ。」
「ありがとうニャ…。」(海君の優しさで心臓が爆発しそうニャ!)
「あ、ごめん!口つけちゃっているから…。」
「ううん。気にしないニャ!」
ミケはごくごく飲んだ。中身が空になるくらい。結構、量があったのにもかかわらず、一気飲みしてしまったため、むせて、お腹がタポタポになり、小さくゲップをしてしまった。海が心配しながらこっちを見ていたが、自分がはしたないことをしていることに気づき、赤面しながら、そらした。多分、自分は海と会ってから、恋をしてから、こんな女の子っぽい態度ができるようになったのだと思う。
「ミケちゃんの姉さん……ヒケさんだっけ。」
「……うん。…いじわる姉さんニャ。」
「姉さんらしいんだねぇ。優しそうだし。まるでお母さんみたいだね。」
「どこがニャ!うちっちを捨てたんだニャ!」
「こんなミケちゃん…って言ったら失礼かもしれないけれど、ヒケさんはご飯を食べさせてくれる。」
「………。」
「服も買ってくれるし、家を作ってくれる。」
「………。」(ずるい。)
「僕らのことまで気を遣ってくれるしー。」
「………。」(ずるいずるい。)
「ほら、机とか椅子とか、………あ、階段も!」
「ずるいずるいずるいニ゛ャァーーー!!!」
ミケは急に立ち上がって叫んだ。そんな姉の庇う言葉は聞きたくなかった。
心の中では(好きな人に向かってなんてことを!)とものすごく後悔をしてしまっている。
海は驚きそして、悲しみはじめた。そして、
「……ご、ごめんなさい…。」と言っていた。
声が震えていた。やや目が泳いでいる。なんだか海がみすぼらしく見えてきた。男っていうのはトムさんのようにリーダーシップがあり、気が強い生物かと思っていた。どうやら男は全員そうではないらしい。まるで母親から怒られている子供のように。
一瞬だけ今のヒケ姉さんと自分と似ているなんて思ってしまったところが憎たらしかった。
「海さんっ!海さんっ!カ、海さんっ!はあはあ…。」
後ろのほうからへんてこりんな声が聞こえたので振り返ってみたら、マアカちゃんがこっちに向かって走ってきていた。あまり運動が得意ではないのに、懸命に走っている。息が荒くなっているためか、声が途切れ途切れである。
「マ、マアカちゃん。どうした?大丈夫?」
「はあはあ、あの、その、『スート』、はあ、『スート』が出たって。」
「えっと……スートって空飛ぶ怪物の…。」
「そ、そう、そう、そうなの、その、ス、ス、スートが。」
「とりあえず、一旦落ち着こう。」
海はマアカさんをベンチに座らせて、背中をさすった。
「それで、スートがどうしたの?」
「で、出たのです!」
「どこで?」
「あ、あっち、あっちの―――」
マアカさんの震える指が指した先は……
我が家がある方向だった。
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ミケと海は猛ダッシュした。トムさんも一緒に連れて来た。ミライさんはマアカの様子を見てくれるそうだ。
「それで、そのスートが発生したところは第四部隊の拠点であっているよな。」
トムさんは走りながら尋ねた。
「そうだニャ!確かにマアカさんはこっちを指していたニャ!」
「そうか。」
「マアカさんが知ってから行動しているから、だいぶ時間がたっているかもしれない。」
海は結構、汗をかいていた。
「…うん。」ミケは第四部隊の様子が心配だけれども、ヒケ姉さんと喧嘩していることが気がかりだった。
「…今更だけど、お前、『マアカさん』っていうんだな。」
トムさんが話したことに海は動揺しはじめた。
「え、えっと……言いましたあ?そんなことぉ?」
あ、しらばっくれた。
ミケたちは自分の家に着いたが、誰もいなかった。
「おおい、どこ行った。」
「うーん。多分こっちニャ!」
そう言って、ミケは壁にかかっていた弓とそばにあった矢を取って、家の裏のほうにある道へ走った。
ミケが向かった先、
それは第四部隊が作った砦である。作ったのは自分たちの代ではないのだが、今でも使用している。
そして、第四部隊のみんなは砦の窓や上からスートに向かって弓矢を射っていた。しかし、ざっと8匹くらいいるスートになかなか当たっていなかった。
ヒケ姉さんが見えた。とても辛そうな顔であった。それはいつも見るおしとやかな感じから逸脱していた。
ミケたちは砦の中の階段を駆け上り、屋上にでた。
すぐ目の前にスートがいた。
今すぐに国内へと入ってしまうときだった。
「このぉ~~~っ……………やめっ!」
そう言ってミケは矢を放った。
ゾゴッ
ミケが放った矢はなんと、スートの目に刺さっていた。すぐに激しい叫び声をしたスート。それに気づいた第四部隊たち。
「「「ミケ(ニャ)っ!」」」
その後もミケは確実に射る。スートの弱点である、目、喉、頬を狙う。
「すげぇ。」思わず海が声を発した。
「お前、知らなかったのか?ミケは弓矢うまいんだぞ。」
「えぇー…。」
「ほら、俺らも手伝うぞ!」
「手伝うって…。」
「えっと、あっちだ!」
トムさんが海を連れて砦の右側のほうへ走った。
「イケッ!ニャ!」
2つ、3つの矢でスートを次々と倒していくミケ。しかし一匹が、ちょうど引き返そうとした。
(ここからじゃ届かないニャ…。)
諦めようとしたときに、
「おーいミケ!準備できているぞ!」
トムさんの声がした。
(そうだったニャ!アレがまだあったニャ!)
ミケはそこに向かって走り出した。
アレというのは「投石機」のことであり、トムさんは以前ここに訪れたことがあったので、その存在を知っていたのだ。
ミケが到着すると、後はもう、棒を倒すだけだった。ミケは投石機の後ろ側に立つと、背を低くしながら方向を指示した。
「トムさん、少し引いて欲しいニャ!」
「こうか?」
「あーハイッ!そこニャ!」
(スートは少しずつ動いている。徐々に左方向に……。)
ミケの頭の中には石の軌道が「感」で読み取ることができる。
海に少しずつ動かすように指示する。
(まだ遠い………まだ、まだ、まだ……。)
ちょうど命中するには、スートがあの木の上あたりにいるときと予想する。
(まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まd)
「ニャッ!!!!」
バシュルルルル!!!
激しくうなる投石機!海とトムは動かないように必死に抑える!
一瞬にして飛ばされる大きな石。
石が飛ばされている間、静寂な時が流れ、
スートの奇妙な鳴き声が聞こえると、木の葉っぱをこすりながら落ちていった。
「……終わった……ニャ……。」
「「「「「やったーーーっ!!!」」」」」」
第四部隊の歓声が響き渡った。
「ミケっ!」
その方が来たときには、みんなの緊張はほぐれていた。
「ヒケ姉ちゃん…。」
「よくやったわ……ミケ…。」
「姉ちゃん、あのね、うちっち、いけないことしたニャ。」
「ううん、いけないことしたのは私。」
「えっ…。」
「私、お姉ちゃん失格だわ。自分の妹にとても酷いことを言って、しかも助けてもらうだなんて…。」
「お姉ちゃん…。」
「ごめんなさい!ミケッ!あなたは私の大切な家族よ!」
「姉ちゃん~!!!」
ミケはヒケ姉さんに思いっきり抱きついた。
「もーう、甘えん坊なんだから。」
そう言いながら、ヒケ姉さんはミケの頭をナデナデした。
ミケはヒケ姉さんの胸へ顔をうずめた。
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「やっぱり、変わらないニャ!第七部隊に入りたいニャ!」
「ふふ、そうだと思った。」
「ニャ?」
「だって第七部隊にいるミケが、一番楽しそうな顔をしていたんだもの。」
「……ニャ~…。」
ミケは照れてしまう。
「実はね、私たち、企業と組むのをやめたの。」
「えっ!?ニャ!?どうしてニャ!?」
「なんだか、第七部隊と作業したら、こっちの方が楽しくなっちゃって。本当は私も第七部隊に入りたいって思っちゃったんだから♪」
「ニャ~!?」
「でも第四部隊を手放すわけにはいかないから、私はここに残るわ。」
「そ、そうかニャ…。」
内心はもっと仲間と一緒にいたいと思っていた。
「あ、でも!たとえ活動場所が変わっても、今までどおり、お節介はやめないから!ミケは家族だもんね!」
「ね、姉ちゃん~!」
ミケはヒケ姉さんの胸へ飛び込んだ。
「フフフ、また~。」
海はその様子をポカーンと見ていた。
「あらぁ、海さん、さてはあなたも胸に飛び込みたいのですかぁ?」
マアカさんが海に向かって言う。
「なっ!?ち、違う!」
「海ってホント単純。しもごころ丸見え。」
シイアが笑いながらしゃべる
「シイアまで!誤解だよ!いいの!やらなくて!」
「……変態海君。」
「か、かえでちゃん……。」
海はがっかりした。
「昔はシイアちゃんもサラに飛び込んでいたっけなあ。」
腕を組みながら、ミライさんが言った。
「あ、ほらシイアだってやりたいんじゃん!」
「あんたと違って胸目当てじゃないですうー。」
海に向かって指をさす。
その指をどかしながら、
「胸目当ていうな!」
と叫ぶ。
「海さん、胸で判断しないでください!」
「だから胸目当てじゃ…!」
「……もう。」
「『もう』はこっちのセリフじゃ!」
ヒケ姉さんがミライさんに近づく。
「ミライさん、どうか、うちのミケよろしくお願いいたします。」
「ああ、任せてください!バシバシ鍛えますので!」
ガッツポーズをするミライさん。
「ニャ!ミライさん、それは酷いニャ~!」
ミーナさんに似てきたミライさんはニコニコしていた。
みんなでガヤガヤ
笑い声が第四部隊の家じゅうに響く
今日もまた、第七部隊は成長を続けています!
睡魔のせいで課題提出が期限ぎりぎりになった。まじで危ない!
でもこうやって、「睡魔のせい」にされて、睡魔さん困っているとおもう。
世の中には眠くならなくて困っている人がたくさんいる。だからこうやって睡魔に襲われやすい自分は感謝しなくてはならない。
睡魔さん、ありがとう!
あ、でも、平日の二度寝だけは勘弁してください。




