いじめっ子にはアタック!【前編】
GWだから何かできると思っていた。
何もできなかった。
五月病だから体がだるく感じ、物事にやる気が出なかった。だから「柏餅」食った。
夏バテ予防だから、「スタミナ料理」を食った。
こうしてブヨブヨしていくのだなあ。
なあんだ。すべて、自分のせいじゃないか。
悟った僕でした。
んだ。トラップハンターが始まるんだ。
レベッカ先生は優しくて、毎日「大丈夫?」と海のことを気にかけてくれていた。海自身も、声を掛けてくれることが嬉しくて、学校に通うことが少しずつ楽しくなっていた。相変わらず、授業の内容は強烈な難易度ではあるが、周りのサポートが存在しているためか、まだ心に余裕を持っている。とは言っても、やはり分からないところは増えていくばかりだ。いつも放課後に、マアカさんに教えてもらう日課が続いているが、果たしてこのろくに勉強に前向きに取り組まなかった者が、いつまでこのリズムを保てるのか、自分でも分からなく、不安になるのである。まあ、あまり考えすぎないように、抑えているのだが…。
ここあたり、前まで海の周りをちょろちょろしていた「ギャル2人組」はいつの間にか、そばにはいなくなってしまった。海はまだまだこの「クラシカル学園」について詳しくなったわけではないので、道案内役がいなくなると、やや心細くなってしまうのであった。いまだに、教室から職員室までの道のりははっきりと覚えておらず、かえでちゃんのクラスにいたっては全然わからない。
(まだ、帰るのは早いか…。)
空は微妙に青く、時計は3時30分を指している。本日は、一週間のなかで短い時間割の曜日であり、早めに部活動に取り組む人が多かった。ここのクラスの帰宅部はみんな、のこのこと帰ってしまい、自宅や塾での勉強に励む人ばかりだ。ここのクラスの子はほぼみんな勉強熱心な人が多いことを、マアカさんに聞いてみたら、
「ええ、このCクラスは進学希望の方が入られるクラスはですから。」
と、答えた。確かにマアカさんをはじめ、このクラスにいる子は見た目だけでも頭がいいと思える。眼鏡率も高い。あのギャル二人に至っては謎であるが。あと、なんでこの俺が頭いいクラスに入らないといけないのかが疑問になる。でも、このことはマアカさんに聞かなくてもなんとなくわかる。たぶん先生たちは海を「優秀で特別な人材」に育てたいと思っているのであろう。なにせ、「男」というパラメータがあるからだ。ここの世界では「男」は珍しく、そのためみんなが丁寧に接したいと思ってしまうからである。人の上に立つ者は優秀でなくてはならない。そんな暗黙の了解があるのであろう。確かに、地球のどこ行っても、偉い方は頭がよく、勉強熱心であると感じる。
(ああ、人気者もつらいなあ。)と心の中で思う。もし、マアカさんなどに、なぜこのCクラスにしたのかなんて聞いたら、「う、海さんは私たちが頑張って入学させたのに、理事長さんが学費を免除してくれているのに、なのに、なぜ、その、口から、不満の、言葉がぁぁぁ…。」なんて言いそうだから聞かないように気を付けなくてはな!
「あら、海さん帰りますか。一緒に帰りましょう。」
「ああ、でも先トイレに通ってからにするから、先にいつものところで待っていて。」
いつものところというのは、学校出てからすぐにある、大きな橋のことだ。
マアカさんは可愛らしい返事をして、教室から出て行った。
----------------------------------------
(痛いよぉ…。痛いよぉ…。)
心が幼い女の子は大声が出なかった。少しでも気を抜くと電気のように全身を激しく流れる痛みはつらく、もう我慢の限界であった。けれども、だれも助けは来ない。いや、彼女自身が助けを呼ばないのである。繊細な心の持ち主であるためか、誰かに助けを求めるということは、その人の迷惑になるということであり、また傷ついてしまうのは勘弁であったからだ。しかし、それはただ、自分に自信がないからだけの話であり、そんな自分を深く嫌っていた。
苦しいのはつらい
でも、誰かに助けてもらうのは嫌だ
二つの考えが彼女をどん底の闇へと連れていくのであった。永遠に終わらない螺旋階段を下るように。
薄暗い個室で一人の女の子は泣いていた。誰も助けに来ないでと祈りながら。
(痛いよぉ…。痛いよぉ…。)
----------------------------------------
ほどなくして、海は毎度おなじみのルートを通って、グラウンドの隅のトイレにまできた。ギャル二人組に教えてもらったルートは微妙に遠回りをしているみたいだが、これ以上聞くのは自分としても恥ずかしいと思ってしまうのでやめているのだ。木でできたドアにモダンなデザインをしているため、一目見た人は高級ホテルのエレベーターかと思ってしまうデザインであった。(この世界にエレベーターはあるのかは知らないが。)
大してションベンをする気ではないが、自分なりのルーティンなのか、いつも学校から帰るときはトイレに立ち寄る行為をしている。なんというか、待たせているマアカさんには申し訳ないと思う…。
平然と海はトイレのドアに手をかけた。
「あれ?」
ドアが開かない。
いままでなかった現状に焦りが漂ってくる。落ち着いて、落ち着いて。
(多分、中から鍵を掛けられているんだ。だったらその鍵を外せばいい。
海はカバンの中から、金属でできた。小さなリングを取り出した。つい最近、道端で拾ったそれは、何の役割を果たす部品なのかは知らないが、ちょうどいい感じなサイズだったので持ち帰っていた。そして今、君の役に立つときが来た!
「そう、外からトイレの鍵を開けるには、これだ!」
海はドアの鍵の部分にあるくぼみにリングを横にはめて、回した。すると、カチャという音がした。こういう類の代物は生まれたときから何度も見てきた。
(そういえば、小学生のとき、こうやって遊んで勝手にトイレの中を覗くなんてことしたっけ。)
うぇとかなんとか声がしたけど、気にせずに海はトイレのドアを開けてしまった。
「…………えっ。」
思わず声が出てしまう。
だってトイレの中には
「裸の女の子」がいたのだから。
しかも全身、あざだらけ。
目も青くなっている。
腹周りにはインクで「裏切り者」「バカ」「死んじまえ」と書いていた。
(ありえない……………本当にこんなことがあるのか……。)
イジメを大げさに取り上げるのはメディアだけかと思っていたが、本当にここまでひどいシーンを直接見たのは初めてだった。そのため、どういった反応をすればいいのかわからない。怒ればいいのか、泣けばいいのか、笑えばいいのか、困った顔か……。
目の前に座りこんでいた女の子ははじめはポカンとしていたが、次第に瞳が潤いだしてきた。そしてボロボロと泣いた。
そのとき、女の子は初めて大きな声が出せたのであった。
「うわああああ!あ、あの!風邪ひくと悪いからとりあえず!これ!これを着て!」
海は咄嗟に、ちょうど持っていた体育着を渡した。それを受け取った女の子ははいままで辛いことだらけで、自分の裸を人に見せることは恥ずかしいことであるのを忘れてしまっていたためか、急に思い出したかのように、顔を真っ赤にしてドアを思いきり閉めた。
バンッ!
あまりにも速い出来事だったので海はずっと開いた口が塞がらなかった。
「海さんっ!レディーを待たせるのはいけないって『紳士道』に載っていましたよ!!!」
マアカさんが腕を組みながらぷんすかこっちに来た。まるでデートに遅れた男を怒る女の人のように。(海自身デートをしたことはないが、漫画やドラマからだいたいこんな感じであると予想が着く。)
いつもと違う態度を見れてやや嬉しくなった海だが、すぐに気を取り戻して、先ほどのことをマアカさんに話した。
「え、それってまさか…。」
海専用のトイレのドアが開く。
そこから女の子は靴を履き直しながら出てきた。
「やっぱり、アヤメさん……。」
女の子はひどく傷ついていた。その姿を見たマアカさんはどれだけショックだったのだろうか。
---------------------------------------------
保険室のベットに連れて行った。幸い、彼女はまだ歩ける感じであった。
赤くなってきた空をバックにして、その子はベットに座り、俯いていた。
「……ごめんなさい。わたし、わたし…。」
「アヤメ・サーブ」と名乗る子はどこかしら、雰囲気がかえでちゃんに似ていた。やや短髪で茶色ぽい髪、おどおどした態度、丸っこい瞳、あまり筋肉は無く細くて白っぽい腕、それでも何か気品がある感じがかえでちゃんとの雄一の違いである。かえでちゃんをそのまま17の女子高校生にさせたらこうなるというイメージだ。
「あ、このジャージ。洗ってすぐに返します。」
「いいっていいって。そんなに気を遣わなくても。」
「でも…。」
ああ、なんとなくだが、マアカさんにも似ているような気がした。すると彼女はかえでちゃん(17歳バージョン)とマアカさんを足して割る2をしたのがこの子なのかもしれない。
あいにく、保険室の先生はもう帰ってしまっており、マアカさんは代わりに職員室にいた先生を連れて来た。おばさん先生ははじめ、アヤメさんの怪我を見て驚いていたが、すぐに落ち着いてくれた。そして消毒やばんそうこうをしながら、その怪我はどうしたのかと聞いたが、アヤメさんは俯いたままで何も答えなかった。おばさん先生は気にしないようにした。きっとアヤメさんのことを思って、これ以上追及しなかったのだと思う。
その後、包帯でグルグル巻きにされ、まるでミイラのような格好になったアヤメさんは帰ろうとした。
「私のこと気遣ってくださり、ありがとうございました。」
「いやいや、当たり前のことしたまでだよ。」
「すみません、海さん。しかし、誠に申しづらいのですが、あまり私に関わらないほうがいいと思いますよ。」
「…?ど、どうして?」
「それは………すみません、お伝えできません。」
マアカさんが家まで送っていっていこうとしたので、海も「僕も行くよ。」と言ったのだが。マアカさんからきつい目つきで見られたので諦めることにした。多分頭の中で
(女の子の家に勝手に行ってはいけないって『紳士道』に載っていました!)
とでも思っているのだろうか。厄介な本をマアカさんは読み始めたなと海は思った。
「それに、海さんを待ってくださっている方がいるでしょう。さっさと行ってあげなさい。」
「は、はい!」
(母親か!)とツッコミたくなったが言うのを我慢した。
そういえば、今日の昼には怪物襲来だったはず。やはり早めに帰らなくてはならない。そのことを思い出した海は真っ直ぐ帰ることにした。
---------------------------------------
「も~~~~~~~う!!!遅い!!!どこほつき歩いていたのよ!」
シイアは腕に手を当てたまま怒った。やはりテンプレートな展開だ。しかし「ほつき歩く」なんていうやや難しい言葉が出てきたことに驚いた。
空はもう暗くなり始めており、テントとテーブルにあるランプがすでに点灯していた。第四部隊は一旦拠点に帰ってしまったらしい。
シイアが凄い怒っているが、怪物退治の件に話をそらすことによって免れようとした。
「ミケちゃんが頑張っただってよ。でも一匹だけ落とし穴をよけちゃってね。危なかっただって。」
「へえ~…。」
「それをすかさず私が倒したってことさ!」
「えっ!」
後ろから声がしたので急いで振り返ってみたらミーナさんがいた。
「あ、この前の!」
そしてミーナさんの後ろからミーナさんが……じゃなくてお姉さんだっけ。
「お、姉貴、知ってんの?」
「トムさんを居酒屋からおうちまで運んだんだよね。」
「は、はい…。」
ミーナさんのお姉さんはなんとなく大人ぽい。でも元気な男っぽいふるまいはあまりミーナさんと変わらなかった。やや、甘えん坊な面があるようだ。
「姉貴、あまりここの部隊に迷惑を掛けんなよ。ここも結構いっぱいいっぱいだから。」
「わかった、わかった。」
肩ツンツン
「そういえば、マアカちゃんは?」シイアが尋ねてきた。
「ああ、怪我した女の子を家まで運んでくるって。『アヤメ・サーブ』って子知らない?」
「ア、アヤメ…。」
急にシイアの顔色が変わった。
「ああ、あいつか………。」
今度はミーナさんまで。顔を手で覆った。お姉さんは「え~どうした!?」と戸惑い始めた
「やっぱり知っているんだな。教えてくれ、アヤメのこと!」
海は思い切ってシイアに聞いてみた。
シイアは「ハア。」とため息をしてから、こっちを見た。真っ直ぐ見る目つきに海はドキドキした。
「その子ね、私と同じクラスの子なんだけど、いつもイジメられているの。」
「は?」
海には理解ができなかった。イジメられていることはあの時見た瞬間から分かった。まさかあの状況で自ら行ったとは思えない。しかし、理解できない点が一つ、
「いつも」
つまり、前からイジメられており、それをシイアやマアカさん、ミーナさん、クラスの子、学校の先生まで知っていているにもかかわらず、それを今も止めようとしていないことが理解できなかった。
「なんでだよ!イジメられているって分かっているのなら、なぜ誰も止めようとしないんだ!」
「海は優しいね。」
シイアの咄嗟の言葉にやや照れてしまった。
「あのね、みんな止めようとしたのだけれども、それを塞がれるようになっているの。」
「えっ?塞がれる?」
「そう、それをやっているのは『第五部隊』なの。」
初めて出てきた言葉に戸惑い気味になってしまう海。
「そのアヤメちゃんも『第五部隊』の一員なの。」
海は先ほどから気になる第五部隊について聞いてみた。何か、只者ならぬ強烈な印象が漂わせる。
「その、第五部隊っていうのは…。」
「『西の部隊』」と呼ばれている部隊ですわ。」
後ろから急に声がしたのでびっくりした。すぐに振り返るとマアカさんがいた。
「マアカちゃん、帰ってきたんだ。」
「ええ、さきほどアヤメさんをおうちに送ってきました。」
「そう、お疲れさま。」
海は二人の話をさえぎるように聞いてみた。
「そのアヤメちゃんは第五部隊でいったいどういったことをしているの?」
「…メイドさん。」
「へ?」
急な言葉に驚いた。「メイド」なんて言葉はお金持ちしか使えなく、自分みたいな一般人には一生関係ないと思っていた。それが結構身近に、しかも同い年、そしてイジメられている…。そんなレアな人に出会えてなぜか、嬉しさが込みあがってくる。
「へ、へぇ~…。メイドさん…メイドさんねぇ~…!」
「海、動揺しすぎ!そんなにメイドさんが気になるの!?」
「そ、それで、そのメイドさん……アヤメちゃんと『第五部隊』の関係がどうしてイジメへとつながっているの?」
「あのね、ここからは噂なんだけどね…。そもそも『第五部隊』は『コンフォート家』によって形成している部隊でね、そこのお嬢様であり、またリーダーでもある『アリス・コンフォート』って子がこのクラシカル学園にいるの。そしてアヤメちゃんはそのアリスさんの専属の召使いの立場なの。多分、年齢が同じであることが選ばれた理由だと思う。それでアヤメちゃんは仕事をしつつ学校に通っていたのだけれども、ある日アリスさんの陰口を聞いてしまってね。それでその人らに反抗したせいでこうなったというわけ。って聞いたことがある。」
「やはり、原因はアリスさんでしたか。私も噂を少し聞いたことがありまして、先ほど本人に聞いてみたところ、軽く頷いて…。」マアカさんは手を顎に当てながら、考えるポーズをしていた。
「でも、それじゃあなぜイジメているのに誰も止めないの?」
「そのアリスさんが止めているの。」
シイアの言葉にはとても重圧感があった。先ほどから「ちゃん」ちゃん呼ばわりしないあたりから、格が違うことが予想していた。海は今その凄まじい圧力にたてつこうとしていることにビビッてしまう。
「噂だと、止めた方は退学されると聞いております。『コンフォート財閥』はクラシカル学園に資金を払っているそうですから。」マアカさんの話を聞いてさらに後ずさりしたくなる。
いままでせっかくシイアやマアカさん、先生たちのおかげで通えることができたのにこんな形で退学されるのは嫌だった。しかし、ここまできてしまったらもう振り返るわけにもいかなかった。
(やるしかないか………。)
「とりあえず海さん。すぐに晩御飯の支度をしておきますので、ちょっと待っていてくださいね。」
そう言ったマアカさんはそそくさとテーブルの方へ向かっていった。
「ああ、じゃあ私もう帰るわ。」ミーナさんは首の後ろをさすりながら言った。
「姉貴、行くぞ。」
「え~ここ落ち着くからもう少し。」
「だめだ。」
「酒、酒飲んでない。」
「姉貴、酒ばっか飲むな。体を壊す。」
なんて言いながら崖の上へと向かって行った。
「あ、おーい。マアカ~!キッチンができたっぽいから持ってくるの鍋だけでいいよ~!」
ミーナさんが遠くにいるマアカさんに向かって叫んだ。遠くから、「え~!本当ですか!?」とかなんとか声がしたのだが、声が遠く、また高い声だったのではっきり何を言っていたのかは分からなかった。
「あ、じゃあ俺はテントに行ってカバン置いてくる。」
「あ、うん。分かった。」
海はシイアを置いていった。
海はテントに向かって歩いた。
自分のテントの横のトムさんをテントの横あたりの森林に、だいぶ形になってきた木の家があった。近くにトムさんとミライさんがいて、「お、おかえり。」と声をかけてくれた。
返事をした後、自分のテントに入りながら、かえでちゃんといつものニャンニャンちゃん(ミケ)はどうしたのかなと思った。テントのチャックを開けて、中に入り、すでに敷いてあるマットを見てから、テントから出ようと………。
「え、うわ!」
押し倒された。
「ミ、ミケ!どうしてここに!?」
「う~…う~…。」ミケちゃんは涙を浮かべていた。
マットの上に海が上向きに押し倒され、その上にミケちゃんがいる状態
「えっと……大丈夫?」
「うわーーーーーん!!!怖かったニャ~!!!」
突然泣き出したミケちゃんは海をギュっと抱きしめてきた。あの力強い腕で。
(く、苦しい苦しい…。)
「うちっち頑張ったニャ!褒めてニャ!いっぱい抱きしめてニャ!なでなでしてニャ~~~!」
「あああ、分かった、分かったから。苦しいからもうちょっとどいて!」
海はミケちゃんの頭を撫でながらイヤイヤ話した。するとみるみるうちにミケちゃんの顔がとろーんとしてきた。
「はあ、はあ、海きゅ~ん……。海きゅ~ん……。」
「なんだよ気持ち悪いなあ。」
ミケちゃんは激しい呼吸をしながら海に顔を近づけてきた。荒い息が海の顔にあたっている。抱きしめられているため、心臓の鼓動リズムも早くなっていることが分かる。口もとからよだれがでており、数滴垂れてしまっていた。
「ハニャ~~~!!!」
ついにミケちゃんは海に顔をこすり始めた。海ははじめドキドキしていたが、そんな下心は痛みによって薄れていった。ひたすら顔をこすられるので、非常に痛かった。
「ギャーーー!痛い痛い!」
しかし、ミケちゃんは止めることはなかった。もう夢中であって彼女は痛みなんか感じていないようだ。
ふと、やめてくれたかと思うと、「カイの♪カイの♪」と歌いながらなんと海のズボンを降ろすではないか!さすがに危機感を感じ、逃げ出そうとするが、まったく脚が抜け出せない。困惑している間に、ミケちゃんは海のズボン、そしてパンツまでも脱がしてしまった!
「ん?これは?」海の『男の印』に気付き、ミケちゃんは初めて見るような振る舞いをした。海はとても熱くなってしまい、現実逃避をしたいがためか、勝手に手が自分の顔を覆っていた。
指と指のすきまから覗くとミケちゃんはあそこを握っていた。どおりでムラムラするわけだ。すると、「なんだかしっぽみたいだニャ!いっしょに絡まろうニャ♪」なんて言いながら、なんのためらいもなく、ミケちゃんは、ズボンをパンティーごと降ろしてミケちゃんのおしりの上あたりから生えているしっぽを巧みに動かし始めた。後ろをむきながら、しっぽを海のあそこにクルクルと巻き付けて動かしてみた。
「フー…。フー…。」
海はできるだけ意識しないように努力した。しかし、それでも、ムラムラは止まれない!
(うわ~ん助けて!!!)
心の中でしか叫ぶことができず、危機感しかなかった。
何か気づいたかのようにすっとミケちゃんが止まった。
しっぽをほどいてくれた。
そしてこっち向いた。
「え?」
ポーっと反り立つ海のあそこを眺めだした。海は逃げ出したかったが、動くことが困難だった。
ミケちゃんはスタンドアップしている一物を見て、ポッっと赤くなったと思いきや、急に前かがみになって海の上に乗り始めた。海のシャツを下着ごとめくりあげたと思いきや、自分の服もめくりあげ、自分で胸を揉み始めた。
「?」
ミケちゃんの右手は直接胸の突起を刺激しており、もう、見えてしまってもおかまい無しだった。対して、左手は……海のあそこをゆっくり自分の方へ倒して……やや湿っているミケちゃんの大事な部分へ……
(え、あ、おい、やめろ!おい!ねえ!本当に!嘘でしょ!ねえ!やめて!危ない!おいっ!)
必死に抵抗したが声は届かず。
あそことあそこが触れた瞬間「ウゥゥゥン…。」なんて声を出して。
はあはあと荒い息
右手の動きは加速し始める
海はミケちゃんの左手に釘付けに…
小さく開いている落とし穴
海の怪物はミケちゃんの落とし穴にかかってしまう!
(やばい!誰か誰か!)
ああ、入ってしまう
触れていく先っちょ
ぬめぬめした感触
ミケのいやらしい鳴き声
するするっと…………………
ブーーーーーーイ(テントのチャックが開く音)
ゴチンッ!!!!!
鈍い音がした。
すぐにミケはパタッと倒れてしまった。
「まったく、晩御飯ができたと呼んでも二人とも来ないから!行ってみたらこのありさまだよ!」
「………う、海君?」
シイアとかえでちゃんだった………。
「た、助かったよ~…ありがとう~。」
(よーしこんなかんじで場を乗り過ごして…。)
「……え、嘘。」
「どうした?かえでちゃん?」
「……二人とも何やっていたの。」
「な、何ってえぇ…。」海はすごく冷や汗が出てきていることを感じた。
「まさか……エッチなこと?」
「え、かえでちゃん。どういうことなのかわかるの?」
「………セッ○スしてたの?」
まさかかえでちゃんの口からそんな卑猥なワードが出てくるとは思っていなかった。
「かえでちゃんの言うセッ○スって『性別』のことでしょ。」
「……ううん。違う。」
「え、じゃあ何?」
「……お、男と……お、女が………き、き、………気持ちいいこと…するの…。」
その言葉を聞いた瞬間、シイアの顔ははんにゃ顔に変身した。
(あーあ………俺、ボコボコにされるなあ…。)
逃げようとしたが、何か触れていると思って股間をみたら、
「ずっぽり」だった。
当然「童貞」の俺は宇宙規模の幸せに恵まれたわけでして………
「や・ば・い。」
海はミケちゃんを思い切って抱きしめながら、全身の力が抜けていったのを感じた。
そして、勝手に腰がビクビクと動いたことも。
何か解放された気分になり、頭の中は真っ白になった。
にやけてしまう顔。
もうシイアはすぐそこにいたのに。
逃げることはできなかった。
シイアが一番最初に蹴りから入ったことを覚えている。
あと、平手打ち
かえでちゃんは泣きながら髪の毛を引っ張っていたっけ。
あまり、覚えていない出来事だった。
--------------------------------------------
「シイアさん、いくらなんでもやりすぎです。」
マアカさんは、海とミケちゃんを包帯でグルグル巻きにさせながら言った。まるでアヤメちゃんのように。ミケちゃんはグスグスと泣いていた。よっぽど痛かったのだと思う。
シイアはミケちゃんには軽く謝ったが、海には一切、口を聞いてくれなくなった。自分だって反省しているが、シイアの怪我は思っているよりヒリヒリして、それに対応するように、海はシイアのことを酷いと感じた。
「ごめんなさいね海さん。シイアさん、今、生理中でして……。」
「あ、そうだったのか。」
海は少し許してあげようと思った。(笑)
(しょうがないよなぁ。生理だもんなぁ。むかむかするもんなぁ。)
こんな男性の意見を微量でも女性の耳に入ったとき、たぶん、ものすごく怒ると思う。
「お~い。」
「あ、トムさん。」
森の奥から、筋肉ムキムキの男が手を振りながらこっちに来た。
「ミケハウスを作るのに材料が足りないだってさ。手伝って。」
「は、はい。」
「あ、あと、これ。」
トムさんは何か持っていた。小さな手紙であり、白色の紙で包まれていた。折られている紙を広げてみる。丸っこい文字でずらずらと書いてあった。
『本日、アヤメ・サーブヲ治療シテクダサリ、マタ、勤メ先マデ運ンデクダサリ、アリガトウゴザイマシタ。シカシ、今回ハアマリ深ク追及シマセンガ、コノ件ハ「第五部隊」ノ責任デアリ、部外者ハ関ワラナイヨウニ定メラレテイマス。本来ナラバ私タチハ感謝スル立場デゴザイマスガ、「コンフォート家」ニヨル指令デスノデ、何卒ゴ理解ノホド、ヨロシクオ願イイタシマス。
第五部隊 代表 』
「………うわ~…。」
「一体、コンフォート家って何者なのかニャ~…。」
「あまり、事情は詳しく分かりませんが、私たちはアヤメさんに近づくのは遠慮したほうがいいのかもしれません。」
「そうかもしれないけれども……。」
(このままイジメられているのを見ているだけなんて嫌だ。)
海に固い執念が芽生えた。
「どうしますか、海さん。」
「危険かもしれないけれども、助けたい。」
「私たちに何もメリットはありません。それに、アヤメさん本人が避けていることなんですよ。」
「それでも…。」
「海は強情強いのね。」
急に後ろから声がしたのかと思うと、白い腕が首の後ろから通ってきた。
「フィィ~ッ!!!」
「何へんてこりんな声を出しているのよ。」
振り返ってみたらそこにはシイアが……(ry
「シイアッ!お前のせいでこんなグルグル巻きに!」
海は立ち上がりながら叫んだ。
「女の子とイチャイチャしている変態にはいい薬じゃない。」
「なんで暴力がいい薬なんだよ!」
「ミケちゃんばっかりひいきして。」
「べ、べつにミケちゃんに好きでいっしょにいるわけではないし!」
「え、海君……うちっちのこと、……嫌いニャ?」
ミケちゃんはウルウルした瞳で首をかしげながらこちらを見ていた。指をくわえながら。
「え、えっと、別に、好きじゃないって言ったから嫌いというわけではなくて、その……。」
てんぱる海。
「まあ、とにかくあんたはアヤメちゃんのイジメ問題に立ち向かうというわけね。」
シイアは腰に手を当てたまま言った。
「ああ。」
「先生もお手上げな問題なのに…」
マアカさんは心配そうに頬に手をあてた。
「それでもやる。」
「よっ男前!」トムさんがもてはやしてきた。
「さすが紳士!」マアカさんが拍手した。
「えらいじゃん。」シイアが自分の腕を組んだ。
「なんだかよくわからないけど、しゅげぇ~ニャ~!」ミケちゃんが惚れた。
「お~い、材料は~?」ミライさんが声をあげた。
「…ねぇ、ご飯まだ?」かえでちゃんが怒っていた。
「え、えへっえへへ。」海は頭の後ろをポリポリかいた。
周りに褒められながら、海はきょろきょろした後、
「あれ、なんか俺一人で解決しないといけない感じ?」
その言葉を聞いた瞬間、みんなあきれ顔になってしまった。
「ふ~ん。」トムさんは空を見上げた。
「紳士道を極めた方はいらっしゃらないのでしょうか。」マアカさんは手を握った。
「前言撤回」シイアはふてぶてしい表情をした。
「ミュー…。」ミケちゃんは口を変な形にしていた。
「みんなどうした?」ミライさんは話に入って来れていなかった。
「お・な・か・す・い・た・!」かえでちゃんはらしからぬ態度を見せた。
マアカさんが突然立ち上がった。
「しょうがないですわね。私、マアカ・ナトナールにお任せください!」
「マアカさん!」
(ん?マアカさん?さん?私、いま「マアカさん」って呼ばれたような…。)
目が点になるマアカさん…。
シイアは拳を握った。
「ふん、海の問題は第七部隊の問題。第七部隊の問題は私の問題。付き合ってやるわよ。」
「シイア!」
(そこは「シイアさん」じゃないのかーい!)
一瞬こける演技をするシイア…。
「二人ともありがとう!」
心強い仲間がいて本当に助かっている。こんな素晴らしい友情は生まれて初めての気分だった。
ミケちゃんが腕をあげた。
「う~うちっちも一緒に行くニャ~!!!」
「ダ~メッ!」
ミライさんが木の板でミケちゃんの頭を叩いた。
「あなたはこっちの仕事をするの。あんたの家なんでしょ。ミケハウス。」
「そんな子供用のグッズを売っている店みたいな名前の家なんか作ってないニャ!」
「とにかく、あんたはここで仕事。」
「しょんニャ~~~~~!!!」
ミケちゃんが可哀想に見えてきた海だった。
(今度、一緒にお出かけを誘うか………。)
来週こそ休まないように頑張りたい。
さーて来週の「とらはん」は?
「ミーナですっ!
最近周りの子がメイクし始めてきました。部隊の隊員にもお化粧している子がいたので、私は『そんなの戦う場でいらない。』と言ってしまいましたが、断固としてやめようとしません。もしかしたら、そういうお年頃なのでしょうか。
さて、次回の「とらはん」は、
カイの話術方程式
かえでと小鳥と鈴と
ミライ、我が道を行く
の3本です。」
来週も見てくださいね。
ジャンケンポンッ! (パー)
うふふふふふふ♪




