トムさん脱却作戦
ちょっと危機感をかんじている
僕は勝手に小説を書き始めたが、ここまで話がこんがらがってしまうと、自分はいったい何を目当てに書いているのか分からなくなってしまっている。
「トラップハンター」なんて言っているけれどもまったくトラップしていないのも原因である。
でも、なにか変わりたいと思って、こうして続けている。
今回で第14話
話が変な方向へ向かっているけれども
付き合ってほしい。
「トラップハンター」始まるのデスティニー。
私立クラシカル学園から架かる橋の真ん中あたりで、シーアとマアカさんは困った顔をしていた。かえでちゃんは息を切らしていた。
場を和ませようと、俺は喋った。
「ま、まだ誘拐されたって証拠はないでしょ。ほら、トムさん、もしかしたら出かけているだけかもしれないよ!筋トレのために」
「勝手に出ていくなんて変」
「……っ!」
シーアのこぼすような返事に、返す言葉が浮かばなかった。
夕陽は先ほどから地平線の向こうに隠れている。
川の水面に映った夕陽の光は、どこか切ない感じを醸し出す。
空高く飛んでいるはずのカラスの声ははっきりと聞こえる。
どうすることもできなかった。
でも、このままボーっと突っ立ってる場合ではないことはハッキリしている。
(何か行動しないと……)
俺はシーアたちが来た方向に向けて足を踏み出した。
シーアの横を通り抜けようとしたとき、腕を取られたため、後ろに転びそうになる。
「もう意味ない。また行っても無駄」
そんな安直な言葉に苛立ちを感じる。
「なんだよ!俺がもう一度聞いたら新たな情報があるかもしれないじゃないか!」
「もう何度もやったよ!!!」
シーアは下を向きながら叫んだ。
肩を上げ、脚は震え、拳を握って、口をつむぎ……
俺が学校に入る仲裁をしてくれたことを思い出す。その時もこんなふうに顔をぐしゃぐしゃにしていたのだろうか。
「わ、わりぃ……」
俺は何を言えばいいのかわからなくなった。こんなときにフォローしてくれるマアカさんも、何もできずにいた。
静寂の時を破ったのはミライさんだった。
「あの、その『トム』ってどんな人なの?」
俺たちは次々と声を出した。
「……はい、マッチョで頼れる方です」
「……リーダーシップ豊富で」
「僕が今生きているのはトムさんのおかげと言ってもいいぐらいです」
少しずつ、声量が上がってくる。
「図鑑で見た『男』はあんな感じでした」
「あれこそ本当の『男』かもしれませんね」
「………トムさん、素敵な人だった」
「だれかさんと違って信頼できる人」
「だれかさんって…。」
「トムさん、しっかりしていますから、なんだかんだ無事でいらっしゃるかとー」
「そう言われると確かにそう思ってきた!」
「……トムさん、立派な人だった」
「だれかさんと違ってね♪」
「さっきからだれかさんだれかさんって、俺のことだろ!」
「ハハハハハ!海も頑張って『男』になってね」
「俺は生まれたときから『男』だ~~~!!!」
「なんだか賑やかになったわね」
ミライさんがうれしそうな顔をして俺たちを見た。
「さて、どうしますかこれから」
マアカさんがシーアに尋ねた。
「まず、本拠地に戻ってトムさんのテントから手がかりを探そう」
俺が返事をする。
「そうだね!」
その後、5人は橋を渡って、市街地をくぐって、噴水公園の奥の秘密の緑道に入っていった。
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「整理整頓がすばらしいですー!」
トムさんのテントに入ってすぐ、マアカさんがまず声をあげた。
「海と比べ物にならない。やっぱ大人だね~」
次にシーアがしゃべった。
(比べ物にならないってひどいなあ!)
「大人だからって整理整頓ができるって限りないわよ。お酒飲んでべろべろになる大人だっているのだがら」
付け足すようにミライさんが喋った。
「もしかしたら、トムさんは几帳面なのかもしれませんね」
シーアが俺の方を向いて、
「私、片付けもできない、いい加減な人とはお断りよー」
と言った。
(いつ、俺がお前と付き合うって言ったんだ)
「特にこれといった手がかりはありませんね」
マアカさんがトムさんの小物入れを見ながらしゃべった。
「ああ、これじゃあトムさんの消息がつかめない」
みんながしょげかけた、そのとき
「……あ」
テントの外にいた、かえでちゃんが何かを発見したらしい。
そこには靴の跡があった。
「……これ、トムさんの靴じゃない」
(かえでちゃん……。もしかしたら、探偵さんかな?)
「ちょっとまって、海の靴跡かもしれないよ」
「そうか?」
シーアが疑っているから俺は土の地面を強く蹴って、靴の跡をつけた。サイズは似ていたが、模様が違かった。俺の靴は波模様でいっぱいである。それに対して先ほどのは、模様は見られない。
「海さんの靴、どこで売っているのですか……」
マアカさんが引くのも分からなくもない。元の世界は、この世界より技術力が高いからだ。
「だとすると、あんたが眠っている最中に誰かここに来たってことだね。一人かなー」
「そうですね。一人誰かここに来たのでしょう」
するとマアカさんがじろっと俺を睨んできた。
「……海君、どうして気付かなかったのですか」
「え?」
続けてシーアがしゃべる。
「そーだよ!あんたが起きてさえいればこんなことに!」
「え……、それは……、眠くて……」
「まあまあ、いま怒っても何も現状は変わらないでしょ」
ミライさんが止めてくれた。
探偵シーアが推理する。手に顎を乗せて言う。
「とにかく、ここに誰か来て、その人が原因でトムさんがいなくなったことが分かった。あとはその人がどこにどうやってトムさんを運んだのかだ」
「あんな大柄の人、一人では運べないと思いますけど」
「だとしたら、何か説得して歩かせたとか……。海ならなんて言われたら、ついていっちゃう?」
「そうだね……俺なら、『可愛い坊や、お姉さんと一緒に遊ばな~い』かな?いや、『お兄ちゃん、あっちで遊ぼうよぅ!』かな?」
(あれーなんでみんな一歩下がったのー?冗談だよー!)
「トムさんはそんな卑猥な言葉で誘導されたりなんかしません」
マアカさんにきっぱりと言われた。
「じゃあ、一体?」
「そういえば、第四部隊で働きたいって言っていたような……」
「!」
「「それだっ!!!」」
俺とシーアの声がはもってしまった。
「あら、二人とも、仲がいいのね」
ミライさんが言った。俺は恥ずかしくなって赤面した。
「喧嘩するほど仲良しなんですよ」
(ちょ、マアカさん!余計なことを言わないで~!)
「で、第四部隊はどこにいるの?」
ミライさんの発言を聞いた瞬間、場が固まった。誰も答えることができなかったのだ。
「ミライさんは知っていますか?」
「いや、私そういうことはあまり詳しくないから。だいたいこっちの方向はまだ行ったことないの」
そう言ってミライさんは緑道のほうを指した。
(ミライさん、あなたは空から来たのですか)
「……あっ、だれか来た」
かえでちゃんがまた何かに気づいた。
崖の下からこっちに向かってくる者がいる。よく見たらあのモフモフの毛、あれは獣娘だ。
遠目で見ると大して違和感を感じない。むしろ愛らしいほうである。だが、よくよく考えると相当えげつない者である。なぜなら、耳が頭の上にはえて、手は微妙に形が違く、肉球らしきものがついている。尻尾の先まである、ふさふさの毛を見ると、二足歩行で動くぬいぐるみのようだった。
(さーて、あれはミケか、ヨケか、イツケか……なんて単純な名前……)
「はー、階段壊れちゃっていたのかニャー。ありゃ、みニャさん何しているのですかニャ?」
「えっと、ミ?ヨ?イツ?ム?ナナ?ヤ?ココノツ?トオ?」
「一体何を言っているのニャ?」
俺たちは必死に今の状況を説明した。あと、ここにいるのはミケであると分かった。これから積極的にくるのがうちっちにゃ!、と言っていた。
「ん~……。確かに前そんニャこと言っていたって聞いたけど、今いニャいことは知らないニャ~……」
「そうなんだ……」
「トムさんは大柄だから、町にくればすぐに目立つのにねー」
「だとしたらどっかの施設の中にいるとか?」
「あーそれなら可能性あるかも」
「もう一度行く?」
空はもう星空になっていた。ここで見える星空は何度見ても綺麗だった。
「……………やめとこっか」
シーアが空を見上げながら言った。
「海はご飯食べたらすぐに寝な。明日は早いよ!」
「うん、そうするよ」
すると、ミライさんが腕を組みながら言った。
「私、夜中でも探すよ。『トムさん』って男を」
「悪いですよ。私たちの問題なのにミライさんを巻き込むなんて」
マアカさんの言う通りだ。
「いいのいいの。そういうの私、得意だから」
「はあ」
かえでちゃんが寄り添ってきた。
「……海君、今晩一人で大丈夫?」
「え、まあ、うん、大丈夫だと思うよ、多分」
なぜかたじろぐ俺。そこにシーアとマアカさんが介入してきた。
「もしかしたら、どこかの人喰い民族にとらわれたとか!」
「あるいは、謎の研究機関に実験材料とされているのか」
「ちょっと!シーアもマアカもそんな恐ろしいこと言うなよ!」
「もしかしたら、今晩、海を襲うかも……!」
「ヒッ、ヒッーーー!」
「はっはっはっ!!!海ったら何怖がっているの?」
「そんなに心配なら私の家で泊まりますか?」
「いやいや、遠慮しとくよ!うん!」
「そんなに首を振らなくても……」
「あ、今晩はうちっちも一緒に泊まるから大丈夫ニャ!」
「へ?」 「はい?」 「なんだって?」
「だから、うちっちもここで寝るって……。」
「「「だめ~!!!」」」
シーアとマアカさん、かえでちゃんまでもが怖い顔をして叫んだ。
「そんなの危ないよ!もし襲ってきたらどうすんのよ!」
「襲うって誰がニャ?」
「海が!!!」
「なんで俺!?」
「だって欲情高ぶったら何をしでかすかわからないでしょ。あんたみたいな人間は!」
「俺そんなにすけべじゃないもん!」
すると、ミライさんが喋った。
「そんなに心配なら一緒に泊まればいいじゃない」
「あ」
ミライさんの言葉にみんな言葉が詰った。
「よ、よ~~~し!そうと決まればさっそく布団をここに持ってこよー!」
「はあ、なんでこんなに大掛かりなことに……」
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トムさんのテントの中、俺とマアカさんは話し合っていた。そばでシーアとかえでちゃん、ミケがスヤスヤ寝ている。
「あと数日したら、またダウンらが襲ってきます。それまでに早くトムさんを見つけないと」
マアカさんが、スケジュール帳を見せながら小声で言った。
整理整頓されたトムさんのテントの中は5人も人が入ることができた。
僕とマアカさんは、真ん中にあるランプを囲って、会議をしていた。
入った瞬間に、シーアとかえでちゃんは寝てしまった。それを見ていたミケも、最初は
「お二人ともそんなに寝るのが好きニャんだニャ~!ニャハハ!」
なんて言っていたが、数分もしないでグーグー寝てしまった。
マアカさんが不安そうな顔をしながら話してきた。
「ミライさん、一人で探しに行ってしまいましたけど、大丈夫でしょうか……まだトムさんの顔なんか知らないはずなのに」
「うん。やっぱり俺たちが探しにいかないと!」
「私たちの問題ですものね」
お互いの言い訳づくりのための子芝居をしてたかのような会話をして、俺たちは夜空の下でトムさんを探しに行くことを決意した。テントから出るとき、チラッとシーアの寝顔が見えた。
「……シーアたちどうする?」
「そっとしておきましょ。ミケさんもいることですし、大丈夫ですよ」
何を根拠で大丈夫なのか分からなかったが、俺とマアカさんは崖の上に行くための迂回ルートへ向かった。
住宅街は夜中近くのせいなのか、静寂な雰囲気を醸し出していた。
道を照らしているわずかな灯りだけが、頼りだった。
ずっと道沿いを歩くと、商店街まで着いた。ここらへんはミーナさんに宿で泊まらせてくれたときしか来たことがない。こうやって探検するのは、怪しまれないのか心配で、いままで訪れるのは遠慮していた。マアカさんの後ろ姿を見ながら、商店街を歩くのは、いままで経験したことのない体験だった。
商店街という名目だが、人がまったく見かけない。でも、住宅街よりは灯りの数が多かった。
「う~ん。どこにもいませんねー……」
マアカさんが歩みを遅くしながら言った。俺も辺りを見渡しているが、あのマッスルフォルムは見えなかった。
「トムさんもミライさんもどこに行ったのだろう」
「あ、あれ、ミライさん!?」
突然マアカさんが立ち止まったので、ぶつかりそうになった。マアカさんは商店街から横に外れた道を指した。そこにはミライさんの姿が一瞬映った。
「い、行こう!」
商店街の脇道を通ると、先ほどとは違い、ガヤガヤと音が聞こえてくるようになった。似たような建物が連なっていた。
(これは―――)
「居酒屋?」
「そうみたいですね。私もこんなところには初めて来ます」
(逆に何度も来てる17歳女の子を見てみたいものだ)
するとまた見たことがある姿の女性が目先を通った。
「あれ、やっぱりミライさんだよ」
ミライさんは一つのやけに明るい建物へ入って行った。やや周りより大きめの建物だった。やはり居酒屋である。
「早く中に、追いかけましょう」
「うん」
建物の中なのに通路があり、それも人が多くて狭くなっていた。俺が先頭になってずんずん入っていった。周りには酒臭い人でいっぱいだったが、俺はマアカさんをエスコートすることに夢中だった。
俺よりガタイがデカい人、声がうるさい人、めちゃくちゃ太った人、顔にあざができた人、明らかに酔っぱらっている人、さまざま人がいた。どうも若い人はいないようだった。ザ・おばあさんと言えるくらいの人がジョッキを片手に飲んでいるのも見た。
(うわ、ここは怖いなあ)
俺は脚がすくみそうになった。でも、向こうにいるミライさんは、何かに引き寄せられるように奥へと入っていく。
(急がなきゃ、見失ってしまう)
そう思った俺はとっさにマアカさんの手をつかんで、奥へと進んで行った。どんどん進む俺はなんだか勇ましく思えてきた。我ながらすごい行動ができていると感じる。
(さすが俺だな。やるときはやるんだ!)
感心しながら脚を前に出していた。すると、角を曲がったときにミライさんがすぐそこにいた。俺はすかさず呼び止めようとした。
「あ、ミライさ―――」
すっと後ろに引っ張られ、口をふさがれた。
(マ、マアカさん!?どうしたんですか!?)
ややバランスが崩れ、マアカさんに体を預ける形になってしまう。鼻腔にマアカさんの匂いが広がった。
「今少し、ミライさんの様子を見ましょ」
静かにのポーズをしながら、マアカさんが小さな声で言った。
気がつけば、マアカさんの胸が海の背中に当たっていた。マアカさんの胸は見た目は分からなかったが、触れると存在感が増していった。そして顔が近かった。狭く、やや暗い角のところで、マアカさんのきめ細かな肌が俺には輝いて見えた、少し、マアカさんの息がかかる。俺は超恥ずかしくなった。
それでも頑張って落ち着いて、ミライさんが入っていった部屋の中をのぞいた。
「あ、ト、トムさん!!!」
部屋の中には大柄で筋肉ムキムキ、短髪でブロンズ髪。あれは間違いなく「トムさん」だった。
トムさんの顔は赤くなっており、目元もキョロキョロして、体をグワングワンとまわしている。
(あ、あれは完全に)
「酔っているね」
「そうですね」
マアカさんはまだ俺を抱きしめたままだった。自分が結構大胆な行動をしていることを気づいていないようだった。
すると、トムさんの席にミライさんが近づいていくのを見えた。そして、
「デイビット、なぜあなたがここに?」
と言った。
「あん?誰だあんちゃんは?」
トムさんは完全に酔っぱらっていた。
「覚えてないの!私!沢田ミライ!」
「んー?会ったかなあ、そんな人?」
「デイビットお願い。私と日本に帰って、正しい家庭を築きましょう」
ミライさんはトムさんの腕をつかむ。しかし、トムさんは振りほどいて、
「さっきからデイビット、デイビットって誰のことだよ。俺はトムだけど」
と言った。
「トム?違うでしょ。あなたはどう見てもデイビットだよ。その声だって」
「人違いしているのは君の方じゃないのぉ?俺はトム・R・イータムだぞぉ~!」
頭をハードロックのように回し始めるトムさん。
「そんなことはいいから早く帰って!」
「さっきから何を言っているのか~!はあああぁ~!」
この様子を俺たちは見ていた。
「だめだ、全然、話がかみ合わってないよ」
「ミライさんがおっしゃっている『デイビット』って誰のことなのでしょう」
「とりあえず、トムさんを取り戻さない?酔っているぽいし」
「そうですね。とりあえず行きましょう」
「じゃ、じゃあまずこの腕を離して……」
「え?…………あ、すみませんずっと抱いていました」
マアカさんのハグから脱出したところで、俺たちはトムさんとミライさんのところに行った。
「あぁ?海?どうしてここが!?」
「あら!テントで待機してって言ったでしょ」
大人二人は驚いた顔に変わった。俺は二人に帰るように促す。
「トムさんとミライさんがどういった関係なのかは分かりませんが、とりあえず帰りましょうよ!」
「おい、海。一杯飲まねぇか?」
「う、遠慮させていただきます」
「う、うう。そうか。ああー酒を飲みすぎて気持ち悪い……」
となりでマアカさんが心配そうにしていた。もしくは始めて見る酔ったトムさんに戸惑っているのかもしれない。
「ト、トムさん……」
ミライさんは気を利かせて、冷水を持ってきて、トムさんに飲ませた。
「プハー。ありがとう」
マアカさんがトムさんのところに近づいて、
「トムさんはいったいなぜこんなところにいるのですか?」
と聞いた。
「それが、はっきりとは覚えてないのだが、
昨日の夜、テントから出て、空を眺めていたら、
『あの、あなたがうわさの男の人間ですよね』
と声をかけられて。その人についていった先が居酒屋で。
そこからワイワイおしゃべりしながらはしごをして今ここについたというわけ」
「はぁぁぁ。」
(俺も大人になったら、こんなことをしてしまうのだろうか)
と思うと、ため息をせざるを得なかった。
「ほら、言ったでしょ。世の中すべての大人がしっかり者とは限らないってね」
ミライさんが腰に手を添えながら、自慢げに言った。
トムさんはまともに歩けなかったため、俺と肩を組みながら歩いた。というか運んだ。少し、重かったので反対側をミライさんに支えてもらう。
俺たちが通ってきた通路をすぐそれたところに、広い通りがあった。そこはこの店の正式な入り口だった。通り際に、トムさんが
「よ、ごちそうさん!」
と軽く手を挙げながら言った。酒臭い息が俺にもろにかかる。鼻をつまみながらトムさんが話した先に向けると、そこにはボーイッシュな女性がいた。格好からして店員さんらしい。
「おう、お連れさんか?」
「ああ、こいつも一様『男』なんだぜ」
「えぇ~うっそ!」
(何か失礼!)
その女性は雰囲気のみならず、容姿まで、なぜかミーナさんと似ていた。俺は店から出たところで尋ねてみた。
「なんかミーナさんに似ていますね」
「ああ、だってお姉さんだもの」
「ええ!?ミーナさんの!」
「ミーナさんってお前『さん』付けかよ」
「あっ」
聞くと、昨日誘われた女性というのは、先ほどのミーナさんのお姉さんであることが分かった。そうやって積極的なところは、やはりミーナさんと似ていた。
よろよろしながら俺とミライさんはトムさんを運んだ。
暗い道には誰もいないため、どんなによろけてもぶつかることは無かった。ただ、何度も転びそうになった。
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迂回する道はやけに長く感じた。テントが見えてきた瞬間に俺の腕が悲鳴をあげた。
「はー……やっとついた」
俺とミライさんはテント近くの草原にトムさんを座らせた。すぐにトムさんは横になる。
「海さん、お疲れ様です」
先にテントの様子を見に行ってたマアカさんがやっていた。
「ほかのみんなは?」
「……それが皆さん、トムさんのテントで寝てしまって」
すると、トムさんが半目を開けながら、喋った。
「ハハ、そうか、じゃあ俺は外で寝るよ」
「大丈夫ですか?風邪ひいちゃいますよ」
「いいって、それよりも涼みたいからね」
「わ、分かりました……」
俺は第四部隊が作ってくれた会議用椅子(木製。例の階段を作ってもらった際に即席で作ってもらった)にトムさんを座らせた。
俺は心配しながら、自分のテントへと向かった。
後ろから声をかけられる。かけてきたのはマアカさんだった。ミライさんもいた。
「私はシーアさんといっしょにいます」
「じゃあ私も一緒にいるわ」
「ミ、ミライさんもですか?」
「ええ、そうだけど……。なにか都合が悪いことでも?」
「い、いえ、別に」
「そう」
「それでは、おやすみなさい海さん」
「ああ、おやすみ」
そう言って、俺は自分用のテントへ向かった。熱帯夜なのか辺りは暗くても暑かった。トムさんを運んだからかもしれないが。
すると、テントの中からゴーゴー音がした。
(なんか声がするな?)
俺は恐る恐る、ゆっくり自分のテントを開けてみた。
「ああ!」
そこにミケが無防備な姿で寝ていた。俺の枕によだれを垂らしながら。
「あ、おい、起きてよ!」
俺はミケのお腹のところをゆすった。しかし、ミケは一向に目覚めようとしない。寝言を言う余裕があるようだ。
「う~ん……今晩はオムライスニャ~。もうすこしで出来上がるからー」
「ねえ、起きてってば」
「ちょっと待ってて、トイレ先に行ってくるから」
「へ?」
「トトトイレ……。あ、あったあった」
悪い予感が走る。
「ちょ!!!起きろ!!!おい!!!はよ起きて!!!!!お願いします!!!」
(こんなところで、しょんべんを漏らすなんてごめんだ!しかもみんなから、
「あ~海ったら赤ちゃんみたい!」
「海さん……はしたないです」
「こんなんじゃ立派な大人にはなれないぞ!」
なあんて言われるかもしれない!いくら誤解だって叫んでも通用しないからなあ!!!)
「イッヒッヒー!ニャンニャニャン♪」
「ちょ、歌うな!起きて!あ~もう!」
どんなにゆすっても、起きる気配が見られない。
(ど、どうしよう。お、男、速本 海!勇気を振り絞るんだあ!)
俺はミケの体をお姫様だっこで持ち上げた。思ったより軽く、なぜか石鹸のような匂いがした。あと、モップみたいにもこもこしていた。しかし、それどころじゃない状況に陥っていた。
俺はすぐにテントから飛び出て、近くの森林の中へ走った。ここは俺やトムさんが何度か立ちションベンをしたことがある場所だった。
(奥へ!奥へ!誰にも見られない場所で!)
十分、奥まで来た時にミケの様子を確認した。
「うえー!地震だニャー!これじゃあ漏れちゃうニャ!」
ジタバタしだすミケを、そっと地面に置く。ミケの顔がどんどん怪訝な表現になっていく。
(ど、どうしよう!)
そこで、男・海は、目をつぶりながら
いや、完全につぶると見えないので、若干開けながら、
地面で横たわっているミケのズボンを脱がせ、
パ、パンティーも脱がせ、
(う、うわ…………)
ミケはあそこまで結構毛深くてモフモフだった。獣の擬人化というよりも、本当に獣そのものというのが相応しかった。
俺はミケの脚を開いた状態にさせた。
そうすれば、脚にかかることがないと思ったからだ。俺はミケからやや離れた。
すぐ間もなく、
「ハニャ~~~~~………………」
シーーーーーーーーーーー…………
おしっこをした。
木々の葉がちょうどミケがいるところに無く、月の光が差し込んでおり、まるで、神秘的な何かを見ているような絵面だった。
ただ、内容がミケの寝転びながらのションベンシーンだったので、少しシュールで、笑ってしまった。
笑っていると、やや黄色い液体はミケの足の付け根にかかっていた。
(やばいやばい)
とっさに俺はミケの足をあげた。
靴の中にはいるのは防いだ。
俺は月光に光る出来立てほやほやの水たまり(この場合おしっこ溜まり)の様子を見ていた。
「ニャ?ここはどこニャ?」
どうやらミケが目覚めたらしい。目をこすりながら辺りを見渡す。
「ニャ?ニャ?……………ニャー!!!!!何でズボン下ろしてるのだニャ!!!」
どうやらこの状況に気づいてしまったらしい。ズボンどころかパンティーまで降ろされ、その脚を俺に持ちあげられながら広げられている。ここまでの羞恥プレイはトラウマになっても仕方ない。でも、こっちも仕方がなかったと、無性に弁明したかった。
ミケはすぐに起き上がり、ズボンを戻しながら。
「か、海君………、まさか君が?」
と尋ねた。
(男・海、ここは正直に謝ろう)
俺はミケに向かって頭を下げた。いや、土下座した。
「すみませんでした!ミケさんが漏れそうだったので対処をしていました!」
「ニャ!?う、うちっちが言ったのか!?」
「はい、眠りながら『トイレトイレニャ~』と!」
「!!!!!」
見なくても、ミケの顔が燃えるほど真っ赤になったのがわかった。
でも、すぐに
「わ、わかったニャ……。海君を信じるニャ。うちっちこそお世話になりました」
あっけなく信じてもらったので、おれは驚いた。
「へ!?で、でも、こっちは勝手にズボンを下ろしたりなんかして……」
「でもうちっち、起きなかったんだよニャ。だったらしょうがないのニャ」
こんな状況なのに、ミケは笑ってくれた。なぜか俺も笑顔になってきた。
「ハハハ!」
「でも、今度は脚を濡らさないようにしてほしいニャ♪」
「二度目なんてこりごりですよ」
「それもそうだニャ」
「ハハハハハハハ!!!」
二人で笑った。弁明しても聞く耳すら持たない、赤い髪の子と違って、ミケはすぐに聞き入れてくれたのでうれしかった。
(よかった!ミケはすぐに信じてくれた!これで一件落着!)
ガザッ(葉のこすれる音)
「海?」
森林の俺たちが来た方から、声が聞こえた。俺たちはとっさに振り返った。
そこに、赤い髪の子、シーアが立っていた。
「げっ、シーア!どうしてここに?」
「げって、あんたこそ、こんな時間になんでここに?え、ミケちゃん?」
シーアが状況を整理する。
海とミケちゃんが山奥にいること
近くに水たまりらしきものがあること
若干濡れているミケちゃんの脚
息が荒い二人
真夜中
ピコーン
「さては、あんた、ミケちゃんと、やらしいことを!!!」
「ご、誤解だってば!」
「そうだニャ!落ち着いてニャ!」
「落ち着いてなんか……………
いられるかーーーーーーーーーー!!!!!」
「うわぁぁぁ!!!」
(なんで自分はこうもついていないのだろうか)
と走り逃げながら思う海であった。
「たすけて~!!!」
叫び声が、月が輝く夜空に響き渡った。
た、たぶん誰も見てないから、エッチ成分あってもいいよね……。
と思いながら今回書いたが、正直いらなかったのかもしれない。
もし、読者の立場なら、
そんな見え見えなサービスシーンはいらないから、はやくハントしろよ!
と怒るだろう。(まあ、心の中で止めておくが……)
次回はどこまで書けるのだろうか。
伏線回収なんて忘れていると思うが……。




