忍び寄る影
シエスカが図書館で騒いでいる頃。台風は消え、バラバラになった雲が再び学園上空で雨雲となって雨を降らせ始めた。そんな中、作戦室では英国戦艦プリンス・オブ・ウェールズの接近に対し緊迫した空気が部屋全体を覆っていた。
プリンス・オブ・ウェールズは二次大戦の序盤にて海軍航空隊が仕留めたイギリスの新鋭戦艦である。が、この世界では序盤で仕留めきれず今直、悠々と異世界の海をさまよっていた。
目撃情報は前々から繰り出された偵察機や観測機によって報告されているが、その全てが悉く撃墜され今やその正確な位置情報は曖昧な物となっていた。
「閣下、先日の報告によりますとプリンス・オブ・ウェールズは新たに戦艦二隻を加えて一路、西に向けて進路を取って居るとの事です」
西に行けば、海を挟んだ隣国カウスレア連邦帝国が存在している。現在は水面下での戦闘が勃発しているらしいが報道らしい報道は今の所一切無かった。
噂によれば時より起こる超常現象はカウスレアが起こしていると言われているが真相は未だに闇の中。確かめる術はあるはずもなく、噂だけが無駄に膨張してゆき最終的には都市伝説として語り継がれるのだろう。
がが、台風の一件はストライトブルーが起こしていると見て間違いないと言うのが作戦室一同の見解だ。現在、ストライトブルーも航空隊と潜水艦が後を追っている。
「相変わらず写真がブレてるな……もう少し正確な写真はよこせんのか?」
「申し訳ありません。彼らだって必死なのです。大目に見てやってください」
山本長官が手にした一枚の写真は対象が大きくブレた白黒の写真だった。大きな影が三つと小さな影が五つかそれ以上映っている。艦隊であるのは確かなようだ。
「そう言えばシエスカが打ち上げた「はやぶさ」とか言う人工衛星はどうした? 敵艦船追撃に使えんのか?」
「あれは小惑星探査機です。何故か知りませんが現在、この惑星を抜けて別の銀河目指して宇宙をさまよっています」
「コントロールできているのか?」
「多分、疾の昔に忘れているのではありませんか?」
一人の制服組が指摘した小惑星探査機「はやぶさ」は、他の者が指摘したとおり、コントロールされないまま何処か遠い宇宙へ向かって旅立っていた。出会いを求めて「はやぶさ」は今も宇宙を遊弋しているのだ。
「全く、暢気な物だな」
一人の参謀が気を落とした丁度その時。偵察に入った伊号潜水艦よりある報告が入った。電文を通信兵が読み上げた時、作戦室は再び緊迫した空気に覆われた。
「伝令! 発、第一号海防艦。宛GF司令長官。ワレ、敵艦隊ト遭遇セリ……」




