スーシャの勘
「シエスカさん、こんな時に何処へ行って居たんですか!?」
部屋へ戻ると、其処には心配そうに此方を見つめるシャールと見知らぬ少女が一人、私のベットの上に座って居た。見知らぬ少女はずっと、下を見つめていた。
「シャール? その娘は?」
「忘れたんですか? シエスカさん、彼女は同じクラスのスーシャさんです!」
スーシャと呼ばれた彼女は此方に振り向き小さく頷いた。宜しくの合図だろう。
「え、えぇ。宜しく」
「にしてもシエスカさんが覚えていないなんて思いもしませんでしたよ。入学してからもう五ヶ月は立ってると思いますよ?」
「そ、そうね」
一応、顔だけは何となく分かるのだ。しかしまだ入学してから五ヶ月余り。クラス全員の名前は意識でもしないと早々覚えられるような物でもない。それに、つい先ほどまで私は嵐の中に身を置いて居たのだ。
「それでは私はこれで……あっ、そうでした。シエスカさん」
「はい?」
「もう直ぐ……台風が来ますよ」
「……へ?」
「お邪魔しました……」
「はーい、またねー」
友達同士なのか、シャールは軽い口調で部屋を出るスーシャを見送った。部屋を出るのを確認した後、私は不意に空を見上げてみたが、其処は一面の青空。雲一つもない快晴だった。
「ねぇ、シャール。彼女は気象予報士さんか何かなの?」
「予報士? そんな職業はありませんよ?」
「あぁ、違う違う。彼女……スーシャは天気を予測できる力を持っているのかって事」
「いえいえ、スーシャさんの能力は『先の物を持ってくる・引っ張ってくる』能力ですよ?」
私はこの天気がまた嵐になるなんてとても考えれそうになかった。が、考えてもキリがないので一旦、私はベットの上に転がって一息つく事にした。しかし、丁度その頃。一階の作戦室で衝撃的なニュースが部屋全体に伝わった。
「長官! L諸島周辺海域に巨大な台風が発生しました!」
「……規模は?」
「ハッ! 情報によりますと、1944年12月に発生したコブラ台風よりも活発且つ巨大な物で瞬間最大風速は300kmにも及びます!」
300km。それは恐らく史上最大級の台風であろう。一時間の降水量820mmにも及ぶ。海軍はこの台風の情報を得るべく、観測機を派遣したが台風の目に向かえば向かうほど強力な風力と引力に引きずり込まれ全て消息を絶ってしまった。
「至急、L諸島に展開する艦艇は全て湾外へ出航。付近を離脱せよ」
「了解!」
「L諸島の到達予想時刻は?」
「ハッ……翌日の14(ヒトヨン):23(フタサン)頃かと」
「間に合うか?」
「はい、今からなら……」
「報告……よろしいでしょうか?」
「……読んでくれ」
L諸島へ向かう前艦艇に退避、もしくは撤退命令が出る中。一人の通信兵が思わぬ伝聞を読み上げた。
「発、第二艦隊。宛テGF指令長官。ワレ、暴風域ニ侵入ス……以上です!」
その瞬間、作戦室全体に緊張が走った。




