L諸島
「無事に渦潮を突破しました……」
「観測機より報告ッ! 渦潮、先ほどより勢力を弱めています!」
多くの艦を飲み込んだ巨大な渦潮はゆっくりとその勢いを弱めた。その様子を観測機が高い高度から見守る。
「現在、損傷が激しい足柄を曳航しにやってきた山雲、朝雲が作業に辺り、白雲は周囲の監視任務についています」
「同様に現場海域に向かっていた第三艦隊は引き返し、突如として出現した謎の航空機部隊も姿を消しました」
この日、シエスカが繰り出した対艦装備の攻撃機は百五十機以上に上り、撃墜数はその二割程度であった。一方で渦潮に巻き込まれた攻撃機も少なくはない。約10機弱が出現時の引力によって引きずり込まれている。発生原因は以前として不明なままだ。
「この世界は飛龍も飛び交う非現実的な世界だ。何処かに渦潮を起こしうる強大な魔法を扱う賢者が居るかも知れん」
「となれば……」
「召喚魔法以外に有り得ません。そんな魔法は聞いた事もありません」
「そもそも魔法すら、この目で見た事が有りません!」
飛龍とはドラゴンの事である。頭のお堅い彼ら軍人にとって、魔法と言う存在は容易に受け入れがたい存在でもあった。
「そう言えば『大和』は今、どうしている?」
英上陸支援艦隊撃滅の任を負って出撃した戦艦大和は、他の艦艇を引きつれ現在も航行中であった。だが、今回ばかりは直接敵艦艇に向けて46cm三連装砲を放つ事はなかった。その爆風は付近に居た人間をも殺めるほどの威力だ。
「大和は現在、英上陸支援艦隊に攻撃を加えるべく秋月型駆逐艦の直衛を受けて出撃しましたがその機会を得る事は出来ませんでした。現在、学園付近に点在する秘密基地を経由して根拠地『ラブリスカリー諸島』を目指して北進しています」
帝国海軍根拠地「ラブリスカリー諸島」。有人島は無く、大小20ほどの島からなるこの環礁はかつてのトラック諸島を彷彿とさせる何かを秘めている。規模もトラック諸島より広く其処に大きな工廠、飛行場、司令部などが設置された。
同諸島は再び軍部が王都から許可を得て取得した最大の領地である。なお、入手方法は極秘扱いとされ、海軍はこの諸島を通称、「L諸島」と呼んでいる。
「『L諸島』周辺に敵影は?」
「索敵用の観測機、潜水艦から共に報告はありません」
「そうか」
大和はこのL諸島を目指し、秋月型と共に北へ進路を取った。だが、その進路上には思わぬ敵が密かにその牙を研いでいた。が、作戦室に居る全員に知る余地はない。
最近、シエスカの出番が少なくなっているような気がするのは気のせいだろうか……。




