ノイズ
「戦況は以前として我々が不利です!」
「空母艦載機はまだか!」
「発艦した攻撃隊と連絡が取れません!」
「何!? 何時からだ!」
確かに、駆逐艦艦長が通信主の通信機を耳に当てた時、そこから流れていたのは砂嵐のような雑音のみだった。いや、雑音だ。
「敵の反撃が始まった頃からずっとこの状態です」
「何故もっと早くに言わん!」
「私は聞こえなくなっていた時から艦長をお呼びしておりました!」
「何……!?」
乱戦の中、彼は使えなくなった通信機を置き艦橋を目指して駆け上がっていた。だが、船内は慌しく動き回る乗組員で封鎖され思うように行動が取れなかったのである。
やっとの思いで艦橋に登っても艦長は戦闘の指揮を取り、他の者も操舵や観測などで対応困難。また、大声を出しても主砲の炸裂音でかき消されるだけだった。
「被弾ッ! 被弾ッーーー!」
煙突の近くでF-2の放った誘導ミサイルが炸裂。艦橋後方で大きな火柱が立ち、艦内に煙が立ち篭り始めた。
このままでは有毒ガスによって呼吸困難に陥ってしまう。
「こちらソナー。海流が入り乱れ敵を捕捉できません。もう少し速度を落としてもらえませんか?」
通信機だけではない。
敵潜水艦を見つける対潜ソナーも入り乱れた海流によって使い物にならなくなっていたのだ。だが、今船の速度を落とせば敵の良い標的になる。
艦長も航海長もその事を良く理解していた。
「速度は落とせん! だが何とかて敵潜水艦の音を拾い上げろ! 聞き慣れない音があったら直ぐに報告しろ!」
「了解!」
次の瞬間、報告のあったソナー室が爆発。中に居た乗員は全て戦死した。
原因は駆逐艦白雲の雷撃であった。
この時、白雲は以前として交戦を続ける敵本体に対して魚雷を四本放ったが、偶然にも本艦のソナーに直撃。これにより英駆逐艦カルトゥームは速力と耳を失った。
「……総員退艦せよ」
「総員退艦ッ!」
黒煙に包まれた艦橋で艦長は退艦命令を出した。乗組員達は砲弾とミサイルの雨に晒されながらも必死に艦内に装備された救命ボートを下ろし乗り込んだ。
乗れなかった者は海へ飛び込み、浮かんでいる丸太などにしがみついた。
艦長が退艦しようとした丁度その時。
英駆逐艦カルトゥームは最後の大爆発を起こした。
原因は不明だが、危機一髪艦長の命は助かり数分後カムトゥールは海の底へ沈んだ。
「お、おい! 海面がおかしいぞ!」
「何だと!?」
だがカムトゥール沈没後、その現場海域には大きな渦潮が発生。近く居たボートは全て飲み込まれ、救難に駆けつけた駆逐艦ヤーロウも巻き込まれた。
ヤーロウ沈没後、渦潮は勢力を増しついには戦闘海域全体を覆うようになった。
ブラックホールに飲み込まれていくように、周囲に居た軍艦は全て吸引力に抗えず飲み込まれていった。




