特定
『第2波被雷まで残り5分弱ッ!』
『海面を打てッ! これ以上被雷させるなッ!』
付近に他の護衛艦が居ない中、「あしがら」は必死にその主砲62口径5インチ単装砲が火を吹いた。海面に次々と弾着してゆき到達までの間、計3発の魚雷を迎撃する。だが残りの3本は真っ直ぐ船体に向かって突き進んだ。
『被雷、被雷、被雷ッ! 左舷船体に3本命中! ダメコン被害状況を知らせッ!』
先の被雷よりも黒煙が多く上がり艦内は炎に包まれた。大きく開いた穴からは大量の海水が流れ込み隔壁閉鎖が間に合わない。ミサイル護衛艦「あしがら」が燃え行く中、ようやく問題の潜水艦に対して護衛艦から対潜ミサイルが放たれた。アスロックだ。
『前甲板VLS発射ッ! 目標に対して飛翔中ッ!』
『こちら「あさひ」、本艦も敵潜水艦に対しアスロックを発射する』
「たかなみ」、「あさひ」僚艦の対潜ミサイルアスロックが今着水した。敵潜水艦の近くでパラシュートを開きゆっくりと降下。海面に着水するや否や敵潜水艦に向けて速度を上げ真っ直ぐ突っ込んでいく。丁度その頃、「いせ」から発艦した対潜ヘリコプターが現場海域に到着し別の敵潜水艦に対して爆雷攻撃を行った。敵潜水艦は一隻だけではなかった。
『着弾、着弾、着弾ッ! 敵潜水艦の破裂音を確認ッ! 海面下で爆発音多数ッ!』
『こちら「カモメ」、海面に敵潜水艦と思しき浮遊物を確認した』
ほぼ当時に敵潜水艦2隻を撃沈もしくは大破させた。海面下の爆発音がそれを物語っている。だが潜水艦は潜航した状態で海底に沈んだため、形状、国籍は不明のままであった。結局「あしがら」を攻撃した潜水艦は国籍不明潜水艦として片付けられ第2護衛隊郡は引き続き対潜警戒を厳にした。
が、数十分後別の潜水艦が立て続けに護衛艦「おおなみ」を狙って魚雷を放った。不意打ちである。
『こちら護衛艦「おおなみ」、敵潜水艦と思しき物から魚雷攻撃を受けつつありッ! 魚雷数3、本艦に向けて接近ッ!』
不意をつかれた「おおなみ」は「あしがら」同様、主砲の54口径127mm単装速射砲での迎撃を試みた。迎撃の結果3本中2本を寸前のところで撃破し残りの1本も命中ギリギリで回避に成功。「おおなみ」は難を逃れた。
『こちら「カモメ」、敵潜水艦と思われる音源を探知。艦隊より西方向、音源からしてロシアの潜水艦と思われます』
「キタッ!」
ようやく敵の正体を掴んだ私は急ぎ足で敵潜水艦の撃沈を命じた。命じてから5分後、現場海域にまたしてもアスロックが放たれロシアの潜水艦と思しき物体は発見されたことを察し潜航を始めた。深く深く潜った。
『敵潜、潜航しつつありッ! スクリュー音遠ざかります』
潜航しながら現場海域を去ろうとする敵潜水艦。それを追おうとパラシュートを開き海面に着水した対潜ミサイルアスロック。両者の接触まで残り8分弱。
『アスロック、目標に向かって突進中ッ!』
『潜航ッ! 潜航ッ! 潜航ッ!』
8分後、神業とも言える操舵により計2本のアスロックを回避した敵潜水艦。だが残りの2発が逃げ惑う敵潜水艦を仕留めた。1本はスクリューに命中しもう1本は右舷の船体間近で炸裂。艦内には海水が流れ込み敵潜水艦はあっけなく爆沈した。と同時にスクリュー音から敵潜水艦の特定に成功した。
『先ほど撃沈した敵潜水艦はロシアのキロ級と思われる。次の指示をどうぞ』
キロ級潜水艦。56隻も建造され使用国はロシア、インド、イラン、ポーランド、ルーマニア、アルジェリア、ベトナム、そして中国だ。
今まで第2護衛隊郡に雷撃してきたのはキロ級なのだろうか。そして誰が裏でキロ級を操っているのだろうか。謎は深まるばかりだった。




