屋上へ
「な、何ですか!?」
さきほど出て来たばかりの教室が綺麗さっぱりと消え去っていた。そう、ぽっかりとその場だけが無くなっている。
「危なかった……あれは上位魔法の一つ「削除魔法」。さっきのはそのうちの一つだと思って良いわ」
「何そのチート臭い魔法は」
そのうちの一つと言う事はほかにも似たような奴がうじゃうじゃと居る。さらにそこから大小などの規模設定や発動する速度、爆発の威力などが細かく分類されているだろう。全てを使いこなす人間は恐らく少ないと私は見た。
「あれは本当に流れ弾だったのかしら……」
「……?」
ミナミさんの呟くような一言に少し疑問を感じたが屋上はこの階段を上がって直ぐの所にある。通常、屋上のドアは専用のキーもしくはマスタキーが必要なのだが今は非常時。此処は強行突破で突っ切るしかない。
「召喚ッ!」
ドアの前にたどり着いた私は先頭に出て召喚魔法を発動。その後少し距離を取って召喚したロケットランチャーを一発ぶちかました。ドアは吹き飛び白煙が屋上を舞った。
「つ、着いた!」
「屋上……初めて来ました……」
一緒に来た内気な女子のクラスメイトが呟くように言った。私は一度来た事があり、その時も戦闘の最中。未だに続いている戦争の幕開けになったあの日の事だ。あの日は空をドラゴンが悠々と飛んでいたが今は確認出来ない。
「体育館は……あれね」
ミナミさんに連れられるように私も体育館と思しき建物に振り向いた。円形状の巨大な建物から白煙が数箇所上がっている。もう落ちたと思って良い。
「やっぱり……遅かったか」
「何で体育館から煙が……」
「占領されたのよ、良く分からない武装集団に」
周囲を見渡すと色々な場所から黒煙と白煙が上がっている。黒煙はきっと最悪な状況に陥っているはずだ。男子側の闘技場は真っ黒で何も見えない。火災も起こっているようで未だに爆発音が続いている。上空には見覚えの無い戦闘機が対地攻撃に専念し、玄間と思しき場所には数名が倒れている。
「食堂からも煙が出ているよ!」
「まるで激戦区ね」
「唯一無事なのは屋上だけのようね……」
激戦区じゃあない、これはもう軽い紛争だ。各所で攻撃系魔法あるいは回復系魔法が発動しあい魔法陣が地面を埋め尽くしている。こんな光景は見た事がない。
「これってさ……死者とかは出ていないよね」
「大丈夫、みんな軽い魔法だから死者は今の所出ていないわ。最も削除魔法みたいな物が何発も放たれたら話は別だけど」
それはそれで地獄絵図である。ともかくこの最悪とも言える戦況を何とかしてひっくり返さなければなるまい。
「保健室もやられているみたい……怪我人は本当に大丈夫なの!?」
「そんなの私が知るわけないでしょ」
見捨てるように言い放ったミナミさんはしばらくの間沈黙した。さて、どうしようか。このまま絨毯爆撃のように辺り一面を火の海にしても良いのだけど……。
「さすがに関係のない人も巻き込むのは……ね」
「……シエスカさん?」
だけど私には考えがある。
「ミナミさん、ナビゲーターをお願いできますか?」
「ナビゲーター?」
出来るだけ派手に、そして相手の腰を抜かすような大作戦。
「……別に良いわよ、索敵魔法を……使えば良いんでしょ?」
「お願いします」
決行するのは今だ。
「今から作戦名「G」の下準備を始めます! 皆さんの協力をお願いします!」
作戦名「G」の概要を聞いた六人はそれぞれの持ち場に着いた。重い空気の中、ミナミさんが索敵魔法を発動させシャールは急いで敵の魔法を鑑定する。見張りや特定班も準備が終り作戦は秒読み段階に入った。が、まだ部隊の展開は間に合わずに居た。
『こちらグレイ・アイ、作戦空域に入った』
「了解、グレイ・アイは各種レーダーの点検を行え」
『こちらグレイ・アイ、了解。レーダーの点検に入る。オーバー』
学園の上空に早期警戒機が召喚された。コイツのコードネームは灰色の目、グレイ・アイだ。深い意味は特に無い。グレイ・アイは学園の各所に召喚された無人攻撃機の誘導役として配備され今はその無人攻撃機とのコンタクトを待っている所だ。
『コンタクトッ! プレイヤー1、プレイヤー2、プレイヤー3、プレイヤー4、プレイヤー5共に展開。間もなく戦闘準備に入ります、オーバー』
「確認しましたー、オーバー。今から誘導役に主要なデーターを直接送信してちょうだいオーバー」
『了解、データーを送信します、オーバー』
「……!?」
誘導役……それは先ほどの内気な女の子の事でこの作戦は彼女の精密性に掛かっていると言っても過言ではない。
「……どう? 行けそう?」
「は……はい。確かにいただきました……でも、情報が膨大過ぎますッ!」
突拍子もない作戦「G」。作戦概要は内気な女の子と兵器のシステムが魔法と技術によってリンクしミナミさんの的確な指示の下、直接敵首脳部を攻撃する……と言う物。使用する兵器は幹部と思しき人物には無人攻撃機を、そして武装集団を指揮する張本人には海上に展開するイージス艦からのミサイル攻撃でこれを仕留める。




