能力測定
小川さんとの会談を終えてから大体三日が立った。既に夏休みは終わっていて今は基礎能力測定なる物を受けている。この日は各自持てる最大限の魔法や能力を出し切り、先生達が夏休み以前と比較し今後の能力系授業の参考にするらしい。
「シャールット・エヴァさん」
「は……はいッ! 能力は……【鑑定】でお願いします」
「分かりました」
あまり意味はないと思うけどこの測定、男女それぞれで別れて行っている。闘技場は一応二つ存在していて今私達女子が居るのは小さい方の闘技場。男子の方が何時も使っているお馴染みの闘技場となっている。
ーガッシャァン!
「キャァ!」
「な、何!?」
「男子の方からよ!」
振り向いてみると黒煙を上げた闘技場の姿があった。数秒後、今度は10回ほど大きな爆発音が起こり爆風のような風が少しだけ吹いた。少しだけ焦げ臭い。
「空を見て! 何か飛んでいるわ!」
一人の女子が大空を指差し、私も連れられて空を見上げた。何時も通りの雲ひとつない快晴、だけどポツポツと黒い点が漂っている。その黒点の間を縫うように何かが確かに飛んでいた。
でもその物体……何処かで見た事であるような……。あれ? でも何でプロペラが真後ろについていんだろう……。
ー男子側闘技場ー
『此方「ツバメ1」から軽巡手取へ。砲撃修正指示、目標は9時方向……』
その真後ろにプロペラが付いた不思議な戦闘機は今や観測機として青い空を舞っている。そのモデルは旧日本海軍が試作した局地戦闘機『震電』と思われ、速度は早く最大高度も迎撃機用として高く設定されている。
この機体は小川にとって未完成とされていた最新鋭機の一つである。先の能力大会(奇想の艦隊を参照)では設計段階に入ったもののptが足りず時代が過ぎてしまいそのままお蔵入りになっていた。だが今は観測用として採用されている。
『了解! これより砲塔を9時の方向へ向ける。聞いたな! 砲塔を9時に回せ!』
地上で目標に向かい砲撃を敢行しているのは先の能力大会を生き延びた艦艇達。今や旧式となりかけては居るものの貴重な戦力として温存されている。
この黒部型航空軽巡洋艦もその内の一種類である。
「しばらく放って置いたせいか精度があまり良くないね。そろそろ新型艦の設計を行う必要があるかも知れないね」
目標に目掛けて艦砲射撃を行う黒部型の三番艦「手取」を観ながら呟いた。異世界に適した水上戦闘艦など想像すら出来ない……が、小川には今までの経験から若干の自信はあった。
『此方ツバメ1、八雲の命中弾3発。修正射撃の要あり!』
『此方八雲、了解した! 修正誤差プラス3!』
後部に飛行甲板を備えた旧型戦艦「八雲」は浅間型高速戦艦の改装艦で、この浅間型高速戦艦は小川が一番最初に設計した老朽戦艦である。速力は未だに健在ではあるが手取と同じくずっと放置していたため老朽化が進んだ。
付け加えるとこの浅間型、八雲型は小川が一番最初に設計を施した艦種であり初期段階で建造されたにも関わらず出撃回数にはあまり恵まれなかった。
『撃ち方始めッ!』
古参と言いつつもしっかりと射撃はでき、つい最近照準装置を新たに改良し精度は良くなった方である。今回の修正射撃は4発全弾が目標に命中した。
ー女子側闘技場ー
「あぁもぅ! さっきからバンバンと! 集中できないじゃなーい!」
後ろに控えていたポニーテールの女子が頭を抱えながら叫んだ。確かにちょっとうるさいかも知れない。爆風が後ろから吹き荒れている。
「もっと熱くなれよぉぉぉぉ!」
「熱いって! 熱いって! 熱いって!」
何処かで聞いた事のあるような声が男子側の闘技場から聞こえてきた。此方側の闘技場も少し気温が上がったような気がする。闘技場を見るとそこには爆音と共に大きな火柱が立っていた。熱さの原因はこれか。
「今日から君も富士山だ!」
途端にその火柱の勢いが増し、グーンと伸びた。気のせいかその火柱は雲を貫通して雲は蒸発しているように見える。とんでもない火力だ。
「皆さん、あの火柱は無視してください。では次にシエスカ・エーレットさん、準備をお願いします」
「へ……? は、はい。分かりました」
無視ってレベルじゃあないような気もするが、私は先生に言われた通りその火柱を見なかった事にした。でも熱気は必要以上に感じ取って何故かやる気が心の奥から突然やってきた。
「頑張れ、頑張れ! 出来る出来る出来る! お米食べろ! シジミ食べろ!」
聞き覚えのある声だったが今の私は何時も以上にやる気になった。と同時にホカホカのご飯とシジミの味噌汁が脳裏を横切った。そう言えば最近、日本食らしい日本食を食べて居ないような気がする……って私は一体何を考えて居るんだ。
通称「ツバメ1」、小川が設計した最新鋭局地戦闘機。現在は観測用として用いられモデルは震電。詳細な資料は後程。
通称「熱いテニス選手」、この世界には存在しないはずのテニスだが不思議と共鳴してしまった男子生徒のあだ名。彼が言葉を発すると気温が最低10度上がる。




