小川の理想。その一。
数日後、私はとある部屋の前に立っている。此処は学園の男子寮。私とシャールが居る女子寮の隣に位置していて棟の数は2棟。女子寮も同様に2棟あるがペンキの色は男子が青で女子がピンクとなっている。若干、女子寮が遠くから見て目立っている。
「失礼しまーす……」
ノックを軽くした後、私は部屋に入った。
「どうぞ」
まず目に入ったのは色んな物が散乱している机。沢山の紙が無造作に積み重ねられていて隣に鉛筆が適当に置かれている。目の前には向こうの世界から持ってきたと思われる中古のようなパソコン。本棚には海上自衛隊や旧海軍に関わる物がびっしりと詰まっている。
「汚い部屋で悪いね」
汚い部屋とっ言うが机意外はいたって普通で埃は見られないそこそこ綺麗な部屋だ。
「いえいえ……」
「今椅子を出すから少し待ってね」
そう言って小川さんはクローゼットの中から折りたたみ式の椅子を取り出した。これも向こうの世界から持ち出したのだろうか。学校にありそうな普通の椅子である。
「どうぞ」
「あっ……すみません」
私は設置されたその椅子に座り、小川さんは座るのを確認すると本題に入った。
「じゃあ早速、君に見てもらいたい物があるんだけど……いいかな?」
いいともッ! と答えるべきなのだろうか。
「はい……お構いなく……」
少し控えめに言った後、小川さんから一枚の紙を手渡された。
「これは?」
「ソレが今回、君に提案する新型ステルス戦闘艦だよ」
変わった船首に平らな甲板。砲らしき物は一切なく軍艦特有のゴツゴツ感もない。さらにアンテナやマスト、ヘリポートすらも無い。
「潜水艦ですか?」
「見えなくも無い……かな? 実は武装は全部、船内に収まっているんだよ」
収まっている?
「そうだね……主砲は艦首と艦内に収納されていて砲塔もステルス化されているよ。ミサイルや魚雷も艦内から発射して後部甲板は無人機の発着艦用。マストは極端に小さくしてその中にレーダー類がみっしりと詰まっているんだ」
なにそのバケモノ。
「更に言うと無人機は最新鋭の物を使用してステルス性は勿論、配慮されている。煙突はなくて自力でエネルギーを生み出して航行するよ。その最大速力は最低でも80km。それぐらいは出して欲しいね」
「でもでも、そんなバケモノ。本当に完成するのかな?」
「勿論。僕の能力は軍艦を生み出す能力だからね。架空艦なんて朝飯前さ」
余裕そうに言う辺り彼はそれなりの確信を持っているのだろう。また、量産性も視野に入れ彼曰く無駄のないデザインに仕上がったのだとか。
「ところで軍艦てっ普通は海の上を走るんだよね?」
素朴な質問を小川さんにぶつけた。
「そうだよ」
「このイラストを見る限りだと、まるで空を飛んでいるような感じなんだけど……」
「そうだね。これは元々宙に浮く前提で書いているからね。そう見えて当然さ」
えっ? これ、空を飛ぶの?
「勿論さ。空を飛ぶばかりか、その気になれば海の中だって潜れるよ」
唖然とする私は褒め言葉としてこう言い放った。
「バケモノめ」
「ハハッ……よく言われるよ」
自覚はあるのか……と思いつつ私はそのイラストを見下ろした。
今回はちょっと短いかも……。




