第二陣
耳を劈ような音が鳴り響く中、私は第二陣に攻撃命令を出した。出したと言っても、直接二陣に伝えたわけではない。この戦闘を間近で観戦している竹富さんに手伝ってもらった。手持ちのスマホに各陣営のアドレスを戦闘開始前に記載していて、送信の合図は私が大きく手を振った時。そして、今。私は第二陣に対して出撃命令を出した。竹富さんに分かるように、大きく手を振って。
「送信っと……後は待つだけだね」
竹富さんはOKサインを出した。送信完了の合図だ。私は続けて10式を増援のため2両召喚し、2両は前進した直後、急停車。停車したのとほぼ同時ぐらいに第一射を放った。この第一射は二人の先生に直撃し相手に重症を負わせた。
「クッ……そこかッ! フレイムストームッ!」
被弾し、辛うじて立てる状態にあった一人の男性教師は発砲した増援の10式一両に向かって、全身全霊の一撃を放った。嵐のような炎の風は真っ直ぐ規模を拡大させながら発砲した10式に向かって突き進む。だが、10式はその機動性を持ってこれを回避。その場でドリフトをした後、続けざまに2発発砲した。2発のうち1発は至近弾。もう1発は命中。
「ぐわぁぁぁぁぁ!」
炎の魔法を放った男性教師はあっけなく退場した。残り5人。うち一人重傷。
『だんちゃーーーーーくッ! 今ッ!』
闘技場全体に突然、空から送られたプレゼントが多数弾着する。リズム良く続けざまに弾着した砲弾は割りと正確で半数は至近弾。惜しかった。
『各車、射角調整終り次第、砲撃開始ッ! 撃てッ!』
竹富さんが送信してから5分ほど立ち、現在。闘技場へ無差別的に砲弾の雨が降り注ぐ。第二陣が攻撃を始めたのだ。第二陣の陣容は主に自走砲で構成され、中にはポンポン砲ちゃん……もとい、多連装ロケット砲のMLRSが二か三両ほど混じっている。
なので、実質的に砲弾とロケットの雨が容赦なく闘技場に降り注ぐ事になる。上空にはアパッチ・ロングボウが。地上は10式が。そして後方には自走砲の99式自走155mm榴弾砲と多連装ロケット砲。一応、このほかにも戦力はあるが、魔法のみの異世界相手には正直充分だと思う。
戦況は圧倒的有利。損害は皆無で、相手は一人重傷、退場三人。健在はたったの四人だ。だが、私にとって魔法はまだ、未知の領域らしい。
「……ブレイカーダウン」
誰かが静かにそう呟いた。10式はエンストし、ドリフト中の車両は急停止。危うく闘技場の壁に突っ込む寸前で停車した。ありとあらゆる電子回路は狂かれ、上空を一心不乱なく飛んでいたアパッチのプロペラが白い煙を出して止まる。と、同時にエンジン停止。後方で射撃支援を行っていた各車両にも電子関連での問題が発生し砲撃中止に追い込まれた。
作戦中止。
その言葉が脳裏に浮かんだ。
「でかしたッ! 行くぜッ! アースクエイクッ!」
手の平を地面に当てて唯一健在だった男性教師が魔法を発動させた。数秒後、何処からともなく地震が襲い掛かり、停車する10式の地盤が破壊されてゆく。そのエリアだけ破壊されてゆき、最終的に10式は地面に埋まるような形で大破した。埋まったと同時に断層上になった地面に挟まれ破壊された。
地上が惨劇と化した中、プロペラが止まったアパッチ・ロングボウはそのまま降下。意外とゆっくり降下し、三機は無事に着地した。だが残りの2両はそのまま制御不能となり墜落。一機は何もない地点へと落下したが、もう一機はドリフト中に急停車した10式に直撃。大破炎上した。
だが、危機はこれでけではなかった。
ー同時刻、カウスレア連邦帝国海上ー
ー海上自衛隊第2護衛隊郡DDG-178「あしがら」艦橋ー
「艦長、電子機器が相次いで破損! 何とかSPY-1レーダーを一基、復旧させる事に成功しましたッ!」
「よくやった」
カウスレア連邦帝国は現在も王都と交戦を続ける巨大な軍事国家である。シエスカ・エーレットはこの国の領海、領空を守るため海上自衛隊及び航空自衛隊の各装備をこの異世界に召喚させていた。この第2護衛隊郡は今回の1対8には参戦していないものの、常に領海の警備に当たり今はその真っ最中だった。
数分前、カウスレア連邦帝国の領海内に入った第2護衛大群は思いもよらぬ出来事に見舞われた。それは全ての電子回路が狂かれると言う事。これは魔法「ブレイカーダウン」による影響だった。が、今の彼らはこの魔法の存在も、シエスカが戦っている事も知らないで居る。
そんな中、イージス護衛艦「あしがら」は4基あるレーダーのうち1基を復旧させた。ひと段落したのもつかの間。復旧したレーダーに何かが映りこんだ。
「レーダー、コンタクトッ! 目標捕捉ッ!」
艦橋に緊張が走った。その後もCICからの報告が続が……。
「目標の予想落下地点……予想落下地点は……学園の闘技場ですッ!」




