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恐るべし、清掃系魔法

「で、本当に何の用ですか」

「あっ、そうだった。少し来てくれませんか?」

「……はい?」


 っと言うわけで、私は業務中の図書委員長さんを連れてきた。結構無理やりだったけど気にしない。


「あっ、シエスカさん」

「連れてきたよー」

「ですから、私は今業務中でして」

「これも業務の内だと思って手伝ってよー」

「手伝うって何を……」


 名も知らぬ図書委員長は敵をマークし続けるユエちゃんを見つめた。ウィーレさんは絶賛攻撃中。でも一人だと効率は悪いようで、思うように攻撃が当たらないらしい。今、敵機動艦隊は荒れるに荒れて混乱中。きれいに整えられていた輪形陣は今や秩序はなく、それぞれが適当に航行している。


「図書委員長さんなら使えるよね!」

「な、何を?」

「遠距離用の攻撃魔法!」


 すると図書委員長さんは首を傾げた。


「私、遠距離系の魔法なんて使えませんよ?」

「……へ?」


 まさかの人違いである。図書委員長さんなら、きっと一つぐらいは使えるであろうと確信していたのに、まさか、一つも扱えないとくるとは。しかし、今は秘書さんは不在。此処は図書委員長さんに頑張ってもらうしかない。


「私、ちょっと遠距離系の魔法が載っている本を探してくるよ!」

「えっ!? あの、シエスカさん!?」

「ちょ、ちょっと待って下さい! 本当に私、遠距離系は扱えないので」

「少しだけ待ってて!」


 皆が戸惑う中、私はありったけの魔導書をかき集めてきた。本ってこんなに重たいのかと思いながらつみきのように積み上げていく。超スピードで。


「持ってきたよ!」

「えっ、早ッ!?」


 ドサッと少し乱暴気味に本を床に置いた。砂埃が少し舞う。


「ささっ、図書委員長さん! この中から好きなのを選んで!」

「だから、私は一切遠距離系の魔法は……シエスカさん……だったかな……これ、何?」

「えっ? だから遠距離系の魔法が載っている本……」

「これ、召喚術を主に取り扱っている魔導書だよ」

「……え、えぇーーー!?」


 私とした事がまさかのミス発覚ッ! 不覚ッ! でもでも、まだ本は五冊ぐらいあるわけだし、一冊ぐらい違う本があっても構わないと言いますか。


「それにこれ、ペットの本だし……それりお料理と、これは……何かしら……薄い……本?」

「えッーーーー!?」


 ちょ、ちょっと! 男子! 何、変なもんを持ち込んでいるのさ! これ、表紙は絶対にモザイクをかけないといけない奴だよね!? 図ったなァ! 男子!


「何だ、中身はただの雑誌ね。で、もう一つは観葉植物を取り扱った物……随分マニアックね」

「観葉植物ゥ!?」


 確かにマニアックッ! でも、その中身の雑誌がさらに気になると言うか!


「最後の一冊は……数学の文字列がただひたすら並んだ内容ばっかね。タイトルは……「これさえ読めば受験受かる事間違いなし!」って、明らかに誘ってるわね」


 えっ、じゃあ私が持ってきた本で唯一魔法を取り扱っていたのって、さっきの召喚魔法だけ!? そ、そんなー。と言うか、どれもこれもちゃんと「魔法学」と言うカテゴリから持ってきたものばっかりだよ。ちゃんと整理しようよ、図書委員さん。


「最近、手が足りなくて隅々までしっかりと手入れしてないからね。この観葉植物の本、少し埃を被ってるし」


 何てこった。以外と図書室の管理は甘かった事が今回の件で分かった。いやいや、そうじゃあなくて、本当にこの委員長様は遠距離系の魔法が使えないのかと言う事!


「本当に使えないの? 遠距離系の魔法」

「使えないわよ。たとえ攻撃系の魔法が使えたところで当たらないしね」

「じゃあ何が使えるの?」

「私は基本、清掃系の魔法とか回復系の魔法。後はちょっと便利な魔法ばっか」


 便利そう……じゃあなくて、はぁ……今後どうしよう。


「ウィーレさん、マナ持ちそう?」

「結構きついかも……後二発程度かしら……」

「ユエさん、艦隊の方はどうなっているの?」

「少なくとも2隻は撃沈したかな。勿論、周りに居る奴だけど」

「シリスさん、海の状況はどうですか」

「荒れまくっているぜ! 既に何隻は海の底だ!」


 参ったな……これじゃあ妨害程度にしかならないよ。


「ねぇ、図書委員長さん」

「何ですか?」

「さっき、清掃系の魔法が使えるって言っていたけど、清掃系ってどんな魔法ですか?」

「清掃系? 例えば埃があるなら、それを指定して抹消する魔法だけど」


 うん? 抹消?


「図書委員長さん、この艦隊に向けてその清掃系の魔法を使ってもらえませんか?」

「別に構わないけど……距離的に届きますかね」

「そこは私がフォローしますので、問題ありません」

「分かったわ」


 そして、図書委員長さんは清掃系の魔法を唱えた。床には魔法陣が張られている。


「クリーンスラッシュ!」


 次の瞬間、ユエちゃんの力で移っていた敵と思しき機動艦隊は瞬く間に消え去った。白い光に包まれた後、移っていたのは海面ごと削られた海の姿だった。少しやり過ぎのような気が……。


「あら、少しやり過ぎたかな?」

「はい、海面が少々消滅しました」

「たまに、敵じゃあなくてよかったって思うよ……」


 消えた。敵が一瞬で消滅したのだ。10隻程度の艦隊は今やネジの一本すら残っていない。恐るべき、清掃系魔法。掃除をするってレベルじゃあない。


「一つ疑問に思ったんだけど、その清掃系魔法って人も消せたり……」

「えぇ、勿論、人も消せるわよ。灰も残さず」

「消せるのね……」


 もう、清掃系の魔法だけで良いんじゃあないかな。

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