秘書さんか図書委員長さん
「荒れろッ! 荒れろッ! 荒れろッ! ポセイドンは我にありッ!」
寧ろ荒れているのはシリスの方だと思うのだけど今はソッとしておこう。これが、彼らの能力なのだから。今頃、帝国海軍機動艦隊が居る海域はとても最大速力では走れないような海になっているはずだ。台風より酷どいや。
さてと、次は敵の位置か。
「ウィーレ、今敵の位置は何処ら辺か分かる?」
「沿岸部からは離脱したわよ。多分、どっかの海域にでも進出したんじゃない?」
非常に適当な位置情報、ありがとうございました。……ナビが欲しいな。
「ユエちゃん! 今、荒れている海域の近くに別の船が航行していたり……」
「それっぽいのは居るよ」
「……居るんだ」
しかも、ユエちゃん曰く場所は結構近いのだとか。良し、ミサイルをぶち込もう。
「どの辺?」
「えっとね……大体西の方向かな?」
西か……特に問題はないかな。
「ユエちゃんはしばらくその船を特定し続けて」
「分かった」
「西へ行ってたんだ……あれ? 西?」
一瞬、ウィーレさんが気になる事を呟いたけど今は気にしない。さてと、ミサイルの雨で葬っても良いのだがそれでは魔法と言うより実質的に科学の力で葬っている気がする。一応、召喚魔法だけど頼っているのは科学だ。そこで。
「シリスさん! 西の方の海域に大きな穴を開けてくれませんか?」
「西の方だぁ? 悪いが二つ同時には能力は使えねぇ! ユエに頼めねぇか?」
チラッとユエちゃんの方を見るとボーとしている。多分、敵と思しき艦隊を追っているのだろう。
「シエスカさん。なにやら船の甲板から小さい鳥のような物が出て行ってるんだけど」
「それって敵の艦載機じゃない? 規模はどのぐらい?」
「大体30匹か、それ以上。順番に飛び立っている」
「妨害は出来ないの?」
「追尾しているだけで精一杯。妨害に切り替える事も出来るけど、それだとマナを大量に消費して追尾が出来なくなる」
やっぱり二つを同時にこなすのは無理があるか。それは同時に二つを追尾する事も困難を極める……。仕方が無い。ここは帝国海軍を追って行った護衛艦二隻に頼むか。どの道、科学を頼るしかないのかな。
「秘書さんに頼めば……もしかしたら……」
そっか、確か秘書さんは大魔術師。遠距離の攻撃魔法なら軽く四つぐらい覚えて居そうな気がする。
「分かった。少し秘書さんを探してくるよ」
「ユエさん、その敵の位置ってどの辺か分かる?」
「荒らしている海域から大体西を進んだ方角です」
大雑把だな……。
「分かったわ。シエスカさん。私も遠距離型の攻撃魔法なら一つだけだけど使いこなせる自信があるの。任せてくれないかしら」
索敵を行っていたウィーレさんが申し出た。遠距離型の攻撃魔法が使えるのならそれに越した事はないのだけれど。
「マナの量は……その、大丈夫なんですか?」
「問題ないわ。五発分は余裕で残っている気がするの」
「じゃあ、お願いします。私は秘書さんを探してくる」
「えぇ、お願いするわ。ユエさん、位置を共有できるかしら?」
「はい、可能です」
「お願いね!」
私は二人に任せて図書室を歩きまわった。図書室で走り回るのは厳禁なので、少し小走りで秘書さんが居そうな部屋のドアを探す。この学園の図書室は以外と広い。見渡す限り、本棚しかない。
「すみません、秘書さんを見ませんでしたか?」
「秘書さん? ごめんなさい。見てないわ」
「そうですか……ありがとうございます」
「は、はい……?」
首傾げる図書委員の娘を尻目に、私は秘書さんを探しまわった。けど、居ないのだ。もしかしたら出張中なのかも知れない。もしかしたら会議中なのかも知れない。
「仕方ない……」
私は回れ右をして真っ直ぐカウンターの方へ足を運んだ。秘書さんには劣るが、図書委員長ならばあるいは遠距離でも攻撃をぶっ放せる大魔法を取得しているかも知れない。私は図書委員長に希望を託した。それでダメだったら校長先生を使おう。
「ごめんくださーい」
「はいはーい」
カウンターに着いた私は誰も居なかったので呼び出す事にした。しばらくすると一人の少女が奥の廊下から出てきた。奥の廊下の両側はやはり、本棚で埋まっている。
「本日はどのようなご用件ですか?」
「あっ、えっと……」
「本の貸し借りでしたら此方にご記入下さい」
「あっ、分かりました」
って、違うだろ。何誘導されてるんだ。私。
「いえいえ! 違います! 違います!」
「へッ!? ど、どうしましたか?」
見た感じ、この子は図書委員長じゃあないかな。新人さんか、もしくは普通の委員か。
「図書委員長は……いらっしゃいませんか?」
「あの……委員長は、私なんですけど……」
「……へ?」
誰がどう見ても普通の委員さんにしか見えないのだが、良く見ると確かに名札の学年は三年生。……三年生に見えないなんていったら怒られそうだ。見るからに一年生にしか見えない少女はまたか、って感じの表情を出している。どうやら何度も間違えられているようだ。
「あっ、すみません……一年生ですよね?」
「三年生ですッ!」




