実技後
あれから数日後。闘技場は文字通り全体が蜂の巣になった。復旧まで数十日は掛かるだろうと言う診断結果を受けた私はただその場で苦笑いをするしかなかった。そして今私は、その件に関して無事、呼び出しを食らい校長室へ。いやいや、何か6人ぐらい先生方がいらっしゃるんですけど!?
「えー、先日の飛竜召喚についてだが」
「ヘリコプターです」
「うん?」
「攻撃ヘリコプターです」
「いや……飛竜……」
「攻撃ヘリコプターです……」
私は少し心地良い椅子に座り顔を下に向け、恨みの念を込めて言い放った。恨んでいるのは決して校長先生ではない。あの天使と名乗ったアイツだ! 何で、私は本当に普通な学園ライフを送りたかっただけなのにさ、入学早々校長室に呼び出しを食らわなきゃあいけないの!?
「えっと……そのヘ、ヘリ……ヘリドラゴンを召喚した件なのじゃが……」
「耳がおかしいんですか! ヘリコプターですよ? 攻撃ヘリコプターですよ!?」
「……ヘリコラゴン……」
「ヘリコプタァー!」
何も、名前が間違えているからこんなに怒っているわけではない。寧ろ、何でヘリコプターをドラゴンと見間違えるのかが私にとっては全く持って理解不能なのだ。認めたくない。こんな聞き間違いで私は普通の女子生徒からドラゴン使いだなんて誤解が学園……あいや、世界中に広まったら……これだけは何としても阻止しなければ!
「では、そのヘリゴブラについて詳しく聞こうかのう」
「だからヘリコプターてっ言っているでしょ!? ジジィ!? 回転翼機てっ言って列記とした兵器何です! 決して空を飛んで攻撃をするドラゴンではありません!」
「海中翼機?」
「なんで、そう言い間違えるんですか!?」
あぁ、もう。疲労がマッハを軽く越えそうだわ……。この爺さん、何が何でもヘリコプターの事をドラゴンと呼称するつもりね……確かに、異世界人にとってはヘリコプターなんてオーパーツだし、ましてや武器を載せているんだから無理も無いか……いや、普通に考えて明らかにドラゴンじゃあないよね?
「長老、いかが致しましょう」
「ふぅむ……」
「まだ、本当の事は1年5組しか知らなくてもいずれは噂となって次第に漏れ始めます」
「人の噂も75日と言うじゃろう……」
「もしもです、この噂が王都に座を置く国王陛下……いえ、隣国のフィルリアン第4帝国の耳にでも入ったりすれば、我が国への侵攻もありうるかと……」
えっと……なんでそうなるんですかね。私、そんなに他国にとって脅威なんですか?
「一先ずは安静にしていなさい。このヘリドラゴンについてはワシから直接報告しておこう」
「やめてください、死んでしまいます」
報告てっ何処に報告するんですか。もしかしなくても王様とかじゃあないですよね。仮に王様だったらまた数日後ぐらいに呼び出しを食らいますよね!
――結局、攻撃ヘリコプターについての資料は他国に知られてはいけないと言う事で、校長先生の金庫にしっかりと保管されて、それを多くの兵士とメイドさん達が守る事になった。いや、金庫でいいの。そんな重要な書類達を。
「任意同行、お疲れ様でした!」
「いいよね、シャールは暢気で」
「そんな楽なもんじゃあないですよー、二時間近くも居なくてシャール、とても寂しかったですよ」
時刻は丁度お昼を指している。私とシャールは二人で食堂へ。……財布が軽い、入学した頃はまだ余裕はあるかなと思っていたのに……。
「ねぇ、シャール。フィルリアン第4帝国てっ国知っている?」
「フィルリアン第4帝国ですか? 勿論、知ってますけど」
「じゃあ、ちょっとだけ教えて私の頭がパンクしない程度に」
「シエスカさんもしかして地理とか国とか苦手ですか?」
「……アハハ」
席に着いた私はコンポタージュみたいなスープと柔らかそうなパンを食べているシャールに周辺の国について聞いてみた。一方の私は牛乳みたいな紙パックとクロワッサンみたなパンを二つ。安かったから買ったけどうぅ……金欠すぎてワロエナイ。
「簡単に言えば軍事帝国ですけど、私達の国とはあまり友好的では無い……ですね」
「それってつまり戦車とか戦闘機を沢山持っていたりするの?」
「センシャ? セントウキ? いえ、そんな物は知りませんけど……」
「な、何でもないわ」
てっきり第4帝国と言うぐらいだから第3帝国が進化した何かかと思っていたけど全然無関係な国なんだ。国家体制は知らないけど。
「にしてもシエスカさん、今凄い金欠じゃあないですか?」
「昨日思ったより使いすぎちゃったのよ、今晩をどうやって乗り切ろうか……」
「それについて何ですけど面白そうなのを見つけまして……」
そう言うと一口サイズに千切ったパンを口に放り込んだ後、何かカバンから宣伝ポスターのような物を取り出して私に見せた。
「ギルド……?」
「はい!」