対潜戦闘
『左舷、対潜魚雷、投下ッ!』
「面舵ー一杯ッ!」
『面舵一杯、大和と並走して下さい!』
必死に衝突を回避しようとする大和と、それに並走する筑摩。
きっと、筑摩は身を挺して大和を守ろうとしているんだけど、大和の艦長さんはその事を理解していないご様子。
大和の艦長や、乗員の姿は私達には見えない。
誰かにぶつかった、と言う感覚はあってもその誰かが分からない。
また、ぶつかった。エレベーターの中で。
「ねぇ、ねぇ。個人的な意見なんだけどさ、艦橋に居た方が安全な気が……」
「いいえ、甲板へ出るべきだわ。沈んだときはどうするのよ」
「それもそうですね、此処は甲板へ出るべきだと思います」
「……シャールが其処まで言うのなら……痛ッ」
またぶつかった。
本当、乗員さんは忙しいな。
エレベーターから降りるときに慌てて乗り込んだのか、大きくぶつかった。
危うくこけそうになったけど直ぐ其処に壁があったからこけなかった。
でも、壁だから少し痛いかな。
「わわわッ! 何ですか!?」
「船が大きく右へ傾いているわッ!」
「とにかく何かに捕まってッ!」
甲板へ出ようとしたその時、大和はさらに大きく右舷へ曲がった。
最大速力で大きく回り、床から足が離れるような感覚を覚えた。
これだけ大きな船でこんなに揺れるなんて。
もっと安全を考慮した航海が出来ないものか。
『威嚇魚雷、目標の右舷30m付近にて爆発ッ!』
『なお、目標はゆっくりと回避運動に出ました』
『これを敵と認識し、これより、本格的な対潜戦闘に移りますッ!』
九つのうちの一つに異変があった。
識別が困難だったが、回避運動に出たなら敵に違いない。
Uボートか、あるいは別の潜水艦か。
「雷跡ッ! 右舷40度、数、6本ッ! 本艦に迫りつつありッ!」
「全速後進ッ! 右舷乗員は速やかに艦内へ退避せよッ!」
此処は丁度、その右舷側だ。
やっぱり、艦内に居た方が幾分かマシだったに違いない。
雷跡の姿は、はっきりと私にも見えた。
海面を進む6本の白い帯。
速い。とても、かわせそうにない。
「別の推進音を探知ッ! 雷跡の右舷方向より計3本の魚雷が迫りつつありッ!」
「衝突コースですッ!」
次の瞬間、大和からざっと80mほど離れた地点で大きな水柱が立った。
1本、2本、3本……最終的に6本全てがその場で爆発した。
波の衝撃がこっちにまで伝わってくる。
危機一髪とはまさにこの事。
「魚雷6本ッ! 本艦の右舷87mで爆発! 全て誘爆した模様ッ!」
「筑摩、さらに魚雷を投下ッ! 数、4本ッ!」
遠くの方で水柱が立つ音が聞こえた。
と、ほぼ同時に右側でも大きな水柱が二つ立った。
両方に魚雷を放っていたのかな。
『敵潜、ガトー級と判別ッ! 魚雷、投射ッ!』
「別のスクリュー音を探知しました、今までで聞いた事のない音です」
「位置は?」
「さきほどの魚雷発射ポイントとほぼ同じかと」
「艦長ッ! 一隻がメインタンクをブローしました!」
「浮上だとッ!? この状況でか!?」
遠くに何かが浮かび上がった。
潜水艦だ。
紛れもない潜水艦。
だけど、何処か雰囲気が違う。
普通の潜水艦と、何かが違う。
『艦載機の射出を急いで下さいッ! その後、急速潜航を行いますッ!』
浮上した後、猛スピードで作業が進む。
筑摩と同様、またしても直接、私の脳内に音声が再生される。
今度は一体誰だろう。
『準備が整い次第、発艦ッ!』
潜水艦のはずなのに、浮上したソレは筒のような物から飛行機を射出した。
潜水艦……だよね? 何で飛行機を打ちだせるのさ!
「艦長! 潜水艦から艦載機がッ!」
「んなバカな事を言うな!」
「で、ですがッ!」
「寝言は寝て言え、今は戦闘中だ、何かの見間違えだ!」
しかも打ち出したのは一瞬で音速を突破したジェット機だった。
そのジェット機は瞬く間に敵潜水艦が潜む海域へ急行。
詰まれていた探知ソナーで潜水艦を探知。
その後、誘導式の対潜魚雷で止めを刺すと言う物。
いつの間にか射出した母艦は海中に没しており、見渡してもその姿を見る事はなかった。
粛々と敵潜水艦を撃破していった。
9隻中、6隻を確実に撃沈。
3隻に損傷を与え、1隻は浮上。残りの2隻はその後に自沈。
無傷は僅かに1隻のみ。
「帰ってきたぞーッ!」
戦闘後、港へと戻ってきた私達は、直ぐに旅館へと直行。
夕飯を終えてその日は爆睡。
昨日の戦闘はほぼ覚えていない。
けど、潜水艦が何かを打ち出していたのはよく覚えている。
私はシャール達と別れ、早めに学園へと舞い戻った。
勿論、学園へ戻ってきた私が一番最初に面会を申し込んだ人物は。
山本長官、その人である。
あの潜水艦について、私はしつこく問いただす事にした。




