対空戦闘用意ッ!
「広いわねー」
「そうだね」
そりゃ、世界最強の戦艦だからね。
昔は大和ホテルなんて言われていたぐらいだし。
「此処がブリッジね!」
「色んな物があるね」
勿論、エレベーターを使いました。
とっても高いんだもん。
普通に筋肉痛になるレベルだよ。
と言うか、普通に艦内を探検してるな、私達。
「此処が食堂だよ」
「広いねー」
約3.000人近くの胃袋を支えてきた場所。
厨房はもっと広いだろう。
「広いねー」
本当に広いね、この甲板。
甲板の上にあるこの46cm三連装砲が世界最強の大砲。
撃った際に甲板に居れば衝撃波で人が死ぬそうだ。
最大射程は42,026m。
ちょっと理解できないです。
「ところで、このでっかい大砲」
「きっと砲撃魔法と言う魔法で撃っているのね」
いえ、科学技術の結晶ですよ、それ。
魔法じゃあなくて科学の力で動きます。
かがくのちからってすげー。
「銃を撃つのも魔法で行っているの?」
「銃が何かは分からないけど、えぇ。勿論、魔法で撃ち込むわ」
ステラの話では砲撃魔法専用の杖があるらしい。
種類としては、まず代表的な攻撃魔法。
続いて遠距離魔法。
そのほか多数。
あまりにもステラの自慢話のような説明が長かったため、割愛。
「この小さな大砲もきっと、砲撃魔法ね、間違いないわ」
それは対空砲ですよ。
ハリネズミのように置かれた対空砲はまるで要塞さながら。
遠くからみたら戦艦大和って、どこかお城ぽいっ外観をしているよね。
「総員、戦闘配置ッ! 遠方、に黒い影ありッ! 黒い影ありッ!」
突然、艦内全体を誰も居ないはずの艦橋からアナウンスが流れた。
戦闘配置を促す放送。
これは訓練ではない、繰り返す、これは訓練ではない。
「せ、戦闘配置ですって!?」
「せ、戦闘配置?」
皆が首を傾げるなか、対空砲や副砲。
そして、46cm三連装砲が三基とも一人でに動き出した。
「対空戦闘用意ッ! 対空戦闘用意ッ!」
対空砲から男性の野太い声。
声とともにラッパの音が周囲に響いた。
遠くから丸い黒い点がポツポツと出て来た。
数は大体10個前後。
そして、ついに46cm砲が狙いを定めるように固定された。
とっ言う事は……。
「皆ッ、早く中に入って!」
「てッー!」
「スターフィールドッ!」
ほぼ同時に砲撃と、星のシールドが展開した。
防弾ガラスのような黄色い星が束になって私達を囲んだ。
強い光に包まれた後、大量の煙に包まれた。
耳をつんざくような大きな音。
足元を揺らす地響き。
星と星の間をわずかにすり抜けてきた衝撃波の風。
優しい風だったけどシールドがなかったら3mぐらい吹っ飛ばされているのかな。
「な、何よ。この凄い衝撃」
「助かったわ、ハンス」
「いえいえ、そんな。直感が、私に危ないって囁いただけです」
ようやく地響きも収まった。
主砲の砲身からは冷却中なのだろうか、白い煙がジューと溢れ出ている。
「だんちゃーくッ! 今ッ!」
カッと言う強い光の後、ちょっと強い風が頬をなでた。
遠くの方で黒煙が九つ炸裂。
点の数が著しく減っている。
命中だ。
「目標、さらに近づく、対空戦闘用意ッ! 第二射用意ッ!」
ガガガッとこするような音とともに砲身が微調整されていく。
対空砲の群れも近づく敵に対して砲身を向けていた。
射程距離までまだまだあるが、この臨場感は此処でしか味わえない。
「み、皆。とりあえず中へ入ろッ!」
「分かったわッ!」
最後に私が艦内へ避難した直後、第二射が放たれた。
ドアが凄い揺さぶられ、今にも外れそうな勢い。
同時に艦内に衝撃波が響き渡って船全体が揺れた。
わずかだが傾斜を感じる。
それだけ強い衝撃なのだろう。
「だんちゃーくッ! 今ッ!」
艦内で何も聞こえないが、恐らく命中。
数は減っていたのでちょっとしか落とせなかっただろう。
しかもさっきより拡散して命中しにくく敵側が上手く回避運動をしている。
「各銃座、目標を捕らえ次第、撃ち方始めッ!」
号令の後、艦内にうるさいほどの発砲音が響き渡る。
対空砲が連続して撃ち続けられている。
揺れが激しいときは近くに何かが着弾した振動だろう。
若干感じる。
「撃墜! 次の目標、右30度!」
「テッ!」
「撃墜!」
次々とまるでリズム天国のように落としていく対空砲。
錬度は充分だ。
「ヒャッハー! 汚物は消毒だッー!」
何処の銃座かは分からないけど、世紀末の声が聞こえた。
私の耳はちょっとだけ地獄耳なのである。
自動で動いているつもりなのに、何故か男性の野太い声が幾つも聞こえる。
英霊の皆さんかな。
「ハンズ、大丈夫ッ!?」
「な、何ッ!? 何も聞こえないよー!」
「だから、大丈夫!?」
「な、何ー!?」
対空砲の音がいかに激しいものか、この日。身をもって体験した。
銃声と発砲音、地響きしか伝わらなくなった。
六感が死んだ。
もう戦闘はこりごりだ。
「撃墜ッ!」
「対空戦闘、用具収めッ!」
途端に音はやみ、数秒後に地響きも止んだ。
揺れも収まり、ようやく私達は甲板へ出た。
すると、目の前の光景はおびただしい数の黒煙。
あっちこっちに甲板に開けられた小さな穴。
攻撃を受けた事が良く分かる。
一体、誰の襲撃なのかは分からない。
でも、穴から察するに敵の戦闘機からきっと攻撃を受けたのだろう。
じゃあ、その戦闘機は一体何処から飛来してきたのか。
異世界か? 隣国か? バミューダトライアングルか?
……後者はないか。
「……はぁ、ざんざんだったわ」
「全くです」
本当、もう戦闘には遭遇したくないものね。
「ねぇ、シャール。後、どのぐらいで陸地かしら?」
「えっと、予定では後2時間ほど航海を続ける手はずなのですが」
「ええっー、まだ海の上に居るのー!」
あぁ、後2時間。
何事もありませんように。何事もありませんようにッ!
「あっ、何か来たみたいですよ?」
「また敵ッ!?」
「いえ……増援……味方のようです」
後方の水平線上、そこにはポツリと黒い点が浮かび上がっていた。
遠すぎてよく分からないけど、どうやら味方らしい。
……勝ったな、ちょっとお風呂に行ってくる。




