科学なんてなかった
翌日、私は今、非常に機嫌が悪い。
と言うのも、昨日の変な夢のせいで昨日の晩はあまり寝た気になれないで居る。
あぁ、寝たい。
その一言である。
「そう言えばシエスカさん、昨日の寝言は何だったんですか?」
「寝言?」
「あら、それは少し気になるわね」
私、昨日の夢をまるまる声に出していた……なんて展開はゴメンだよ。
「ところで、その寝言はどの辺から聞いていたの?」
「えっと……確か、ソナー探知ッ! って所から」
「ほとんど最初っからじゃあない!」
これは……異世界版の黒歴史ですわ。
まさかこんな身近な人に聞かれていたなんて。
あぁ、なんて恥ずかしいのかしら。
聞かれるのは恥だが、何一つ役に立たないとはこの事ね。
今後は出来るだけ寝言を言わないように努力します。
……どうやったら寝言を言わずに済むのかな。
「ソナー? 何よそれ。新しい魔法か何か?」
「私も聞いた事ないな、そんな魔法」
おっと、此処で皆さん、ソナーを魔法と勘違いしているようだ。
ソナーって言うのはね……ソナーって言うのはね……。
えっと……そもそもソナーって何? こっちが聞きたいぐらいだわ。
「知らないわよ、シャール。鑑定とか出来ないの?」
「はい? ソナーですか? ……分かりました。少しやってみます」
「鑑定、ソナー」
シャールの目の前に幾つかの情報が流れてきた。
どうやらソナーと言うのは船底に詰まれるレーダーの一種のようだ。
潜水艦の場合、敵を見つけたり音を出す事で威嚇する事も出来るらしい。
なるほど、分からん。
こう言うのはミリオタと言う大きなお友達に聞けばもっと分かり易く理解できるかも知れない。
「科学?」
「科学って何……?」
「えっ、この世界って科学が存在しないの!?」
「知らないんですか!? シエスカさん!?」
此処でまさかの展開に。
じゃあこの建物とかは皆、皆、魔法で作られているの!?
なんってこった!
「えっ!? じゃあ建物とかはどうやって作ってるの!?」
「そりゃあ……勿論……ねぇ?」
「うん、建物は普通、建築魔法と言う魔法で建てられているよね」
普通なの!?
魔法で建物が地面から生えてくる光景が、この世界では普通なの!?
さすがファンタジーな世界。
何でもありだね!
「じゃあ農業とかはどうなっているの?」
「農業などは栽培魔法等で基本まかなわれていますね」
「料理は?」
「勿論、調理魔法よ。これは妄想力と知識がかなり必要になるのだけれどね」
うわー、ステラもハンスも魔法に詳しいなー。
そしていかにもステラはその調理魔法を専攻しているような感じで言っているね。
「もしかしてステラ、調理魔法とか得意なわけ?」
「勿論」
「ステラ、頭だけは良いもんねー」
「な、何よーッ!」
あっ、ハンスが少し茶化した。
調理魔法か……それに建築魔法と。
覚えておいて損はないだろう。
「勿論、攻撃魔法や回復魔法、それに世の中には復活魔法なんて魔法もありますよ!」
「復活魔法?」
「用は死んだ人を生き返らす魔法ね。ま、賢者クラスの人間にしか使えないけどね」
「少なくともうちの学園には居ませんね……賢者クラスは」
そんなに凄い人なんだ、賢者って。
それってつまり、神に選ばれた人って解釈すれば良いのかな。
多分……私には使えないよね。
「あっ、皆さん! そろそろ船着場に着きますよ! 準備してください」
「もう準備ならとっくんの昔に出来ているわよ」
あっ、でも船着場って言う設備はあるんだ。
でも設備だってきっと、設置魔法とか言う魔法があるんだろうな。
下手したら繁殖魔法なんて言う厄介そうな魔法もあるかも知れない。
増倍魔法とか。
「ねぇ、船も魔法で造られていたりするの?」
「えぇ、確か造船魔法だったかしら」
「飛行船だったら航空魔法ですね」
ちょっと待って、航空魔法って何。
しかも空を飛ぶのに船ってどう言う事なの?
「造船魔法の場合は一度使うのに沢山の素材が必要になるのだとか」
「鉄、木材、ガラス、コンクリートなどですね」
「素材魔法とかがあれば直ぐに出来そうだよねー」
待ってよ、三人とも。
私、話の内容についていけないんだけど。
置いてけぼりなんだけど。
「さぁ、皆さん。雑談をしていたら着きましたよ!」
「これが今回の旅でのメインになります!」
馬車から降りた私達は、今回乗船する船を見上げた。
うん? 見上げた?
「凄ーい、これっ全部シャールの知り合いが作り上げたの?」
「はい、そうです!」
「いやいやいやいや!」
目の前にあったのは、全長263m、全幅38.9m、最大速力27.46ノット。
45口径46cm3連装砲塔3基9門。
当時、世界最強と歌われた戦艦大和じゃあないですか!
あれ、何でこんなにスペックに詳しいんだろ、私。
いや、そんな事はどうでも良い!
こんなの当時の日本海軍の技術の結晶。
科学の塊と言っていい代物だよ!
それに私、こんなドデカい物を召喚した覚えないし!
「強そー!」
「ねぇ、ねぇ、シャール。ちょっとだけコレを鑑定してみて」
「えっと……攻撃力は1万6.000以上」
「防御力が8.000以上ですね」
「1万6.000って賢者クラス以上じゃない!」
気づかないのか、彼女らは。
コレが当時の科学の水を集められて造られた船だって事に。
決して造船魔法などで造ったんだじゃあない。
一から造った世界最強の戦艦だ。
後さ、コレさ。
豪華客船とかそう言った部類じゃあないからね?




