8月15日
「えっと……何かのドッキリ……」
彼は思考回路が停止したまま私の方に振り向いた。
銀髪ショートは首を横に振った!
悠馬は凍りついた!
こうはばつぐんだ!
悠馬はたおれた!
いや、倒れちゃあダメでしょう。
「そろそろ良いかな?」
「ハッ……ハイ……」
さっきまでの威勢は何処へ消えたのか。
と、言うよりこの山本長官てっ人はそんなに凄い人なのかな。
ごめんね、私、歴史苦手なんだ。
「俺は君に全ての潜水艦を一旦預けようと思っているんだが……どうだね」
悠馬は完全に凍りついた!
相手の言葉を理解していないようだ!
Q熱湯を彼にかけますか?
イエス・ノー。
……イエス。虚しいけど、これ、戦争なのよね。
「熱盛りィィィィィ!?」
銀髪ショートの熱湯!
悠馬は完全にオーバーヒートした!
悠馬は1万のダメージを負った!
今度こそ、悠馬は倒れた!
「……場所を変えようか」
「イエ、ケッコウデス……」
結果から言うと彼はシュワーと身体中から白い煙を出して口をパクパクさせていた。
誰かさんのおかげで相当なダメージを負ったようだ。
これは山本長官が自ら何か甘い物をおごらなければ! お詫びとして!
あれ、私の思考てっ以外とクズだったりするのかな。
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結局、場所は変わって学園の食堂。
私と白目の悠馬と名乗った少年。
そして真顔の山本長官と言う中々シュールな画が出揃った。
食堂の食券で悠馬はアイス。
山本長官もアイスを選択し、勿論、私もアイスです。
此処のアイスはバカみたいに美味しい。
本当、何度でも食べられそうだ。
ちなみにお値段は日本円で大体300円ぐらいである。
払う価値はあるだろう。
「で、なんでボクが潜水艦を……?」
「我々が調べ上げた結果、どうも君にしか頼めないようでね」
どうやって調べたんですか、その資料は。
えっ、私の分はないんですか? あっ……ないみたいですね。
何で私が此処にいるんだろう。
ま、いいや。
アイスでも食べてよ。
「成程、成程……」
何が書かれているんですかね。
少しだけ気になってきましたよ、私。
「分かりました」
分かったのか。
「ではこの依頼を引き受けましょう」
「それはよかった。それと……」
「はい?」
山本長官は少し重い表情。
今度はどんな事を良いだすんだろう。
潜水艦だからソレ専用の基地でも作れとか言いだすのかな。
無茶苦茶だ。
「君に是非これを造ってほしい……」
山本長官は懐から何やら大きな丸めた白紙を取り出した。
いや、普通に何処から出したのその紙。
山本長官の懐は四次元ポケットか何かかな。
そのうち空気砲とか出してくるんじゃあないだろうか。
「……なんですか? これ」
白紙に書かれていたのは、案の定潜水艦だった。
ん? 潜水艦?
潜水艦なのに、何で艦首にドリルが一つ……いや、三つついているんですか。
この魚雷数は何なんですか。
このミサイルポッドの数は何なんですか!?
潜水艦に水中ハッチは必要なんですか!?
何だ、何だこれは。
「ドリルミサイル潜水艦と言うべきか。君にこれを造ってほしい」
「……その、これ、完全に物理法則とか無視していますよね?」
そこ突っ込むんだ。
普通、潜水艦にドリルはいらないだろとか。
何で水中ハッチがついているんだよとか。
何でスクリューがないんだよとか。
もっと突っ込むところがあるはずでしょう。
あれ、無視ですか?
「必要される数は?」
「三隻は最低でも欲しい」
そんなに? こんな化け物を?
「一隻は即戦力として、二隻目は特殊任務用として、三隻目は予備として」
「必ず、コイツが役に立つはずだと、オレは信じているんだがね」
いや、いらないでしょ。こんな化け物。
何、今から魔王でも倒しに行きそうな代物だよ、コイツ。
魔王をこのドリルで八つ裂きにするかのような勢いだよ。
「こちらで若干の改良を加えてもよろしいですか?」
「勿論だ。どうだい?」
「分かりました。二週間以内で何とかつくり上げてみせましょう」
二週間で出来るんだ。この化け物。
まずはドリルを外そう。話はそれからよ。
悠馬は紙を再び丸めて懐に仕舞った。
いや、お前もかよ。何回繰り返すんだよ、このノリ。
「さっ、アイスでも食べよう。早くしないと溶けちまうよ」
「ボクは溶けても別に構わないんですけどね」
私も同感かな。
あっ、私のはもう終わっているんだった。
すみません、おかわり下さい。
後払いで良いので。
「にしても、今年の夏もやっぱり暑いな」
「そうですね」
そうだねー。
この世界に蝉はいないみたいだけど、その分太陽からの放射線が少し強い気がする。
いや、放射線が強いとか普通にマズいじゃん。
そうだよ。太陽の光だよ。
何言い間違えているんだろ、私。
「今日は8月の何日だったかな」
「今日は……あっ、こっちでは8月か」
「えっと、今日は8月の15日ですね」
「そうか……15日か」
「15日か……」
何、この変な空気。
15日に何があるって言うのよ。
そんな暗い表情じゃあ折角のアイスも溶けちゃうよ。
もういいや。
私だけ先に抜けよ。アディオス。
「ご馳走様でした」
「はいよー」
結局、二人は何かを考えこむようにしてそのまま席を離れなかった。
私は部屋へ帰る前の廊下でようやく思い出した。
そうか、今日は終戦記念日か。




