普通の男子高校生だ
「えっと、君は?」
私は空から……いや、天井から降ってきた男子に名前を聞いた。
見た目は至って何処にでもいそうな男子高校生A君。
制服は黒いブレザーに黒いズボン。
ネクタイもしているようだ。
顔を床にめり込ませていて、この時点で来た人はこう思うだろう。
コイツ、やべぇヤツだ、と。
ぶっちゃけ、私自身も、何? コイツ? と言う視線で見ている。
だけど、隣で彼を見ている山本長官の表情は待っていたと言わんばかりの表情だ。
これが本題だとでも言いたいのだろうか。
このいたって普通の男子高校生が。
「痛てて……全く、酷い目に合った……ん?」
「ん?」
完全に一致とはこの事かな。
私と完全に目と目が合った。
何か例のあのBGMが流れてきそうな展開だ。
別に、私は彼に対して好奇心を抱いているわけではないのだけど。
「えっと……」
「混乱しているのも仕方が無いだろうな」
「初めまして、小川悠馬君」
「は?」
「へ?」
何と、この山本長官は相手の個人成功をすでに掴んでいたのだ。
口を開けた悠馬君と言われた高校生と思わず山本長官の方へ向いた私。
何だろう、このシュールな光景。
悠馬君と名乗られた男子高校生は尻餅をついているし。
「待っていたよ。早速本題に入ろう」
「「ちょっと待って、待ってくれ!」」
ほぼ同時に台詞が被ってしまった。
男子高校生の方は状況が掴みきれて居なくて、私の方は軽く焦っている。
若干、彼の方が音声が大きかったような気がする。
「本題てっ何!? 人様をこんな所? に!」
途中で表現に迷っていたけど、そこはまぁ、いいとしよう。
それと、此処は私の部屋だ。
「まぁ、まぁ、そんなにカッカするな。そうだな、俺が一杯コーヒーを奢ってやろう」
「そりゃあ、カッカしたくなるよ……能力大会で退場したと思ったら知らない天井だもん」
「能力大会?」
「いや、それはこっちの問題だよ、お譲ちゃん」
何か今、イラッと来た。
こう見えて私、中身は女子高生なんですけど。
能力が普通の女子高生から外れているだけで、中身はしっかり普通の女子高校生なんだからね!
某有名な台詞を借りるとしたら……そうね。
見た目は銀髪ショートロリっ娘! 頭脳は普通の女子高校生! と言った感じかしら。
真実は! 何時も一つ! 何てね。
あぁ、何時かあのスケボー乗ってみたいわねー。
無理だと思うけど。
「コーヒーは飲めるかね?」
「何で上から目線……も、勿論、飲めるよ」
「じゃあ、私はプラペチーノで」
「は?」
「へ?」
何だろう、このデジャブ。
あっ、そもそもこの世界にプラペチーノなんてなかったんだ。
じゃあココアでいいや。
あっ、勿論、山本長官のおごりね!
「あ……あの、おじさん……砂糖、入れすぎじゃあないですか?」
「そうか? こんなもんだろう。どうだい? 砂糖は?」
「あ、いえ、僕は結構です」
結構なんだ。
この人、ブラックしか頼まないタイプなのかな。
にしても山本長官凄い量をコーヒーに入れたよね。
それ、もうコーヒーじゃあないよね?
私? 私はココアだからなんも問題ないし?
「で、その本題てっ何なんですか?」
「あっ、それ、私も軽く気になっていたんだよね」
「軽くてっ……ココアてっ……」
「何よ……」
「うん……それもそうだな」
そう言うと、山本長官は飲みかけのコーヒーを机に置いて語りだした。
彼を此処に呼んだ理由はこうして語られる事になった。
「君は潜水艦に関して多少の知識を持ち合わせているようだね」
「潜水艦ですか? ま、多少なら……」
「オレは今、君の知識と能力が非常に必要なんだ」
「知識に能力ですか?」
ちょっと待って。全く話についていけないんだけど。
何、この何処にでもいそうなコレが、能力持ち?
だったら何でこの世界に呼ばれなかったのさ。
「アンタてっ、どんな能力を持っているの?」
「そうだね……強いて言えば『海軍を扱う力』……かな?」
「ちょっと、何言ってんのか分かんないっす」
彼が言うには実際に船を造って、改造して、修理もして、最終的には運用すると言う物。
何だ、ただのチートじゃあないか。
しかも実在しなかった物や未完成の物。
それに架空、もといオリジナル兵器も設計さえこなせば簡単に作れるとの事。
やっぱりチートじゃあないか。
ただの高校生がこんなチートじみた能力を持って良いのかな。
そりゃあ、海軍に詳しい山本長官が仲間にしたがるわけだ。
「今はどんな潜水艦を持っているんだい?」
「見た感じ貴方は海軍の軍人さんのようですけど、それなら知っているはずです」
「潜水艦は海軍の機密の塊。そんな簡単には教えられません」
だよね。海のニンジャてっ言われているぐらいだからね。
じゃあ、私が操作できない代わりに彼が潜水艦を操作する事になるのかな。
戦力の一部をあげないといけないのか……何だか嫌だな。
分かり易く言うと、少しの間、自分の財布を貸すような感覚。
ま、そんな状況なんて滅多にないと思うけど。
「そうだな。オレは前世では連合艦隊司令長官の職についていたからな」
「その気持ちは良く分かっているつもりだ」
「……は?」
彼の脳裏は真っ白になった!
こうかはばつぐんだ!
「は?」
二度目の「は?」が出ました。
そりゃあ、普通、そうなるよね。
いきなりそんな事をカミングアウトされちゃあ。
「連合艦隊司令長官……殿? 閣下? 様?」
あっ、完全に思考が停止したわね、コイツ。




