親方! 空から男の子が!
「おかえりー……てっ、どうしたの!? シエスカさん!」
学園の寮に戻った私を、シャールは玄間に迎えに来てくれた。
対面早々、床にへばりつく私を見たシャールは保健室へ直行。
クラスの何人かとも対面。
その後、即効で保健室へ連れていってくれた。
肩を借りながら。
「あ……ありがとう……」
何か、身長差のせいで軽く捕らえられた宇宙人のようになっているけど。
ま、そこはいいや。
私はベットの上に横になってしばらく安静にする事にした。
シャールは保健室の先生を連れてきて、とりあえず軽い診断を受けた。
「今は気持ち悪いですか?」
「いえ、大分落ち着きました……」
一応あれから十五分は立った。
多少は楽になったつもりだ。
でも、まだ軽く頭がふらつく。
あのナビ。
私が一体、何をしたてっ言うのかしら。
理不尽にもほどがある。
このツケも後で山本さんに払ってもらおう。
「そうですねぇ……もう少し様子を見てみましょうか」
「はい、ありがとうございます」
「シャールも連れてきてくれてありがとう」
「いえいえ、では、シエスカさん。お大事に」
シャールと先生は保健室から出た。
しばらくの間、私は一人と言う事になる。
今のところ、他の患者の姿は見当たらない。
正直、一人の方がかなりリラックスできると思うのは私だけだろうか。
コンコン……。
ノックだ。
「どうぞー?」
「失礼するよ」
噂をすればなんとやら。
ドアから姿を見せたのは、白い制服姿の山本五十六だ。
偉人に対して呼び捨てはどうかと思うけど、今は気にしない。
何せ、私を王都のお城へ放置した張本人なのだから。
「元気そうで、何よりだ」
「こっちは軽く車酔いしたのよ?」
「まぁまぁ、今はこっちだ」
懐から取り出したのは……何これ? お酒?
残念だけど、私、前世でも未成年だったのよ。
未成年にお酒を飲ませるつもりなのかしら。
「なに、これは俺のだ。君のはこっちにある」
日本酒ぽいっ入れ物のお酒を丸いテーブルの上に置き別の入れ物を用意した。
缶だ。
何かの缶だ。
この世界にも缶と言う概念があったんだ。
「コイツはリンゴジュースだ。子供なら好むだろう」
「リンゴジュース? 何か、見た目は凄いブラックコーヒーに……」
「ま、気にするな。とりあえず飲め」
缶の蓋を開けた山本長官は、私に缶を渡した。
いや、これ見た目は凄い黒いんだけど。
ブラックコーヒーと間違えたんじゃない?
そもそも、何処から手に入れたの。
こんな代物。
「それは竹富君の奢りだよ」
「えっ、長官のじゃあないの?」
「俺のじゃあないよ」
そう言って、山本長官は瓶から小さいカップに注いだ。
色と匂いから察してお酒だろうか。
日本酒……じゃあないよね。
「旨い」
その一言だ。
文句なしの旨さだろう。
しかし、私は未成年、正直、お酒の味なんて分かりっこない。
私は黙って缶に口をつけた。
「あっ、美味しい」
リンゴジュースだ。
何処の代物か分からないけど、中身はリンゴジュースだ。
どうやら炭酸ではなくて普通のジュース。
いかにも市販にありそうなタイプだ。
でも、美味しい。
「さてと、本題に入るが」
私は直ぐに山本長官の方に振り向く。
そうだ、この人に絶対に奢ってもらうと決めていたんだ。
私は少しキツめの態度で交渉に入った。
「そうね、まず、その前に何か奢ってもらおうかしら」
「奢る? 何をだい?」
「それは……」
勿論、決まっている。
私が今、一番奢ってほしい食べ物は。
「スイーツよ」
「スイーツ? どんなスイーツだ?」
そうね……どうしましょうか。
とびっきり高級なヤツ。
ケーキ……モンブラン……プリン……ドーナツ。
ビスケット……チョコレート!
「とびっきり美味しいロールケーキを要求するわ!」
「ロールケーキ……」
やっぱり、此処は王道のケーキ。
私はその中でも一番大好きなロールケーキを選択した。
が、此処で一つの問題にぶち当たった。
この世界に、ロールケーキは果たしてあるのだろうか。
「ロールケーキかぁ……」
「え、えぇ! ロールケーキよ! さ! 早く出して頂戴!」
今要求したばかりなのに、結構無茶苦茶な事を言ったな、私。
でも、幾ら時間が立とうとも、美味しい物は美味しいのだ。
「分かった。今度、見つけたらしっかりと渡そう」
「今度?」
「大丈夫だ、約束はきっちりと果たすよ」
本当だろうか。
私は心の隅で疑い。
そして、ひとまず待つ事にした。
「話は脱線したが、本題に入ろう」
あっ、そっか。
私が本題を逸らしたんだっけ。
「本題は……」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「床! 床、床、床、床がぁぁぁぁぁぁ!」
山本長官は、すぐさま椅子ごと下がった。
すると、天井から人が降ってきたのだ。
凄い速度で。
その人は床に穴を開け底に埋まった。
床に人型の穴が開いた。
「えっ?」
「どうやら、本題が到着したみたいだね」
腰を上げた山本長官は、覗き込むような態勢で穴を見た。
私もベットから離れて中を覗いてみる事に。
「何? この人」
「本題だ」
「本題?」
高校生のような制服を身にまとった少年は、見事に気絶していた。
口から泡を吐くとはこの事なのかな。
いや、本当、誰? この人。
リアルに、親方! 天井から男の子が!
と言う感じだったんだけど。
「とりあえず、別のベットに移そう」
山本長官と私は、天井から降ってきた男子高校生を別のベットに乗せた。
いや、本当、誰だよ、コイツ。




