シーサーペント戦その二
「重なり合う!? 一体、どう言う事よ!?」
私は思いっきりパネルへ食い込んだ。
シーサーペントと鳥海が重なり合った。
それはどう言う事なのか。
「状況は!?」
「αの腹部に鳥海の艦首が間もなく衝突します!」
「3……2……1……今!」
レーダー上には確かに点が重なっていた。
多分、シーサーペントの腹部に船体を乗り上げたのかな。
シーサーペント、鳥海はともに無事を確認。
「鳥海、速力が落ちます! 現在20ノット弱!」
ノットと言うのがどのぐらいかは分からない。
でも、動きが鈍くなったのは仕方ないだろう。
きっと船底を思いっきりエグられたに違いない。
鳥海がこれだけの損害を受けているのだから、シーサーペントも……。
「目標α、腹部を大きく削られています! 海面に大量の出血を確認!」
海にぶちまけられた油のように広がる赤黒い血。
そしてレーダーから見ても先ほどと速度が減速している。
これはチャンスか。
「『ちょうかい』、ミサイルによる攻撃を許可する!」
「了解、SSM-1B、攻撃始め!」
「撃ちー方、始め!」
船の煙突辺りから真っ直ぐに煙を吹きながらミサイルが放たれた。
90式艦対艦ミサイル……だったけ。
海上自衛隊では普通に採用されているミサイルのようだ。
火力は戦艦大和に劣る。
しかし、射程距離ははるかにそれを凌駕する。
しかも私自身が召喚しているから弾薬の心配はしなくても良い。
何時でも好きなタイミングで飛ばせるのだ。
その気になれば多分、ミサイルの雨だって簡単に降らせる事も出来るよ。
その気になればね。
「SSM-1B、αに向かい正常に作動中」
「『ちょうかい』、さらに第二射! 二発目も順調に飛行中!」
「ちょうかい」の点からもう一つの点が分裂した。
もう一発の対艦ミサイルだ。
基本、イージス艦はミサイルを撃つ時に二発を撃つのだと言う。
これは少しでも撃ち漏らしを減らして迎撃率を高めるためなのだとか。
何処で知ったのか? 確か本に載っていたような……。
「『ちょうかい』のミサイル1基、αの頭部に命中!」
「続けてもう1基、首筋への命中を確認!」
P-3Cからの正確な情報が飛び込む。
第一報だ。
私はミサイルの命中精度にしっかり慢心してしまった。
「『ちょうかい』、立て続けにミサイルを発射!」
「間もなく五発目が発射されます!」
実際の装填速度なんて関係ない。
速度も弾数も全て自由に設定できるのだ。
でも、一隻じゃあやっぱりキツいよね。
「『あしがら』、『ちょうかい』と協力し攻撃を始めて」
「此方『あしがら』。了解」
ずっと後ろでミサイルの誘導を主な任務としていた「あしがら」。
同じイージス艦と言う事で手伝ってもらう事にした。
一時的に誘導任務を交代し先頭へ踊り出る。
この誘導任務は「あきづき型護衛艦」が引き継いだ。
今、海の上には十隻以上の船が航行、戦闘している。
「此方、『あしがら』攻撃準備良し」
「攻撃始め」
「了解、『あしがら』攻撃始め!」
『ちょうかい』と並走し『あしがら』も同じぐらいの時刻に攻撃を開始。
互いに情報を交換するので命中精度は跳ね上がる。
これで同時に撃てるミサイルの数は四発になった。
観測をする機体もP-3Cが3機。
『ちょうかい』のSH。
そして『あしがら』搭載のSHだ。
レーダーの範囲が広すぎて向こう側の大陸が見える。
何か中国のような地形だ。
この国はやはり日本のような形をしているのか。
「目標α、速力3ノット。沈黙してゆきます」
「そこへ追いついた水上艦隊が砲撃を始めました」
ミサイルによる容赦のない攻撃の後。
シーサーペントは後から追ってきた戦艦大和を中心とする水上艦隊の砲撃を受ける。
水柱が海面に立ち上りシーサーペントの鱗が次々と剥がれてゆく。
あの鱗は言わば甲羅のような物。
自分の身を守る大切な身体の一部だ。
一枚一枚剥がれてゆくたびに大量の血が海にあふれ出してゆく。
そしてその血の匂いを嗅ぎつけ、別の脅威が迫りつつあった。
「此方、P-3C、αの両舷にサメらしき生物を確認。肉を食い荒らしている模様」
サメだ。
この世界にもサメは居るらしい。
小さな物から大きな物まで、種類は様々。
ついでに言うとその光景は結構グロい。
耐久がない人にはあまり勧められないような映像。
閲覧注意。
「目標α、完全に沈黙。潜水艦『じんりゅう』が微弱な音を探知!」
「恐らくαの死骸の沈降とそれに伴って発生した泡の音と思われます」
「また海上に無数の擬音を同時刻に確認した模様!」
あれ、潜水艦も潜んでいたんだ。
呼んだ覚えはないんだけど、どうも勝手に行動しているみたいだ。
此方からの指示を一切受け付けない。
でもレーダー上にはしっかりと味方の潜水艦として青い点で表示されている。
潜水艦だけはどうしても此方から関与が出来ないのだ。
まぁ、いいや。
きっと私の射程外なんでしょう。
潜水艦は。
「終わりました……」
「ぬ?」
「襲撃は終りました!」
王様はただ、唖然としていた。
何せただ座っているだけで敵を撃退できたんだから。
主に自衛隊と近代兵器の力で。
「おぉ……スープが完全に冷え切っておる」
「料理を温めなおしてくれぬかの」
パンパンと手のひらを叩くと後ろからメイドさん達が食器を下げた。
ついでに私の分も。
結局戦闘は料理が冷え切る前には終結せず、再び料理が温まるまで約20分ほど掛かりましたとさ。
めでたし、めでたし。




