入学
私は今、馬車に乗っている。年齢は10歳。言葉もしっかりと喋れていて且つ、相手が何を言っているのかも理解できる。髪の毛の色は銀髪でショート。腕や足は前世の17歳に比べて短い。顔立ちも心の中では一番心配していたけど、そこそこで服装も学園用の制服。セーラー服に似ているけど、良く見るとそうでも無いような、そんな感じ。
「シエスカ様。もう直ぐご到着します。荷物のご確認をお願いします」
「わ、分かりました」
私は馬車を引いているお婆さんから荷物チェックをしてほしいと言われたので、中身をチェックする事にした。と言ってもこの鞄の中は筆記用具とノートらしき物。そしてその下に休日用の私服や日用品など。もしかして今から向かっている学校は寮体制なのかな?
「着きましたよ、シエスカ様」
私は馬車の窓から思いっきり顔を出して外の風景を見てみた。そこはもうすっかり街中で道路や建物は基本的に石造り。木造建築もあったけど、雰囲気から察するに日本で言うお寺のような建物だった。それと少し川が多めで、町の外観はとても綺麗だった。
「此処が学園……?」
「さようです」
一際目立つその広大な建物が今日から入学して魔法や剣、学問などを学ぶ異世界学園だった。聞けば小学部から中等部、高等部まで揃っていて、今の私の年齢でも高等部へ入れるのだとか。その判定は魔力の源でもあるマナの測定。それとこの学園は魔法学重視。私、もしかして当たりを引いちゃった!? それとも一等賞?
「それじゃあ行ってきます!」
「後武運を……シエスカ様」
「はい!」
馬車はそのまま学園の入り口。校門を通り過ぎてもう見えなくなった。この広大な学園で魔法を学ぶとなるともうドキドキやワクワクが止まらない。それに、私は列記とした転生者。これがネット小説とかだったらきっと何かしらのチート魔法が使えたり……もう、心が躍るとかそう言うレベルじゃあない!
「新入生はこっちへ集まってください!」
この学校の教師のような人が新入生を噴水広場の中央に集めていた。学園に噴水!? 本当に異世界ぽいじゃあないですか! えっ、本当にこれ、私、とんでもない力を秘めていたりするの!?
「全員、集まりましたね。ようこそエリネスト学園へ。貴方方を在校生、教師一同歓迎します。まずは式典があるので、皆さんは講堂に集まってください」
これから三年間、を共に過ごすかと思われる生徒達が一人の先生に着いて行った。今から入学式なのでしょうか。着いた先はまるで大きな教会の礼拝堂みたいな場所。その石造りの椅子に適当ながら皆順番に座っていった。私も見よう見真似で席に着き両脇を女子に挟まれて式が始まるのを待った。広さは体育館並みかそれ以上で見た目は礼拝堂。天井には明るさを保つためにシャンデリラみたいなのが幾つも。本当に此処は学園なのだろうか。
「えー、これから入学式を執り行います。新入生総勢187人の入学を此処に歓迎するものとして訓示といたします」
そこからは入学式特有の眠気を誘う長々とした演説の後、在校生代表、新入生代表らが訓示と言うか挨拶みたいなのをして、入学式は思っていたよりも早く終わった。来た来た、これから私は異世界の教室へ行くんだ!
教室へ着くと、日本の教室と内装はほぼ同じで、違う点と言えば黒板は緑じゃあなくて白。教室全体も大理石のような石造りで机も石造り。椅子も同様で、どうやら教室は皆、同じような構造らしい。廊下も石造りで同様の石で出来た柱が何本も天井と床を支えている。そして、あまりにも殺風景。意外とテンションが下がるものだ。
結論から言おう。学園は全体、石造りだった。木材なんか一切無い、カッチカッチの石。机はとっても冷たくて夏はちょうど良くて冬はアイスよりも冷たそうな感じ。でもいたるところに迷彩とかは施されている感じなので一面真っ白と言うわけではないみたい。
「注目ー」
私が机や椅子、教室の全体を見渡していた中、一人の女性教師が白い黒板の前に立って居た。第一印象はとてもふわふわした雰囲気。
「今日は自己紹介をしてもらった後に魔力の測定を行いまーす」
「では先ず前列の人からお願いしまーす」
自己紹介は終り、ドア側の前列に座って居た男子が立って、移動式の柱に手を当てた。先生曰く、左手、右手、どちらでも構わないのだとか。私は前世も今も基本的に右利きだったので、右手を当てようかと考えていた、そんな時。
「出ましたー」
「これが俺の測定値?」
「測定値と言っても標準ですよー?」
その男の子の前に文字列が浮かんだ。其処には剣の腕が34、マナが112と表示されていた。えっ、魔法の学校なのに剣の腕も測るの?
「良い質問ですね! シエスカ・エーレットさん。我が校では、魔法と動揺、剣の腕も鍛えているんです。また剣の腕があまりにも上達していると、剣学科と言う科目があって、其方へ移動する場合もあります。皆さんも気がついた事があったらジャンジャン質問してくださいねー」
(私まだ何も言っていないのに……)