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カップ麺

 報酬1600万V。これだけの額を前にされては、私も断りきれずにしぶしぶ了承した。本当はしたくなかったけど。作戦発動は三日後。授業も先生が不在なので行われず私はただただ、ベットの毛布に顔を埋めていた。これで、とうとう、私はドラゴン使いとして認証されてしまうのだ。本当はごく平凡に過ごしたかったのに!


「あぁ、また毛布に埋めているー。起きて下さいー。たまには外に出ましょうよー」

「私の頭の中は今。パンク寸前なの。だから今日は外に出ない」

「ご飯はどうするんですかー」

「そりゃあ……誰かが運んできてくれれば嬉しいわねー」

「むぅ……」


 あぁ、毛布てっ。何でこんなにも暖かいのだろうか。お陰で私の心は段々と浄化されてゆく。奪取作戦はあの竹富さんとか言う自称プログラマーややってくれているし。私はそれまでこの中で暮らしてゆくのだ。出来る事ならルームサービスなんかがついてくれたら私はとても楽なのになー。こうやって荒らしたベットも結局は自分で干したり整えたりしないといけないわけで。


「そう言えばシエスカさん! 先生方の奪取作戦に参加するらしいですね!」

「……シャール。何処からその情報を仕入れたのかしら。ソースを早よ」

「えっと、校内ではもっぱらの噂ですよ? 噂のドラゴン使いが先生達を助けに行くーだとか」

「あぁ……もう私、ドラゴン使いとして扱われているのね……」

「どうしたんですか。この世の終りみたいな表情をして」

「だって、だって、本当はごく普通の。そう! ごく普通の女の子として学園生活をやり直したかったのよ! それがこうも有名になってゆくなんて」

「有名になるなら良いじゃあないですか」

「私は良くないの!」


 ところで、不意に気になった事がある。すでにヘリコプターがドラゴンと呼ばれているのなら。地面を颯爽さっそうと駆ける車は? 空の上を音速で飛旅客機は? 海の上を走る船は? ……果たしてどう呼ばれるのだとうか。もしかして、それらも全部、ドラゴンと呼ぶつもりなのだろうか?


 前世では普通にあった電車やモノレール、新幹線やタクシーもトラックも。まとめてドラゴン。もしくは鉄の塊と呼ぶのだろうか。新幹線にいたっては颯爽と走る鉄竜なんて呼ばれたりするのだろうか。……ドラゴンかぁ。私にとっては想像上の生物でしかなかったけど、彼らにとってみればこれらの技術の結晶はみんなまとめてドラゴン。もしくは一番強い何かで例えたがる物なのかな。


「シエスカさん。もうお昼ですよー。食事に行きませんかー?」

「うーん。今、何か考えているから今日はパスでー」

「パス? まぁ、いいですか。じゃあ、私一人で行って来ますねー」

「はいよー」


 そうだ。この世界にはもしかしたらパスと言う言語も無いのかも知れない。さっき普通に言ったけど、ネット用語なんかもこの世界には存在しないのだ。シャール達にとっては全くの未知なる言語。それだけでも、私てっ随分とヤバい存在なのかな。


 でも、本当に私は一個人として普通の高校生ライフを送りたいだけなのだ。……年齢は10歳だけど。でもでもシャールだって見た目は10歳より上か下かぐらいだし。年なんて関係ないよね! ……ないよね?


「暇ね」


 シャールが一人で食べに行ったので、この部屋は今。私一人だけ。とっても暇である。友人を呼んでも良いのだけど、その友人と言えば精々、食べに行ったシャールと、何処の部屋かも知らないアリスちゃん。ただ二人。あれ、もしかして私。この世界だと友達作りに失敗しちゃったかな。


「召喚……!」


 ……思ったとおりだ。どうやら私の召喚魔法は何も軍事に限った事ではないらしい。今、不意にお腹が空いたから適当に食べ物を連想して魔法を使ってみたけど、今でたのは出来たてのカップ麺なのだ。ヤッター! 出来たてのカップ麺だー!


「……うん。おいしい」


 久々に食べるカップ麺。このカップ麺すらもこの世界にとっちゃあオーパーツなんだろうな。この割り箸も。そしてこの入れ物も。そして何より、たったの三分で調理が出来てしまう事も。そう言えばカップ麺が誕生したのは一体何年で誰が作ったんだっけ。時々疑問に思う事がある。


 新幹線を作った人は実は海軍軍人と言うのは興味本位で調べて知ったことだけど、一体誰がカップ麺を作ったのだろうか。でも、今はそんな事より、カップ麺がおいしい。約三ヶ月ぶりのカップ麺。あいや、前世を足すと一年ぶりぐらいだろうかな。でも、そんな事よりカップ麺おいしいです。


「ご馳走さま」


 割り箸を容器の上に置いてベットへログイン。でも、どうしようかな。このゴミは。この世界にとって、このゴミもいわばオーパーツ。むやみに捨てるわけにもいかない。此処はティーガーを収めたあの方法でゴミを始末するとしようかな。


「よっと」


 私は食べ終えたカップ麺の容器を持った。そう。これだけで召喚した物は全て消える。勿論、頭の中で消したい物を思い浮かべれば直ぐなのだが、こっちの方が何と言うか……そう。実感があるのだ。そして、とても満足した。意外と一杯だけでも量は多いものだ。


「ただいまー。もうシエスカさんが来ないから結局一人で食べる事になったじゃあありませんかー」

「おかえりー」

「あれ、シエスカさん。もしかしてもう食事は終わったんですか?」

「えっ? うん。まぁ」

「もしかして召喚魔法を……?」

「いや。してない」

「……怪しいですねー」

「してないよ!」


 こうして、作戦発動までの三日間は過ぎていった。そして翌日。先輩や先生方を奪取する作戦が始まった。

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