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26 ムッツリとぐっすり

 枝豆狩りは成功と言えよう。始める前は暑さで嫌がっていた金束さんも途中からは無我夢中で収穫を楽しんでいた。


「見て見てっ、枝豆がいっぱいついているわ!」


 採る度にいちいち見せてくるのも微笑ましいと思える。

 最初はどうなるかと焦ったけど無事に終わりそうでホッと一安心だ。


「きゃ」


 枝から豆が落ちる。……金束さんの胸元に入った。

 金束さんは慌ててジャージのファスナーを下ろして服の中に入った枝豆を取ろうとする。ジャージが開かれ、白のアンダーシャツが露わになる。指を潜り込ませるそこには深い谷間に沈む枝豆。

 え。枝豆が谷間に挟まって……っ、っ。


「っ!? 何こっち見てるのよ変態!」

「ひっ、ご、ごめんなしゃい!」

「ママー、またカップルが何かしてるー」

「そうね、あれがイチャイチャよ。覚えておきなさい」

「イチャイチャじゃないわよ! か、カップルでもないんだから!」

「だからどうして下顎に的確な拳を叩き込んでくるの!?」











 夢中で収穫するうちに、ビニールハウスの蒸し暑さによって汗ばんだ服の下。熱気が一気に放たれるように開かれた胸元と、ほんのりと透けた白のアンダーシャツ一枚では抑えきれない豊満な胸。見事な谷間に沈んだ枝豆に、汗かいた金束さんの色気、とてもとても眼福でした。

 ……待って。今日の出来事を思い返そうとしたのになぜ僕は冷静に感想を述べているんだ。マジで変態だよ。今日一日のハイライトが金束さんの胸元だけって……。


「早く茹でなさいよ!」

「い、今やっています」


 リビングから鋭利な声が飛んでくる。意識を鍋に戻して、枝豆と向き合う。

 枝豆狩りを終えて、金束さんを連れて自宅に帰ってきた。

 現在、僕はキッチンで枝豆を茹でて、金束さんはリビングで待っている。早くしなさい早く茹でなさい、と急かす声が僕の背中にぶつかる。

 枝豆狩りは成功と言えよう。そして本番はここからだ。

 最終目的は枝豆ビール。自分達で収穫した枝豆を食べながら飲むビールの美味しさこそが僕らの欲しかったもの。さあもうすぐだ!


「早くしなさ、い、よ……」

「わ、分かったって」


 金束さんだって無我夢中で楽しんでいたじゃないか。僕だって楽しかったんだぞ! 今日一日を振り返る余韻くらいくださいよ! よし、もう一度今日の出来事を振り返ろう。

 ……きょぬーってすごいなぁ。大きくて、下側に魅惑的なカーブを描いて、形も良かった。あんなモノをあんな間近で拝めるとは。もし金束さんが水着姿になったらすごいことに、ってまたしても厭らしいハイライトになってる!? 僕のムッツリ度の方がすごいことになってる!


「振り返るのはやめだ! 枝豆を茹でよう! 茹でるんだ! ……あ、しまった、胸に挟まった枝豆にマークするの忘れてた。あれは是非僕が食べたかっ……あぁまたしても!?」


 僕は本当にムッツリスケベなのかもしれない。変態度も高い。自分自身にドン引きだよ。犯罪予備軍の声も否定出来ないや……。


「ゴホン! よし、できた」


 女性とほぼ接点がない人生だったのだから興奮するのは仕方がないと自身をフォローして、僕は茹であがった枝豆をお皿に盛る。ホクホクの湯気と、美しい緑色が食欲とビールをそそる。

 いかがわしい想像はやめて枝豆ビールに興じよう。待ちに待った実食だ。


「金束さん、ビール用意してある?」


 お皿を持ってリビングに入る。返事はない。先程まであんなにうるさかった金束さんは静かで、動かない。


「すー……すー……」


 座布団を枕にして横になっている金束さん。なんと、眠っていた。


「え、えぇー……?」


 寝ている……? え……寝たの!?

 今からが本番だよ? 茹でたての枝豆を食べてこその枝豆ビールの良シチュエーションなのに。

 早くしないと枝豆が冷めてしまう。冷めた枝豆を電子レンジでチンしてもそれじゃあ意味がない。今すぐに食べないと!


「こ、金束さーん? 起きてー?」

「すー……」

「駄目みたいですね」


 こ、この人は……! 僕らが暑い中、頑張ったのは今この瞬間を迎える為だったのに! 疲れて眠っちゃいましたテヘ、だとぉ!?


 ……疲れた、のね。


「金束さん頑張っていたからね」

「んん……すぅー……」


 普段は怒ってばかりの金束さんが、いやまぁ今日も怒ったり不機嫌だったけども、今日はいつもと違って楽しそうだった。笑顔で枝豆を採って、その度に僕に自慢してきて、嬉しそうな表情を浮かべていた。

 無理に起こすのはやめておこう。メインイベントの枝豆ビールはまた今度の機会に。


「今回こそは美味しいと言わせるつもりだったのになぁ。……この寝顔を見たら何も言えないよ」


 僕は溜め息をついて腰を下ろす。

 熱々の枝豆に塩を振り、口に放り込む。市販の品とは比べものにならない美味しさの枝豆。数粒で幸せになった口の中にビールを流し込む。

 ん、めちゃくちゃ美味しい。今日の疲れがぶっ飛ぶ美味しさだ。

 それは、横で安らかな寝息を立てて眠る金束さんがいるから、なのだろうか。


「金束さん、乾杯」

「ん……」


 返事するかのように寝言が返ってきて僕は思わず笑う。ビールが美味しい。

 枝豆狩り後のビールは大成功だ。僕は一人、隣で眠る少女を眺めながら充実感の に浸り、ビールを飲んだ。











「うーん……すぅ、すぅ……」


 ……黒ジャージの上からも分かる立派なお胸が呼吸によって上下していた。

 今、金束さんは寝ている。疲れているから簡単には起きないと思う。そっとファスナーを開ければ、絶景。眺めながら枝豆を食べたい。欲を言うなら谷間に一回沈ませてから枝豆を食べたい。それが今なら可能……いやだから僕は変態か!? ガチの変態かっ!

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