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125 雪山ビールと大決戦2

 その後も基礎をレクチャーし続けた。

 月紫さんと金束さんが自力で立ち上がり、拙くとも木の葉滑りが出来るようになった頃には辺りが暗くなり始めていた。


「滑れましたっ。ありがとうございます水瀬君っ」

「ふん」

「ソウダネー。何度も説明した通り、斜面に対してボードを横にしたらスピードは出ないよ。何度も注意した通り、ゆっくりゆったり滑れば大丈夫ダヨー……」


 二人が階段を踏み外したみたいにズルズル滑る姿を眺め、僕は息絶え絶えになって膝をつく。

 つ……疲れた。何これすんごいキツイ!

 何時間かけて教えただろうか。何時間の間、険悪なムードに耐えただろうか!

 金束さんの手を握って教えたら月紫さんが寂しげな瞳で訴えかけてくるし、月紫さんの手を握ると金束さんが睨んで怒ってしょんぼりする。


「ぬ゛あ゛ー……!」


 そら濁った声が漏れるよ。

 どちらかを教えつつ、もう一人もフォローする。秒単位で二人を交互に気遣った。気を遣いまくった。

 精神がボロボロになって当然だ。死ぬぅ……。


「流世、宿のチェックインは済ませた。荷物も運び終えたし、流世が持参した例のブツは冷蔵庫に入れといたぞ」

「不知火テメェ今までどこにいた」

「上級コースだ」

「道理で姿を見なかったわけだ」


 頂上から中腹まで滑り、中腹のリフトから頂上へ上がる。そうして不知火は難易度高くとも滑り甲斐あるコースを堪能したのだろう。

 ガッツリ滑るやーつだ。僕がやりたかったやーつだ!


「一応お前らの様子は見ていたぞ」

「ほお? それで?」

「あ?」

「僕じゃなくて不知火があの二人に教えてあげなよ!」


 すげー上手いじゃん。教えるなら僕より不知火が適任なのは見て明らかだった。

 なのにお前は一人で滑りやがった。あぁん?


「馬鹿か流世テメェはよぉ。俺が教えても意味ねぇだろ」

「なんで!? 不知火はあんなに上手いのに!」

「上手い下手とか関係なく月紫と金束はお前に……あー、俺が言うことじゃねぇよバァーカ」

「はい!?」

「つーか女子二人にスノボ教えてイチャつけたんだから役得だろうよ。世の男子大学生が羨ましがる思いをしておいて文句あんのか?」

「べ、別にそんなこと……あっ、ま、待て不知火ぃ!」

「うるせぇ。そんだけ元気なら歩けるだろ。早くついてこい」


 不知火は自分と僕のボードを持って宿の方へ歩いていく。背中の『みっくみくにしてやんよ』の文字がイラッとする! あぁん!?


「温泉入って飯食おうぜ。晩飯は鍋だとよ。ネギが俺を待っている」


 まだ文句は言い足りない。

 だが……チェックインの手続きや部屋に荷物を運ぶ等の、スノボ後だと地味にしんどい&めんどい作業をしてもらったから何も言えない。今なんて僕の分のボードも運んでもらっている。


「ぬ、ぬぐぐ」


 それに、月紫さんと金束さんが一度もナンパされなかったのは不知火が目を光らせていたからだろう。

 上級コースを滑りながらも下にいる僕らを逐一見て、男が近づこうものなら追い払っていたに違いない。不知火はそういう奴だ。

 そんなんされたら文句は言えない。言えねぇ……ぬぐぐ……!


「お、落ち着け。あと少しでメインイベントだ。……よし、行こう!」


 空いた両手で頬を叩き、喝を入れる。


「そういやあの二人は……?」


 少し歩くと、月紫さんと金束さんが座り込んでいた。


「み、水瀬く、ひゃう~……」

「アンタ歩けないの? ふん、貧弱ね。私はりゅーせーと先に行、っ、あぎゅ……!?」


 スノボ初体験。全身に力を入れすぎたのであろう二人は疲弊しきっていた。

 歩けたとしてもボードを運ぶのは無理。となると僕が……あ、だから不知火は僕の分のボードも持ってくれたのね。


「あ゛ー……あと少しだから頑張って」


 濁った声を漏らすも、すぐに喝を入れ直す。僕は二人のボードを両脇に抱えた。

 永湖さん金束さん、頑張って歩こう。そんでお前はもっと頑張れよ水瀬りゅーせー……!











 疲れた。一限から五限まで講義を受けた後に深夜までバイトした時よりもキツイ自信がある。え、普通の大学生ならそこから朝まで宅飲みをするって? 頭おかしいね。

 僕はもう動けない。肉体的にも精神的にも疲労困憊。今すぐに眠ってしまいたい。


 だからこそ、楽しみだ。


「良い湯だったな」

「そうだね!」

「なんだ流世、随分と回復したな」


 筋肉隆々の大男が浴衣に着替える横でガリガリ半裸の僕はニッコニコ!

 疲れたよ。さっきまでゲッソリしていた。

 だからこそなんだ。疲れたからこそ今しがた入った温泉が身に染みて、疲れたからこそ飲むビールが美味しくなる。


 待ちに待った、ビールの時間だああ!


「よっしゃ行こうぜ不知火!」

「マイフレのテンションがたっけぇ」


 温泉を出て部屋に戻る。男部屋には四人分の鍋セットが用意されていた。

 夕食は部屋で食べることが出来る。ありがたいね。


「まぁ俺も夕食を一番の楽しみにしていたからテンション上がってるけどな。火を点けるぜ」

「ちょっと待て、金束さんと月紫さんがまだ……あ、来た」


 不知火がクリスマスケーキを目の当たりにした子供のような嬉々とした顔でガスコンロの火を点け、僕が備え付けの冷蔵庫でビールの冷え具合を確認していると、女子二人が部屋に入ってきた。

 温泉はどうだっ……ん? 二人の様子がおかしい。


「むぐぅ……大きかったです……」

「ふふんっ、雑魚だったわ」


 月紫さんは悔しげに俯き、金束さんはフル単を取った並みのドヤ顔を浮かべて胸を張っていた。哀と喜の対照的な感情を見せていらっしゃる。

 温泉で何かあった? また喧嘩したのかな……。


「どうしたらあんなに大きくなるんですかっ。教えてください」

「特に何もしていないし、秘訣があったとしてもアンタには教えないわ」

「い、言っておきますけど私は平均よりは大きいんですっ。あなたが異常なだけです」

「負けは負けでしょ。はい私の勝ち」


 スノボ終了直後はグッタリしていたのに元気だね。


 それはともかく……っ、やはりこの二人の湯上がり姿は色気がすごい。

 スキーウェア姿に見惚れたばかりなのに、浴衣姿も一段と素晴らしくて魂を吸われそうになる。温泉に浸かるよりも体が火照ってきた。


「そういう喧嘩は女部屋に戻ってからやれ。さっさと座れよ」

「いやらしい目でこっち見ないでキモイ」

「あ? 見てねぇだろうが」


 美女子二人の湯上がり姿。男なら凝視してしまう。

 だが不知火は鍋のみを見つめていた。正確に言うと、鍋の中のネギを見る。このネギ星人め。


「りゅーせー……」

「不知火はネギに夢中なだけだよ。あと怖いなら喧嘩を売らなければいいのに」


 金束さんが涙目で僕に身を寄せてきた。

 浴衣姿でくっつかれるのは、ドキドキしますね……。


「水瀬君ーっ」

「なんで月紫さんもくっつくの?」

「あ、アンタは離れなさいよ!」

「あ゛あ゛テメェらのそれもういいから。食う準備をしやがれ」


 不知火が鬱陶しいと言わんばかりに怪訝な顔をするも、鍋の火加減を注視する。

 煮えたらしく、強面が満面の笑みになった。

 それでは、夕食の始まりだ。


「ふむ、下仁田ネギか。さすがの厚みだな。太くて柔らかく、甘みがあって美味しい」


 ネギ厨の不知火が次々とネギを食らう。それでも食べ足りないらしく、持参したネギを追加投入していく。

 ネギを持参ってマジかよ。まぁ僕もビールを持参してきたけど。


「美味しいですっ。水瀬君も食べていますか?」

「りゅーせーはガリガリなんだからもっと食べなさいよ」

「珍しくあなたと意見が合いましたね。水瀬君はいっぱいたっぷりどっぷり食べましょうっ」

「私がよそってあげるわ。感謝しなさい」


 目の前で不知火が一心不乱にネギを貪り、両隣では女子二人が僕に肉を食わせようと躍起になる。熱い熱い、ダチョウの倶楽部みたいに顔面に押しつけないで。


「この抜群の煮え具合、さすが俺だ。そしてさすが俺ん家のネギだ」

「水瀬君、あーんっ」

「私が食べさせる!」


 僕は顔面に執拗な肉のビンタを受けながらも今日一日を振り返る。

 なんだかんだあったが一日目のスノボが終了。疲れたけど楽しかった。とても良い気分です。


「お肉が熱いですか? フーフーしますねっ」

「わ、私だって……フー! フーフー!」

「おい女子二人、流世にはネギも食わせろ」


 両隣から息を吹きかけられて、前方から極太のネギを差し出されているけど、ま、まぁそういうこともあるよね。

 今日一日頑張って良かった。

 夕食を済ませたら後はグッスリと寝るだけだ。明日に備えましょう。


 後は寝るだけ?

 そんなわけないよね。


 寧ろ、ここからが、本番だ!


「僕はこれくらいでいいよ。ビールを飲むから」


 三方向から押しつけられていた肉とネギを食べて僕は立つ。冷蔵庫から缶ビールを取り出す。アサヒのスーパーなドライ。

 本日のメインイベント。三大の最後、雪山ビール!


「条件は整った。いよいよだ」


 僕は窓際に移動する。障子をスパーンっ、と開ける。





 圧巻だった。



「おお……!!」


 まさに圧巻の、幻想的な光景。

 ナイター設備の照明が雪山をライトアップ、天から舞い降りてくる粉雪も照らす。

 日中とは別世界の、大自然の夜の姿。雪が光によって銀色に輝く。

 写真や映像で見るのとは違う、実際に見ないと伝わらない感動が目の前に広がっていた。


「もう待てない! いただきます!」


 絶景を見て息を飲む。続けてビールを飲む。

 この時を待っていた。この瞬間の為に、僕は今日一日頑張った!


「んぐぐぐ……っ! ぷっっっっはあぁ!」


 三秒だ。あっという間に飲み干した。

 腕がダラリ、と下がる。空になった缶を握り潰す。


 全開の喉をビールの激流が通過。たちまちアルコールに酔う。一度ならず連続で意識が吹き飛ぶ。ビールが血流に混じって全身を駆け巡っていき、細胞一つひとつに染み込んでいくかのようだ。

 それが良い。たまらない。

 喉の内側から無数の棘が突き刺さる。頭の先から足の爪先まで震える。爽快で刺激的。たまらない。


 か……感激だ。美味い。雪山ビールが美味すぎる。


「最っっ高だ……」


 去年の冬もこうして飲んだ。あの時もあまりの美味しさに失神しかけたよ。

 ああぁあん美味しすぎるよぉ!


「すっげぇぜ……ヤッベェぜ!? こいつぁ最高だ!」


 冬のシーズンのみ、滅多に来ることがないスキー場、長距離の運転、スノボで疲労困憊、温泉で癒され、外は寒いけど中は暖かい、幻想的な夜の銀世界。

 ワン・フォー・雪山ビール。オール・フォー・雪山ビール。

 ビールを美味しくさせる要因がいくつもある。それら数多の要因が集約され、圧倒的で感動的な美味しさを生み出す。

 最高にして最高峰のシチュエーションが今ここでようやく出来上がったのだ。


 何度でも言いたい。

 言わせてくれ。

 雪山ビール、最高だ……!!!




「ちょっとりゅーせー! 一人で勝手に飲まないでよ!」


 このまま死んでもいい。失神しかける僕の隣で、金束さんが何やら声を荒げていた。


「えへえ?」

「な、何よその気持ち悪い顔」


 あらら、金束さんが驚いている。僕の顔そんなにキモイ?

 普段の僕なら金束さんに怒られて悲鳴をあげていただろう。だが今の僕は無敵だ。『むがー!』級の怒号をぶつけられても効かないし聞かない。

 ただひたすらに雪山ビールの素晴らしさを堪能する。あぁん美味しい~。


「か、乾杯するわよ! ねえ! りゅーせー!」

「えー」

「な、何よ」

「どうせ金束さんは『これも季節限定よ!』とか言って満足しないでしょ」

「そ、そんなことない」

「はいはい。勝手に飲んでいてくださいな」


 こちとら日中はあなたの面倒で精神を削られたんだ。興まで削がないでいただきたい。

 無論、感謝はしているよ。金束さんに振り回されたことも糧となって今のビールの味が格段に上がっている。


 気を取り直して、と。

 二本目のビールを用意。プシュっと開封。飲み口を下にして缶は垂直。今度も三秒で飲み干した。


「っっっくうぅ~! 美味い! もう一本!」


 今なら無限に飲める! ありったけのビールを持ってこーい!

 あっはははは! 宴だ! 幸せだ! 最高だ!!






「な、何よ一人で勝手に盛り上がって。無視しないでよ……」

「水瀬君水瀬君っ、私もビールを飲みますっ。乾杯しましょうっ」

「黙って! 私とりゅーせーは忙しいの!」

「水瀬君に無視されているくせに?」

「う、うぐ……。ふんっ、どうせアンタも相手にされないわ!」

「そんなことないです。私なら水瀬君は一緒に飲んでくれますっ」

「っ、い、嫌、やめて! りゅーせーに近づかないで!」

「また邪魔ですか。いいでしょう。まずはあなたを倒します」






 最高。最高。最高だ。えっへへぇ。


「……い……りゅ……おい、流世」


 ん?


「流世、おい流世」


 不知火に肩を叩かれた。


「あれ、僕は……」

「やっと反応してくれたかマイフレよ。三十分は声をかけていたぞ」

「マジすか」


 どうやら雪山ビールの美味しさに意識がトリップしていたらしい。

 僕の足元にはいくつも缶が転げ落ちていた。パッと見ただけで五、六本。こんなに飲んだの? 引くわー。でもやっぱ心地良いわー!


「呼び起こしてくれてありがとう」

「で、美味しかったか?」

「もちろん! レポート用紙持っている? 今なら十枚あっても足りないくらいの感想を書けるよ!」

「すごいな。そんでヤバイな」

「ヤバイね!!」

「う、うるせぇ。デシベル下げろ」

「ぶへへ~」

「あ?」

「ぶへへへえぇぇぇえ~!!!」

「お、おう」


 不知火が引いていた。構うもんかーっ。


「僕は大満足だよ。でもおまけにもう一本!


 何本目なのかも分からないビールを一気に流し込んで息をつく。

 聞こえていなかった不知火の呼びかけが聞こえた。つまり心の底から満足したってことだ。ここら辺でお開きとしましょう。

 ありがとう雪山ビール。また必ず会いに来るよ。


「Fu~! うしっ、寝る準備をしようか」

「それより、あー……あれをどうにかしてくれ」


 あれって何? 



 ……え?



「ひゅぐうぅ……」

「む、むがー……」


 月紫さんと金束さんがテーブルに突っ伏していた。その周りには缶や瓶が落ちている。

 思わぬ光景に目はビックリ、続けざまに鼻も異変を感じ取った。部屋がお酒臭い。僕が飲んだビール以外にカクテルや日本酒の匂いが充満して……へ?


「な、何があったの」

「流世が無視するからあいつら飲み勝負を始めたんだぞ」

「へ?」

「俺が止めても飲み続けるし、何なら俺は審判しろと何度もせがまれたんだぞ……」


 僕がトリップしている間に何が起こったのか。それを語る、お酒の空き缶と空き瓶、倒れた二人と、困窮した不知火。

 月紫さんと金束さんが飲みバトルを……? な、なんでえぇー……?


「どうするんだよ」

「ぼ、僕に言われても」

「寝る準備は俺がしておくから流世はあの二人をなんとかしろ」


 不知火がそそくさと布団を運びに逃げていく。

 ……僕は恐る恐るテーブルへと近づく。


「二人とも大丈夫?」

「まだ飲めます……」

「私だって全然平気よ……!」


 良かった、意識はあった。

 月紫さんと金束さんはテーブルから顔を上げると、互いを睨みつけた。

 まだ対決は続いているらしく、二人は手を這いずらせて新たな缶を掴む。え、えぇ?


「い、いや、飲めるかどうかじゃなくて。飲みすぎは良くないよ?」

「アンタが言えた義理?」


 お、おっしゃる通りです。


「水瀬君が私達を置いてビールを飲んでいたからですよ」


 お、おっしゃる通……ひえぇ……。


「アンタまだ飲めるわよね」

「当然です。私はまだ元気です」

「私の方が元気よ」

「私の方が元気モリモリです」


 二人はカクテルの缶を開封する。

 どちらも顔は赤い。目はとろーん、としている。酔っているのは見て明らか。

 しかも……どちらも浴衣がはだけており、どちらも下着がチラ見えして……はわあぁん!?


「ち、ちょ、一旦落ち着こう!」


 浴衣がはだけて胸元や足元が露わになっているよ!?


「「んぐ、んぐ……」」


 あ、ああ、ガブガブ飲んでいる……。


「こ、金束さん、そんな飲み方をしたら駄目だよ。あなたが嫌いな大学生の飲み方じゃないか」

「うるしゃい」


 金束さんが僕を睨みつける。潤んだ瞳で睨みつけて、瞳から涙が零れる。


「……えぇと、なんで泣いているの?」

「りゅーせ~が無視すりゅからでしょ…………ぐすっ」


 ……ぐすっ? ……うるしゃい……?



 …………はっ!?


「ままま、まさか、金束さん、酔っ……!?」

「うるしゃい! りゅーせーが私を無視、ぐすっ、するのがいけないんでしょ! ひっく……!」


 あ、あぁ、た、大変だ。

 金束さんが酔っぱらっている。金束さんが……泣き上戸モードになっている!


「ひっく、えぐっ、りゅーせーの馬鹿ぁ……!」


 金束さんは泥酔すると泣き上戸になる。大泣きするのだ。こうなった金束さんは手のつけようが……あわわっ……!?


「りゅーせーと一緒にビールが飲みたいだけなのに……うえぇん……」

「や、ヤバイ、涙が止まらない……!?」


 飲んだ量だけ涙を流すだろう。その間、金束さんは僕に思いきり抱きついてくる。

 はだけた浴衣姿でそれをされるのは、とてつもなくヤバイ!


 ぼ、僕一人では対処出来ない。ここは月紫さんにも手伝ってもらおう。


「永湖さん、飲み対決は中断し」




「水瀬くん~っ」


 ……つ、月紫さん?


「水瀬君のお顔が三つあります~っ。ナッシーです~っ。どれも可愛いです~っ」


 月紫さんの顔がとろーんの騒ぎじゃない。緩みに緩みまくっていた。

 声は普段よりも弾んでいて語尾も緩みまくり。おっとりぽわぽわのオーラが極限にまで濃くなっている気がする。


 え、もしかして……月紫さんも泥酔……!?

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