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ゲームに三国志の武将が封印されていたから解放するために戦ってみる (旧題:三国志~武幽電~)  作者: 伏(龍)
第3章

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59 両眼

 仲間たちの頼もしい姿に玄は小さく頷くとVSを手に取る。


「わかった、じゃあ行こう。うまくすれば今日中に蜀だったあたりに辿り着けると思う」


 新たな決意を胸に一行は西へと向かう。三国時代、蜀と呼ばれた劉備玄徳の国へ……



◇ ◇ ◇



「な、なんだこいつは!」


 必殺の間合いからの一撃を撫でるような手の一振りであしらわれ、余波で数メートルを弾き飛ばされて驚愕の声をあげる。


「淵! うかつに近づくな! 接近戦は俺に任せ、後方より弓で援護を頼む!」


 身の丈を越える長大な戟を華麗に操りながら、もうひとりの武将が斬りかかっていく。武器のリーチを活かし、うかつに近寄らぬようにしながらの立ち回りである。


「惇兄! こいつはやべぇ! 無理する必要はないぜ!」


 そんなことを叫びつつも目にも止まらぬ速さで弓を構えて一度に三矢を放つ。その技量は並ではない。


 放たれた三矢は敵へと斬りかかる漢の動作を読んでいたかのように首筋、右の脇の下、股の間をぎりぎりでかすめて完全に死角から敵へと向かう。さらにその矢にあわせて間合いを詰めていた漢が長戟を振るう。


 カッハァァァァァァ


 しかし呼吸とも、声とも判別できない異様な音を吐き出しながら馬鹿げたサイズの方天戟を軽々とひと回しして、全ての攻撃をいとも簡単に弾き返される。


「惇兄!」

「吠えるな淵! 我らがどこへ向かっている途中だったか忘れたか! こいつの進む方向はそこと同じなのだぞ」


 方天戟に軽く弾かれただけで痺れている手に自らで活を入れつつ、目の前の敵へと間断なく攻撃を仕掛けならがら叫ぶ。


「……そうだった。すまねぇ、惇兄」

「我らが夏侯一族。たとえ幾度(いくたび)生まれ変わろうとも曹孟徳の臣。こんな化物を孟徳の近くにやる訳にはいかん!」


 男が吼え、長戟を敵へと突き付ける。


「我が名は夏侯惇 元譲! ここから先は通さぬ!」


 夏侯惇がふたつ(・・・)の鋭い眼光を放つ。


「へっへ……さすがは惇兄、頼もしいぜ。俺の名は夏侯淵 妙才! おれらふたりを抜けると思うなよ!」



 夏侯惇かこうとん 元譲げんじょう


 曹操と夏侯淵の従兄弟に当たる(演義では夏侯淵の兄)。曹操の旗揚げ当時からの宿将であり、数々の戦を共にした。

 中でも壮絶なのは呂布(りょふ)との戦いの最中、呂布の将を追撃する夏侯惇を陣中から狙った敵将、曹性の放った矢が夏侯惇の左目を射抜いたときである。なんと、夏侯惇は刺さった矢を眼球もろともに引き抜き、「父之精母之血不可棄也(父の精、母の血、棄つるべからざるなり)」と叫びこれを喰らい、左目を射抜いた曹性を次の矢を番える間もなく顔を突き刺して討取ったという話であり隻眼の将として有名である。

 性格は高潔で慎ましやかであり、お金が余れば人に配り、日頃から学問や鍛錬に励んだという。

 曹操からの信頼が最も厚かった武将で、車への同乗や、曹操の寝室への自由な出入りが唯一許されていたという。

 曹操自身も『不臣の礼(配下として扱わない特別待遇)』として、夏侯惇に対して魏の官位を与えようとしなかった。



 夏侯淵かこうえん 妙才みょうさい


 曹操と夏侯惇の従弟に当たる(演義では夏侯惇の弟)。弓の名手。

 夏侯惇と同じく、当初から曹操の腹心として戦場を駆けた猛将。曹操軍の主力の一人として曹操に従って転戦し、その勇将ぶりで、幾度も戦功を立てた。

 ある時は先鋒として速さをもって敵に当たり、ある時は後方を固めて軍を支援する万能の将であった。

 しかし、建安24年(西暦219年)、劉備軍と定軍山で対峙。

 夏侯淵は張郃(ちょうこう)に東方の陣営を守らせ、自分は南方の陣営を守ったが張郃(ちょうこう)が苦戦したため、自分の兵の半分を援軍に向かわせた。しかしそこを蜀軍の軍師法正(ほうせい)の策によって、蜀の老将黄忠(こうちゅう)に高所から奇襲を仕掛けられ、苛烈に攻められて戦死した(定軍山の戦い)。

 夏侯淵は幾度も戦勝を収めているものの、曹操は「指揮官には勇気ばかりではなく、時には臆病さも必要で、行動するときは知略を用いよ」と戒めていたという。



「だが、惇兄! こんな化物を倒せるのか?」


 夏侯淵が相手の足を止めるべく散発的に矢を放ちながら、いったん間合いを開けて下がっていた夏侯惇に声をかける。


「倒せなくともよい。今はとにかく時間を稼ぎ、孟徳が移動してくれていることを祈るしかない」


 夏侯惇が忌々しげに相手を睨みながら答える。


「まさか、両目の惇兄ですら時間稼ぎしかできないとはよ……」


 夏侯淵が悔しげに唇を噛む。


 隻眼の将として名高い夏侯惇だが、この世界においてはなぜか潰されたはずの左目も完全に復元されていた。長年、隻眼で不自由な戦いを強いられてきた夏侯惇はここに来て完全に覚醒した。

 生前とは比べものにならないほどの広い視野、そして見えすぎるくらいの動態視力。

 戦闘においてもっとも重要な要素が一気に倍になったことは、夏侯惇の動き自体のレベルを数段上にまで一気に跳ね上げたのだ。


 ここまでに幾度かの戦いを経てきたが、いずれも圧倒的な武で軽々と勝利してきた。その中には猛将として名の知られた武将の顔良(がんりょう)華雄(かゆう)といった強敵もいた。

 現在、夏侯惇が持つ長戟や夏侯淵の剛弓と減らない矢箱もそういった強敵が変化したものだった。


 その夏侯惇が夏侯淵の援護を受けてすら相手にならないような相手が目の前にいる。思わず愚痴りたくなる夏侯淵の気持ちもわからなくはない。


 なぜこんなところでこんな化物と戦わなければならないのか……夏侯淵はここへきてからのことを思い返す。


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