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ゲームに三国志の武将が封印されていたから解放するために戦ってみる (旧題:三国志~武幽電~)  作者: 伏(龍)
第3章

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54 確認

「よし、ちょっと確認しよう」


 玄はエクセルで武幽電のマップを簡単に模して作成した10×10のマスに今まで踏破してきたエリアを色付けし、通ってきたルートを矢印で表示して印刷した紙を茜へと見せる。


 そのマップは一番左上のマスをA、右に向かってBCDE……と続く。縦は左上のマスを1として下に向かって2345……である。


 最初に関羽が出現したのはIの2。マップのほぼ右上、悪来と戦ったのもここだ。そこからI列とJ列の境目を行ったり来たりしなから南下してJの5で孫策と周瑜のふたりと戦うことになった。そこまでの関羽の到達エリアを玄は黄色く塗ってある。


 一方、孫仁が出現したのはIの7。ここから北東に進んでJの6との境目で到達エリアを4つに増やしたところで玄からの救援要請が届き、Jの5へと急行。ここまでをピンクに塗ってある。


 そして、このマップに塗られた色はもう一色、水色に塗られたエリアがGの8からJの10まで12マス分あった。


 この部分が玄たちが、金曜の夕方と翌土曜日を丸一日かけて埋めてきた部分になる。


「取りあえず、現在の状況を簡単に書くとこんな感じかな。見づらいとか言うなよ?」

「別にいわないわよ」


 昨日は茜の部屋で活動していたため、今日は玄の部屋でテーブル越しに向かい合いながら一枚の紙を眺める。ふたりのうしろには関羽と孫仁がそれぞれ立っている。悪来は部屋の隅で寝そべって欠伸をしている。


「これで見ると、まずIの2。この黄色のマスが関羽の出発地点。Iの7が孫仁の出発地点だ。時系列は示してないけど、関羽はスタートからまず南を目指してそこですぐに典韋と戦闘になったんだ」


 玄がマスの右下あたりを指で叩く。


「ここで最初に一回負けて、そこから再戦までの間に孫仁と出会って同盟を結んだ」


 関羽が初戦の敗退を思い出してか苦々しく頷き、孫仁は微笑みながらその様子を見守っている。


「そのあと無事に再戦を勝利して、悪来を仲間にしてからは一気に到達エリアが広がっている。これは悪来に馬になってもらったことで移動速度が上がったからだね」

「へへ、俺の脚は並の名馬よりも速ぇからな」


 部屋の隅で寛ぐ悪来がヒヒンと鼻を鳴らす。玄はそんな悪来に苦笑しつつ孫仁の出発点を指差す。


「同時にここから孫仁もスタートして合流を目指して北へ」

「うん、少しでも早く合流しなきゃだったからね。まあ、戦闘にはならないようにゆっくりとだったけどね」


 茜が頷きながら補足する。


「そしてIの5で大河にぶつかり東へ進み、Jの5で渡河の最中に孫策と周瑜と戦った」


 玄がJの5の中ほどを指差す。


「二対一の戦いで厳しかったけど、孫仁と悪来のおかげでなんとか勝利できた」


 孫仁はふたりとの別れを思いだしたのか、憂いを帯びた表情で頷く。


「それから二日、ふたりには傷を癒してもらった」


 玄はうしろに立つ関羽と、茜のうしろにいる孫仁を見る。現在はふたりとも完全に回復していてどこにも怪我はない。当然ライフゲージも満タンである。


「そしておとといの夕方から夜、昨日一日をかけて到達エリアの拡大を目指して移動」


 移動したルートを示す矢印を指でなぞる。


「ふたり乗りでの移動だったけど……悪来はさすがだね。かなりの範囲を移動できたと思う」


 その際に孫仁も一緒に乗るのなら必要になるだろうと、関羽がフィールドで集めた材料で手作りした即席のハミと手綱も速度上昇に一役買っていた。


「そして、昨日のここ」


 玄がなぞっていた指をある地点で止めた。


「……」


 玄がそこを指差した瞬間、場の雰囲気が凍りつく。そこは昨日の出陣で遭遇した相手との戦闘があった場所だったからだ。


「こんなゲーム、絶対に許さない!」


 茜の目が怒りに満ちる。


「わたくしもあの方に会うだけでは気がすまなくりました。必ず玄殿の思い成就させてみせます」


 孫仁が身に纏った衣をかき抱くようにして静かに宣言する。


「うむ」


 関羽も握った偃月刀に力を込め短く頷く。


「そうだね……あんなこと想像もしてなかったけど、もしこのシステムが一般的になれば……ああいう方面への活用は避けられなくなる。むしろ莫大な利益を生むその産業に転用しない理由がない。なにより今の法律では死者……魂には人権も何もない。どんな酷い扱いをしようが罪に問うことすらできないんだ」


 死体になら日本でも死体損壊罪が適用されるが、もともと形のない魂にはなんの権利もない。


「このシステムを作った人たちがなにを考え、なにをしようとしてるのか……それをしっかり確かめて……いや、確かめるまでもない。どんな理由があろうともこんなシステムが許されるはずがない」


 玄の声は静かだが、秘められた怒りが周りの者には突き刺さってくるように感じられる。だが、その気持ちは皆一緒だった。全員がその言葉に力強い視線で応えている。  


 いったいなにが玄たちにここまでの決意をさせたのか……それは本当なら思い出したくもない、戦いとも呼べないような最悪の戦いだった。


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